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第9章 どうやらエルタは八虐の不義のようです。
エルタ親衛隊会議
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数時間前。
「──なぁ、あの二人帰ってくるのが遅くないか?」
ここは廃城の中にある秘密の場所。
そこはエルタに従える手下の休憩所でもある。
彼らこそがエルタ様親衛隊。
その場所で休んでいたのは6人の男女。
その中の一人がふと呟いた事から会話の内容が変化したのだ。
「確かにな。蓼科はともかく、瑞牆が遅いのは意外だ」
「きっと、帰りが遅くなってるんですよ」
どうやら6人は仲間の帰りが遅いのを心配しているようだ。
彼らがそれぞれの意見を言い合う中、今まで静かに様子を見ていた一人の男が口を開いた。
「お前ら、緊張感を途切らせるな。今は城の中に数匹…周りに大量だ。命令がなくてもいつでも闘えるように準備を整えろ」
男の名は『パイクスピーク』。
このエルタ様親衛隊のリーダーである。
「──でっ、でもですよリーダー。そんな時にこそあの二人が来てないのがおかしいじゃないですか?」
しかし、新入りからのリーダーへの反論によって、話は元の道を辿ることが出来た。
「確かに」
どうやらその事についてはリーダーも気になっていたようだ。
リーダーへの反論を言い張った新入りに向かって、今度は別の男が見解を聞こうとする。
「───それは確かに新入りの言う通りだぜ。
あいつらは理由はどうであれ 、闘いに飢えていた。
おい、新入り。お前はどう思うんだ?」
「考えたくないですが。もう始末されたとか?」
新入りの見解によって休憩所の雰囲気が急変した。
「それはあり得るぜ」
「だが、それほどの強者があいつらの中にいるのだろうか?」
不安に包まれていく休憩所内。
そんな暗い雰囲気を変えようとリーダーは全員に向かって発言を行った。
「──もうやめるぞ。これ以上起こってもない事を考えるのはいけないことだ。そんなことより……」
リーダーは席から立ち上がると、この部屋への入り口に向かって指を指し、大声をあげた。
「さっきからそこにいるお前は何者だぁっ?」
リーダー格らしき男が指を指した先には1人の男性がいたのだ。
見たこともない男性。
おそらく彼は侵入者だろうか。
彼の顔はこちらからは見えないが、邪悪なオーラが体から発せられている。
親衛隊は警戒を解かずに彼を睨み付けていると。
「跪け」
男はそっと一言呟く。
その言葉の圧と邪悪なオーラに震えながらも、親衛隊達は跪いた。
それはもちろんパイクスピークも例外ではない。
姿は隠れて見えないが、そのオーラはまさしくエルタのもの。
下手をして逆らえば殺されるかもしれない。
だが、パイクスピークはリーダーとして彼に挨拶しようと試みたようだ。
「ご体調おかわりないようで安心しました。しかし、今日はいったい何用で?」
パイクスピークは跪いたまま、男に質問する。
「さて、今日集まって貰ったのは他でもない。
蓼科と瑞牆が殺られた」
その言葉にハッと驚く親衛隊達。
みんな、鍵の獲得候補者の処刑や付喪連盟の王レベルの始末・冒険者連盟の強者の始末を命じられていたのだが。
逃げ帰ってきたのだ。
みんな無事に逃げ帰ってこれると信じていたのだが、まさかこんなにことになるとは思っていなかったのだろう。
親衛隊にそう告げた男は、少しガッカリとした口調のまま話を進めた。
「私は最近の親衛隊の戦力が低下しているように思える。前の先代達はよくやってくれていたぞ?
だが、今では暗殺の指令も誰一人こなせず、このザマだ。
よって、今期の親衛隊は解散させる。お前らはクビだ」
「「「…………」」」
何も言い返せない親衛隊達。
だが、みんな親衛隊をやめたいとは思っていない。
意地でも続けていきたい。そう願っているのだ。
すると、親衛隊の1人が意見を述べ始めた。
「しかし、僕の所には謎の兄妹がおりまして……。しかもあのオーラはエルタ様も凌ぐ程」
1人が言い訳を言い出すと、他の者達も次々と戦況を報告する。
しかし、エルタはそんな流れを作った1人の男に言い寄る。
「『桟敷』。お前のせいで不愉快な言い訳の流れが出来た。それに兄妹だと?
