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第6章 どうやらフィツロイは八虐の不孝のようです。

賭けの結果は

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 「はぁーはぁー」

英彦は今にも倒れそうだったが、必死にフィツロイに攻撃しようとしている。しかし避けるのが面倒になったフィツロイは霊体化を駆使して霧のように避けていく。

「英彦さん。ただでさえあれほど力を使って更に体は限界なんですから。もう諦めてくださいよ」

フィツロイは敵ながら英彦の事を心配しているようだ。

「いいや、僕はまだ明山さんを助けるまで……。諦めません!!!」

そう言いながらも英彦の体から大量の血が出ている。

「人よりも自分の事を大切にしてください。これ以上はもう……」

確かにフィツロイの言うとおりだ。彼女も敵ながら英彦に身を心配してくれている。
ほんとうに英彦はこれ以上はもう……。

「そうだぜ……英彦。俺の事はもう良いんだ。もう良いんだ。もうやめろ英彦。俺は嬉しかった。本当にありがとう」

「そうですよ。そうですよ。明山さんもこう言ってますし……!?」

フィツロイはようやく気づいた。俺がしゃべれている事に……。

「フィツロイお前は良い奴だ。本当にお前が敵じゃなかったら俺たちは仲良くなれただろうな」

フィツロイはとある失敗をしてしまっていたのだ。
英彦に夢中になりすぎて用心していなかった事。
バイオンを倒すほどの実力を持った男への最大限の注意を払っていなかった。
彼女がもう少し、人を傷付けても悪意を感じない性格だったなら結果は変わっていたはずであった。
彼女が魔王の命令を早めに完了していれば、感情を殺していれば……。こうはならなかった。



 フィツロイの起こした失敗。
それは二つあった。
一つ目は明山から目を話したこと。
俺はあらかじめ英彦とフィツロイが戦っている時にある人物と連絡をとっていたのだ。
受け取る時間を指定し、俺はその時間を待った。
俺は彼女の能力に賭けていたのだ。
先日、彼女はその能力を使って俺たちを帰したらしい。
俺は知らなかったが……。
つまり、物を現在地で収納して、別の場所に出したということだ。
俺はそれを利用して例の物を受けとる事ができた。



 二つ目は英彦のお陰であった。
英彦の攻撃で彼女が霊体になって避けてくれたお陰だ。
理由はよく分からないが、彼女が霊体になった瞬間だけ能力が一時的に解除されていたのだ。
恐らく、フィツロイが言っていた。
このご時世に魔法なんて……という発言に関係することなのだろう。
このご時世とは、付喪神と共存している世界。
そして、フィツロイが使っていた「霊体化は付喪神の能力ではない」という発言。
その二つの発言から考えると、魔法とか霊体化とかは付喪神とは相性が悪いのではないだろうか。
つまり、フィツロイが霊体になると付喪神の能力が弱体化するということだ。

え? 英彦が魔法で付喪神の強化した?
マジで?



 とにかくである。詳しい事は後で誰かに聞くことにする。
次回ついに、魔王軍幹部である八虐の一人で凄く礼儀正しい不義のフィツロイ。
そして、この金の付喪人であり、転移者であり鍵の獲得者候補。
更に魔王の暗殺対象者である付喪カフェの金曜日のバイトリーダーな、カッコいい主人公である俺。
二人の決戦が今始ま……。

「どうしました? 明山さん」

「何で黙ったまま動かないんですか?」

二人の発言により強制的に脳内プレゼンテーション会見から、現実世界に引きずり下ろされる。

「とっ……とにかくフィツロイ。祓われる覚悟を持っておけよ」

俺は少し赤面しながらもかっこよく主人公らしく台詞を吐いた。
そんな台詞を聞いた英彦は心配そうに……。

「明山さん気をつけてください。
あいつは付喪人の能力の他にも魔法使いの職業も持ってるらしいです」

だが、英彦の発言はここから重要な点を話していた。

「いいですか。本来、魔法とは、付喪神には効きにくいです。
逆にモンスターには効きやすい。
だから今のご時世に魔法を操る者は少ないんです。
ですが…あいつは付喪神の能力と魔法を操る。
用心していてください。つまり……」

「つまり……? どういうことだよ。英彦」

少し不安になりながら俺は英彦を見つめた。

「……相手が、付喪神でもモンスターでもあいつは対処できるというわけです。
それほどいろいろな戦いをしてきた経験者というわけですよ」

つまり、英彦が言いたいのは相手は俺以上の戦いの経験者だということだ。





 ここで先程の説明をもっと簡単にしてみよう。
モンスター →付喪人→付喪神→魔法や冒険者職→モンスター………。

「矢印の向きは◯◯→(は)◯◯(に強い)という矢印の関係を表しているのだ」

俺が頭の中で説明を整理しようとした所、駒々がいた。

「おい、駒々何で俺の脳内プレゼンテーション会見会場にいるんだよ。出ていけよ!!!」

「良いじゃないか。お前のせいで出番が無かったんだぞ!!」

「知らねぇよ!! いや、俺の責任だったとしても『後書き』に、しかも他人の脳内プレゼンテーション会見会場に入って来るんじゃねぇ!!!」

「『後書き』参戦はずるいわ。なら私だって!!!!」

これ以上うるさくなっては一溜りもない。黒が時空の裂け目を利用して入ってくるように俺の脳内プレゼンテーション会見会場に参戦しかけている。
これ以上のメタ発言は、本編をぶち壊す可能性大だ。警戒レベル4だ。

「あーあー!!
ほら、出ていって。出ていって」

俺は即刻、駒々と突然来た女性(黒)を頭の中から追い出すことにした。


次回、遂にフィツロイとの戦いが始まる。
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