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第8章 どうやらエトナとセンテネルは謀叛と悪逆のようです。
夜はやっぱりこれでしょう
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黒が話終わった瞬間、馬車は次々と止まり始める。
そして、外から聞こえる慌ただしい声。
「真ルイボルト教が来たぞ」
「王女様を守れ」
「王女様を暗殺させるなよ」
やっぱりだ。
突然、現れた真ルイボルト教の信者達。
皆、この前の紋章のような模様の付いたローブを着ていた。
「もう皆、外に出てるぞ」
奴らは完全に護衛隊と王女様の乗った馬車を囲んでいる。
人数は窓からでは見えないが、かなりの数である。
「なぁ、黒。止めとこうぜ。馬車に引きこもろう。ん? 黒さんーーーーー!?」
気づくと馬車にいたのは俺一人であった。
先ほどまで一緒に平和を味わっていた黒までも戦う気が満タンであったのだ。
「そんなに明山さんを殺したいの?」
あのバカは護衛隊にも真ルイボルト教信者にも聞こえるほどの大きな声で真ルイボルト教信者に質問をしている。
しかし、誰もその質問には答えないまま黙り込んでいた。
「ねぇー、聞こえてる?」
「…………」
「もしもし~聞こえてまーすか~?」
「……………」
完全に無視されている。
「いいか。護衛隊諸君! あいつらが王女様を狙う暗殺者どもだ。護衛は頼んだぞ。私は王女様の馬車を守る」
その時、隊長兵士が全員に向かって声を張り上げる。
彼が言い終わると同時に信者達もこちらへ向かって走り出した。
「なんだよ。王女様も俺と同じだったのか」
俺は静かに馬車を降りながら呟く。
どうやら、奴らの狙いは俺と王女様。
目の前では沢山の乱闘が起きていた。
剣を交える音、魔法を唱える声。
叫び声に、血が吹き出す音、肉が斬れる音。
さまざまな音が俺の聴覚を刺激していく。
「こんな、くそっ。やっぱりどの世界でも人同士の争いは起こるものか」
俺はこの光景を見て辛く感じていた。
こいつらはこの前の簀巻きにした男も強制的洗脳を受けていた。
例え、今は敵でもこいつらは被害者だ。
被害者同士が戦うなんて……見ていられないと目を背けたくなる。
そんなことを考えている隙に事態は急変していたようだ。
「退いていくぞ。敵が退いていく」
護衛隊の誰かが叫ぶ。
その声を聞いて確認をすると、確かに敵が退き始めているのが分かった。
どんどん、森の奥へと退却しているのだ。
そしてしばらくすると、真ルイボルト教の信者は誰一人いなくなった。
奇襲が終わり、一日目の夜は訪れる。
俺たちは元いた馬車に乗り込んでいた。
見張りは馬車ごとの当番制となっているので、
つまりその間に睡眠などを取るべきなのだが。
「ちょっと、死神ー。ここでそういう手を使うなんて……。だったらここに置いて……」
「黒さん!? だったらここに置きます」
珍しく黒と死神さんがボードゲームで対決をしているのだ。
俺はその光景を優しく見守ると同時に後々の事を考えて、2人に一応忠告はしておくことにした。
「お前ら……そろそろ寝とけよ。見張りの順番が回ってきたらしばらくの間寝れないんだからな」
俺の発言と共に妙義も頷く。
「えー」「もう少し良いじゃないですか?」
だが、黒と死神さんが不満そうに反論してきた。
久しぶりのバイト外でのふれあいを楽しんでいたいのだろう。
「お前ら……テンションが高まりすぎてるぞ。確かに楽しむのはいいが、仕事中なんだぞ」
俺の発言に再び妙義は頷く。
その時、馬車の外から声が聞こえた。
「おい、お前ら!」
外を覗くと何人かの人々が俺たちの馬車の前にいる。