王レベルでもない奴に負けて逃げ帰ってきたのか?」
男の鋭い眼光がジッと桟敷を見つめる。
これ以上不敬を働けば本当に殺されてしまう…と桟敷は思い思わず口を閉じてしまった。
男は呆れて桟敷の話は後回しにすることにしたようだ。
「───お前には失望した。お前の夢が気に入っていたんだがな」
男は桟敷に向かってそう言い放つと、今度は別の男に話しかけるつもりらしい。
男が次に選んだのは親衛隊の中でも一番新入りの男。
「──そうか、そうか。『最近親衛隊に入ったばかりなのに俺は関係ないはずなのに』」
一番新入りは思わず口を塞いでみる。
なぜ彼の考えていることが男に分かるのか理解できないのだ。
まるで中学生が適当に書いた夏休みの課題作文をクラスメートの前で先生に語られているような感覚。
そんな声もでない感覚が新入りを襲う。
「ん?
私に自白用の魔法が使えんとでも思ったか?」
男からの衝撃の告白。
先程、桟敷を襲った鋭い眼光が今度は新入りに襲いかかってくる。
「『このままではみんな殺されるかもしれない。生きたい生きたい生きたい生きたい。
死にたくない。なぜこんな奴に殺されなければならないのか。前から思っていたが、こんな滅茶苦茶な人についていくなんてゴメンだ。
殺られる前に殺ってやる……。』か。お前も物騒な事を考えるようになったな」
なんと新入りの殺意までも読み取られてしまったのだ。
「…………」
「立場をわきまえろ。お前は親衛隊。しかも新入り。お前ごときが私に勝てるなど私も嘗められたものだな。親衛隊を名乗らせる事にも虫酸が走る」
もう何も口に出せない新入り。
例え見捨てられたとしても、彼はただ生への執着心しかないのだ。
「──それにお前たち。新入りも入れた4人。お前たちは王レベルに負けたらしいな」
男は一人ずつに指を差し、指名する。
選ばれたのは、新入りも入れた男女4人。
「「「「申し訳ありませんでした。お許しください!!!!」」」」
4人は床に頭を付ける。
心からの謝罪。
「───これではまだアイツを加えた方がよかった。まぁ、既に亡くなっているがな」
男にとっては、まだアイツと呼ばれる者を加えて親衛隊を組んだ方がよかったのだろう。
しかし、彼女と出会ったのはかなり昔の話なので言ってもしょうがない。
そんなことを考えていると、親衛隊の1人の女性が意見を意見を述べ始める。
「わたくしなら、これから努力して必ずそのアイツという方を超える程の実力を見せましょう。お願いです命だけは!!!」
すると、先ほどのように言い訳を言い出す流れができ始める。
「俺はあと少しだったもう少しで敵を殺せました」
「私に再びチャンスをくだされば、私は今度こそ必ず………」
男は4人の理由も耳に入れようとせず、頭を痛めていた。
「これも今期の親衛隊の実力がないからである。何故、私が自らの考えを改めさせられなければならないんだ?
悪いのはお前たちだ。私ではない。なにか間違いはあるか?」
「「「「……………」」」」
「お前たちがクビなのは確定宣告。次こそ次は等と。では聞くがお前たちの次とは何時だ?
どのように殺すつもりなのか。お前らの実力で勝算はあるのか? 」
「「「「ッ……………」」」」
4人は痛いところを突かれてしまった。
「答えない。なら、お前たちは私の顔に泥を塗った。諦めろこれがお前たちの運命ということだ。怨むなら実力を怨め」
彼らの運命は男の掌。
この場にある決定権はすべてが男のモノなのだ。
彼が正しく。彼が絶対。
親衛隊には拒否権を言える欠片もない。
この場では彼に間違いはない。
彼の選択が全て正しい行いなのである。
どうやら、男は何も答える事が出来なくなった4人と桟敷に処罰を下すことに決めたようだ。
「──蠱毒行きだ」
その台詞を聞いた瞬間。
5人の表情は一転する。
ある者は滝のように涙を流し、ある者は汗を垂れ流す。
絶望しきった表情で男を見上げる5人。
「お許しください。お許しください」
「殺して殺して殺してください!!」
「お慈悲を、お慈悲をください。私はまだ役に立ちます。役に立ってみせます」
「そんな………」
「あそこにだけは行きたくない。落ちたくない」
「僕を見捨てないでお願いします」
慈悲を求める言葉の嵐。
しかし、男に慈悲の心はなく。
彼らを見てもなんの感情もわかない。
「──遺言が慈悲とは諦めの悪い者達だ。今期の親衛隊は解散する。もう貴様らに期待はない」
ハッキリと聞こえた男からの意思。
もう彼に考えを改めるつもりもないようだ。
今期のエルタ親衛隊は解散。
全員蠱毒送りとなってしまったのだ。
生の感情など捨てたような顔付きになってしまった5人に一筋の光が射し込む。
その声の主はパイクスピーク。
「──恐れながら、エルタ様の狙っている女が2人の中にいるそうですね。
そいつの始末を受けさせて貰えないでしょうか」
「パイクスピーク。つまり、お前は私にチャンスをくれと言っているのか?