うるさいのが我慢できなくて、クレームを言いに来たのだろうか。
「あっ……すみませんでした。静かにしますので……」
俺は頭を下げて外にいる二十人ほどの集団に謝るのだが、彼らは怒った様子もなく。
「俺らも混ぜてくれないか?」
どうやら、むしろ逆だったようだ。
俺は馬車の外で体操座りになって寒さに震えていた。
ここは遠くで遠吠えが聞こえるほどの山の中。
俺が元いた馬車では黒達がアナログゲームを楽しんでいるのだ。
何十人もの人数が1つの馬車内に入り、俺にはもう寝るスペースすら与えてくれない。
「まったく、危機感が無さすぎるぞ」
今は仕事中である。
人の命をかけての仕事なのだ。
そんな状況で浮かれ気分になるなんて……。
しかし、意地なんて張らずに妙義のように参加すればよかった。
そんな事を思いながらボーッとしていると、馬車から黒が降りてきた。
考え事をしていた俺の肩を黒が優しく叩いてくる。
俺が振り返ると黒はにっこりと俺の事を察したような顔を見せてきた。
さて……。
「いいぞ、兄ちゃん。やれ!」
「オオー。スゲー」
「二人ともすげぇな」
いつの間にか、俺たちの馬車の周りには沢山の人集りが出来ていた。
「やるわね」
「お前こそ」
俺と黒を中心にして沢山の人集りがこの勝負の結果を知りたくて馬車を覗いている。
いつの間にか始まっていたボードゲームトーナメントが始まっていたのだが、今はその決勝戦である。
「これでどうだァァァァァァ」
俺の渾身の一手でゲームは終了を迎える。
その瞬間、観客の興奮は爆発的に上昇。
その興奮はまるで発射されたロケットのように高く飛び上がった。
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」
観客は俺と黒を外に引きずり出す。
そうして引きずり出された俺たちを観客達は、胴上げを俺たちに送ってくれる。
「「「ワーッショイ。ワーッショイ」」」
まさか、ただの暇潰しがここまで大事になるとは俺たちも思っていなかった。
そして、外から聞こえる慌ただしい声。
「真ルイボルト教が来たぞ」
「王女様を守れ」
「王女様を暗殺させるなよ」
やっぱりだ。
突然、現れた真ルイボルト教の信者達。
皆、この前の紋章のような模様の付いたローブを着ていた。
「もう皆、外に出てるぞ」
奴らは完全に護衛隊と王女様の乗った馬車を囲んでいる。
人数は窓からでは見えないが、かなりの数である。
「なぁ、黒。止めとこうぜ。馬車に引きこもろう。ん? 黒さんーーーーー!?」
気づくと馬車にいたのは俺一人であった。
先ほどまで一緒に平和を味わっていた黒までも戦う気が満タンであったのだ。
「そんなに明山さんを殺したいの?」
あのバカは護衛隊にも真ルイボルト教信者にも聞こえるほどの大きな声で真ルイボルト教信者に質問をしている。
しかし、誰もその質問には答えないまま黙り込んでいた。
「ねぇー、聞こえてる?」
「…………」
「もしもし~聞こえてまーすか~?」
「……………」
完全に無視されている。
「いいか。護衛隊諸君! あいつらが王女様を狙う暗殺者どもだ。護衛は頼んだぞ。私は王女様の馬車を守る」
その時、隊長兵士が全員に向かって声を張り上げる。
彼が言い終わると同時に信者達もこちらへ向かって走り出した。
「なんだよ。王女様も俺と同じだったのか」
俺は静かに馬車を降りながら呟く。
どうやら、奴らの狙いは俺と王女様。
目の前では沢山の乱闘が起きていた。
剣を交える音、魔法を唱える声。
叫び声に、血が吹き出す音、肉が斬れる音。
さまざまな音が俺の聴覚を刺激していく。
「こんな、くそっ。やっぱりどの世界でも人同士の争いは起こるものか」
俺はこの光景を見て辛く感じていた。