何故私が考えを改める必要がある?」
「恐れながら、エルタ様の御考えを変えさせるつもりはございません。あなたの命ならば従います。しかし、最後に今期の親衛隊の勇姿を見てはいただけないでしょうか。
今期の親衛隊の最後の実力を見てはいただけないでしょうか」
パイクスピークは男に頭を下げている。
彼の表情に迷いはない、ただ最後に親衛隊としての生き様を主に見せつけたいのだ。
すると、その心意気はどうやらエルタにも届いたようで、
「──いいだろう。最後の最後でお前の事が気に入った。
その役目はお前に任せる。
女の魂を2つ持ち帰る準備をして待つがよい。
2人がこの館に入った時、お前の目の前に転移させよう。そこで奴らの魂を取れ」
少し表情を緩ませながら、パイクスピークの願いを聞き入れてくれた。
「御意!!」
パイクスピークは頭を下げたままの姿勢で、男に返事をする。
すると、男は付け加えてこんなことを言ってきた。
「──もし、訪れる付喪連盟と冒険者連盟の戦力を全て潰すことができれば、今期の解散は考え直してやってもいい」
その男から出た言葉は真実か嘘かは分からないが、絶望しきった5人に希望を与える。
「「「「「……!?」」」」」
6人の運命は全てパイクスピークの結果に握られているのだ。
パイクスピークはその場から立ち上がると、5人の方を振り返ることなく、部屋を後にするのであった。
「──なぁ、あの二人帰ってくるのが遅くないか?」
ここは廃城の中にある秘密の場所。
そこはエルタに従える手下の休憩所でもある。
彼らこそがエルタ様親衛隊。
その場所で休んでいたのは6人の男女。
その中の一人がふと呟いた事から会話の内容が変化したのだ。
「確かにな。蓼科はともかく、瑞牆が遅いのは意外だ」
「きっと、帰りが遅くなってるんですよ」
どうやら6人は仲間の帰りが遅いのを心配しているようだ。
彼らがそれぞれの意見を言い合う中、今まで静かに様子を見ていた一人の男が口を開いた。
「お前ら、緊張感を途切らせるな。今は城の中に数匹…周りに大量だ。命令がなくてもいつでも闘えるように準備を整えろ」
男の名は『パイクスピーク』。
このエルタ様親衛隊のリーダーである。
「──でっ、でもですよリーダー。そんな時にこそあの二人が来てないのがおかしいじゃないですか?」
しかし、新入りからのリーダーへの反論によって、話は元の道を辿ることが出来た。
「確かに」
どうやらその事についてはリーダーも気になっていたようだ。
リーダーへの反論を言い張った新入りに向かって、今度は別の男が見解を聞こうとする。
「───それは確かに新入りの言う通りだぜ。
あいつらは理由はどうであれ 、闘いに飢えていた。
おい、新入り。お前はどう思うんだ?」
「考えたくないですが。もう始末されたとか?」
新入りの見解によって休憩所の雰囲気が急変した。
「それはあり得るぜ」
「だが、それほどの強者があいつらの中にいるのだろうか?」
不安に包まれていく休憩所内。
そんな暗い雰囲気を変えようとリーダーは全員に向かって発言を行った。
「──もうやめるぞ。これ以上起こってもない事を考えるのはいけないことだ。そんなことより……」
リーダーは席から立ち上がると、この部屋への入り口に向かって指を指し、大声をあげた。
「さっきからそこにいるお前は何者だぁっ?」
リーダー格らしき男が指を指した先には1人の男性がいたのだ。
見たこともない男性。
おそらく彼は侵入者だろうか。
彼の顔はこちらからは見えないが、邪悪なオーラが体から発せられている。
親衛隊は警戒を解かずに彼を睨み付けていると。
「跪け」
男はそっと一言呟く。
その言葉の圧と邪悪なオーラに震えながらも、親衛隊達は跪いた。
それはもちろんパイクスピークも例外ではない。
姿は隠れて見えないが、そのオーラはまさしくエルタのもの。
下手をして逆らえば殺されるかもしれない。
だが、パイクスピークはリーダーとして彼に挨拶しようと試みたようだ。
「ご体調おかわりないようで安心しました。しかし、今日はいったい何用で?」
パイクスピークは跪いたまま、男に質問する。