こいつらはこの前の簀巻きにした男も強制的洗脳を受けていた。
例え、今は敵でもこいつらは被害者だ。
被害者同士が戦うなんて……見ていられないと目を背けたくなる。
そんなことを考えている隙に事態は急変していたようだ。
「退いていくぞ。敵が退いていく」
護衛隊の誰かが叫ぶ。
その声を聞いて確認をすると、確かに敵が退き始めているのが分かった。
どんどん、森の奥へと退却しているのだ。
そしてしばらくすると、真ルイボルト教の信者は誰一人いなくなった。
奇襲が終わり、一日目の夜は訪れる。
俺たちは元いた馬車に乗り込んでいた。
見張りは馬車ごとの当番制となっているので、
つまりその間に睡眠などを取るべきなのだが。
「ちょっと、死神ー。ここでそういう手を使うなんて……。だったらここに置いて……」
「黒さん!? だったらここに置きます」
珍しく黒と死神さんがボードゲームで対決をしているのだ。
俺はその光景を優しく見守ると同時に後々の事を考えて、2人に一応忠告はしておくことにした。
「お前ら……そろそろ寝とけよ。見張りの順番が回ってきたらしばらくの間寝れないんだからな」
俺の発言と共に妙義も頷く。
「えー」「もう少し良いじゃないですか?」
だが、黒と死神さんが不満そうに反論してきた。
久しぶりのバイト外でのふれあいを楽しんでいたいのだろう。
「お前ら……テンションが高まりすぎてるぞ。確かに楽しむのはいいが、仕事中なんだぞ」
俺の発言に再び妙義は頷く。
その時、馬車の外から声が聞こえた。
「おい、お前ら!」
外を覗くと何人かの人々が俺たちの馬車の前にいる。
うるさいのが我慢できなくて、クレームを言いに来たのだろうか。
「あっ……すみませんでした。静かにしますので……」
俺は頭を下げて外にいる二十人ほどの集団に謝るのだが、彼らは怒った様子もなく。
「俺らも混ぜてくれないか?」
どうやら、むしろ逆だったようだ。
俺は馬車の外で体操座りになって寒さに震えていた。
ここは遠くで遠吠えが聞こえるほどの山の中。
俺が元いた馬車では黒達がアナログゲームを楽しんでいるのだ。
何十人もの人数が1つの馬車内に入り、俺にはもう寝るスペースすら与えてくれない。
「まったく、危機感が無さすぎるぞ」
今は仕事中である。
人の命をかけての仕事なのだ。
そんな状況で浮かれ気分になるなんて……。
しかし、意地なんて張らずに妙義のように参加すればよかった。
そんな事を思いながらボーッとしていると、馬車から黒が降りてきた。
考え事をしていた俺の肩を黒が優しく叩いてくる。
俺が振り返ると黒はにっこりと俺の事を察したような顔を見せてきた。
さて……。
「いいぞ、兄ちゃん。やれ!」
「オオー。スゲー」
「二人ともすげぇな」
いつの間にか、俺たちの馬車の周りには沢山の人集りが出来ていた。
「やるわね」
「お前こそ」
俺と黒を中心にして沢山の人集りがこの勝負の結果を知りたくて馬車を覗いている。
いつの間にか始まっていたボードゲームトーナメントが始まっていたのだが、今はその決勝戦である。
「これでどうだァァァァァァ」
俺の渾身の一手でゲームは終了を迎える。
その瞬間、観客の興奮は爆発的に上昇。
その興奮はまるで発射されたロケットのように高く飛び上がった。
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」
観客は俺と黒を外に引きずり出す。
そうして引きずり出された俺たちを観客達は、胴上げを俺たちに送ってくれる。
「「「ワーッショイ。ワーッショイ」」」
まさか、ただの暇潰しがここまで大事になるとは俺たちも思っていなかった。
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