「さて、今日集まって貰ったのは他でもない。
蓼科と瑞牆が殺られた」
その言葉にハッと驚く親衛隊達。
みんな、鍵の獲得候補者の処刑や付喪連盟の王レベルの始末・冒険者連盟の強者の始末を命じられていたのだが。
逃げ帰ってきたのだ。
みんな無事に逃げ帰ってこれると信じていたのだが、まさかこんなにことになるとは思っていなかったのだろう。
親衛隊にそう告げた男は、少しガッカリとした口調のまま話を進めた。
「私は最近の親衛隊の戦力が低下しているように思える。前の先代達はよくやってくれていたぞ?
だが、今では暗殺の指令も誰一人こなせず、このザマだ。
よって、今期の親衛隊は解散させる。お前らはクビだ」
「「「…………」」」
何も言い返せない親衛隊達。
だが、みんな親衛隊をやめたいとは思っていない。
意地でも続けていきたい。そう願っているのだ。
すると、親衛隊の1人が意見を述べ始めた。
「しかし、僕の所には謎の兄妹がおりまして……。しかもあのオーラはエルタ様も凌ぐ程」
1人が言い訳を言い出すと、他の者達も次々と戦況を報告する。
しかし、エルタはそんな流れを作った1人の男に言い寄る。
「『桟敷』。お前のせいで不愉快な言い訳の流れが出来た。それに兄妹だと?
王レベルでもない奴に負けて逃げ帰ってきたのか?」
男の鋭い眼光がジッと桟敷を見つめる。
これ以上不敬を働けば本当に殺されてしまう…と桟敷は思い思わず口を閉じてしまった。
男は呆れて桟敷の話は後回しにすることにしたようだ。
「───お前には失望した。お前の夢が気に入っていたんだがな」
男は桟敷に向かってそう言い放つと、今度は別の男に話しかけるつもりらしい。
男が次に選んだのは親衛隊の中でも一番新入りの男。
「──そうか、そうか。『最近親衛隊に入ったばかりなのに俺は関係ないはずなのに』」
一番新入りは思わず口を塞いでみる。
なぜ彼の考えていることが男に分かるのか理解できないのだ。
まるで中学生が適当に書いた夏休みの課題作文をクラスメートの前で先生に語られているような感覚。
そんな声もでない感覚が新入りを襲う。
「ん?
私に自白用の魔法が使えんとでも思ったか?」
男からの衝撃の告白。
先程、桟敷を襲った鋭い眼光が今度は新入りに襲いかかってくる。
「『このままではみんな殺されるかもしれない。生きたい生きたい生きたい生きたい。
死にたくない。なぜこんな奴に殺されなければならないのか。前から思っていたが、こんな滅茶苦茶な人についていくなんてゴメンだ。
殺られる前に殺ってやる……。』か。お前も物騒な事を考えるようになったな」
なんと新入りの殺意までも読み取られてしまったのだ。
「…………」
「立場をわきまえろ。お前は親衛隊。しかも新入り。お前ごときが私に勝てるなど私も嘗められたものだな。親衛隊を名乗らせる事にも虫酸が走る」
もう何も口に出せない新入り。
例え見捨てられたとしても、彼はただ生への執着心しかないのだ。
「──それにお前たち。新入りも入れた4人。お前たちは王レベルに負けたらしいな」
男は一人ずつに指を差し、指名する。
選ばれたのは、新入りも入れた男女4人。
「「「「申し訳ありませんでした。お許しください!!!!」」」」
4人は床に頭を付ける。
心からの謝罪。
「───これではまだアイツを加えた方がよかった。まぁ、既に亡くなっているがな」
男にとっては、まだアイツと呼ばれる者を加えて親衛隊を組んだ方がよかったのだろう。
しかし、彼女と出会ったのはかなり昔の話なので言ってもしょうがない。
そんなことを考えていると、親衛隊の1人の女性が意見を意見を述べ始める。
「わたくしなら、これから努力して必ずそのアイツという方を超える程の実力を見せましょう。お願いです命だけは!!!」
すると、先ほどのように言い訳を言い出す流れができ始める。
「俺はあと少しだったもう少しで敵を殺せました」
「私に再びチャンスをくだされば、私は今度こそ必ず………」
男は4人の理由も耳に入れようとせず、頭を痛めていた。
「これも今期の親衛隊の実力がないからである。何故、私が自らの考えを改めさせられなければならないんだ?
悪いのはお前たちだ。私ではない。なにか間違いはあるか?」
「「「「……………」」」」
「お前たちがクビなのは確定宣告。次こそ次は等と。では聞くがお前たちの次とは何時だ?
どのように殺すつもりなのか。お前らの実力で勝算はあるのか? 」
「「「「ッ……………」」」」
4人は痛いところを突かれてしまった。
「答えない。なら、お前たちは私の顔に泥を塗った。諦めろこれがお前たちの運命ということだ。怨むなら実力を怨め」
彼らの運命は男の掌。
この場にある決定権はすべてが男のモノなのだ。
彼が正しく。彼が絶対。
親衛隊には拒否権を言える欠片もない。
この場では彼に間違いはない。
彼の選択が全て正しい行いなのである。
どうやら、男は何も答える事が出来なくなった4人と桟敷に処罰を下すことに決めたようだ。
「──蠱毒行きだ」
その台詞を聞いた瞬間。
5人の表情は一転する。
ある者は滝のように涙を流し、ある者は汗を垂れ流す。
絶望しきった表情で男を見上げる5人。
「お許しください。お許しください」
「殺して殺して殺してください!!」
「お慈悲を、お慈悲をください。私はまだ役に立ちます。役に立ってみせます」
「そんな………」
「あそこにだけは行きたくない。落ちたくない」
「僕を見捨てないでお願いします」
慈悲を求める言葉の嵐。
しかし、男に慈悲の心はなく。
彼らを見てもなんの感情もわかない。
「──遺言が慈悲とは諦めの悪い者達だ。今期の親衛隊は解散する。もう貴様らに期待はない」
ハッキリと聞こえた男からの意思。
もう彼に考えを改めるつもりもないようだ。
今期のエルタ親衛隊は解散。
全員蠱毒送りとなってしまったのだ。
生の感情など捨てたような顔付きになってしまった5人に一筋の光が射し込む。
その声の主はパイクスピーク。
「──恐れながら、エルタ様の狙っている女が2人の中にいるそうですね。
そいつの始末を受けさせて貰えないでしょうか」
「パイクスピーク。つまり、お前は私にチャンスをくれと言っているのか?
何故私が考えを改める必要がある?」
「恐れながら、エルタ様の御考えを変えさせるつもりはございません。あなたの命ならば従います。しかし、最後に今期の親衛隊の勇姿を見てはいただけないでしょうか。
今期の親衛隊の最後の実力を見てはいただけないでしょうか」
パイクスピークは男に頭を下げている。
彼の表情に迷いはない、ただ最後に親衛隊としての生き様を主に見せつけたいのだ。
すると、その心意気はどうやらエルタにも届いたようで、
「──いいだろう。最後の最後でお前の事が気に入った。
その役目はお前に任せる。
女の魂を2つ持ち帰る準備をして待つがよい。
2人がこの館に入った時、お前の目の前に転移させよう。そこで奴らの魂を取れ」
少し表情を緩ませながら、パイクスピークの願いを聞き入れてくれた。
「御意!!」
パイクスピークは頭を下げたままの姿勢で、男に返事をする。
すると、男は付け加えてこんなことを言ってきた。
「──もし、訪れる付喪連盟と冒険者連盟の戦力を全て潰すことができれば、今期の解散は考え直してやってもいい」
その男から出た言葉は真実か嘘かは分からないが、絶望しきった5人に希望を与える。
「「「「「……!?」」」」」
6人の運命は全てパイクスピークの結果に握られているのだ。
パイクスピークはその場から立ち上がると、5人の方を振り返ることなく、部屋を後にするのであった。
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