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第5章 どうやら王レベルは仕事をしているようです。
生徒会長だって恋はしたい
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場所は変わって、ここはどこかの小さな建物の屋上。
黒と女性は、高いところなら見つからないだろうと二人で考えてここに来たのだ。
彼女らの後ろからは先程の流水は追いかけてこない。
だが、生徒会達には居場所がバレているようで下には沢山の制服を着た人たちが野次馬のように集まっているのである。
「無駄な抵抗はやめて降りてこい。田舎のお母さんが泣いているぞ」
スピーカーを持った一人のがたいがいい男が、黒達に語っている。
「私の母は外国に行っているわ」
「私の母は……もう………」
がたいのいい男は二人の反応に男は罪悪感を感じたようで、再びスピーカーを持ちながら2人の女性に向かって謝罪を行う。
「そうか……何か、すまなかったな」
「いや、生徒会長なにしてんだ」
すると、八剣といた山上ががたいのいい男の元へ合流してきた。
「おっ、山上じゃないか。しかし、奴ら中々降りてこないものだな」
「あの女は知らないからな。助けた奴の事を……」
いまだに屋上から黒髪の美少女がこちらを睨み付けている。
「何よ、貴方たち何でこの子をいじめるのよ。シャァァァァァァ!!!」
黒は下にいる集団に向かって威嚇を行ってくる。まるで猫だ。
「俺らは虐めてんじゃねぇよ。理由あっての行動だ。ほら生徒会長もなんとか言って……」
山上は生徒会長の方を見る。
「天使だ。」
生徒会長は目をキラキラとさせて、黒たちを見る。
「ああ、そうか………………はぁ?」
生徒会長からの返答に困惑する山上。生徒会長は黒に惚れてしまったらしい。
「俺はあいつに一目惚れしちまったぜ」
生徒会長には屋上から睨み付けている黒髪の美少女がお迎えに来た美しい天使のように見えているらしい。
生徒会長は一歩前に出ると、自身のスピーカーを地面に落としてビルの屋上に向かって自己紹介を始めた。
「お嬢さん、俺の名は『大台ヶ原(だいだいがはら)』。お嬢さんの名前を教えてください」
「私? 私は黒よ」
何も知らない黒は下にいる生徒会長に向かって素直に名前を教えた。自分が声をかけられている大台ケ原に一目惚れされているなんて彼女には知る由もない。
「黒さん、ここで会ったのも何かの縁だ。俺は貴方に一目惚れした。貴方の素晴らしい天使のような顔、他人をも守ろうとする心の優しさ。俺は感動しました。どうか私と友達になって……あれ?」
まずはお友達から初めていきたいと黒に尋ねていた生徒会長であったが、その想いは届くことがなかった。大台ケ原が気がつくと黒がいない。下から見えるビルの屋上の端から端字まで探しても黒の姿が見当たらない。
「生徒会長、『ここで……』からあいつはいなかったぜ」
山上が大台ケ原の肩をポンポンと叩いて慰めるようにして事の真相を彼に伝える。
「せっかくの告白を聞いてもらえなくて残念がっているだろうな」と山上は考えて、生徒会長を慰めようとしたのだが。
「そんな恥ずかしがり屋の彼女にも惚れるっ!!!」
「こりゃ末期だな」
いつも通りのバカに頭を痛くする山上であった。
さて、ここは黒達のいるビルの屋上。
勝手に建物の屋上にいるのはどうかと思うが、緊急時だから仕方がない。
だが、あの集団にいつここへ侵入されるか分からない。
階段と屋上を繋ぐドアの扉には鍵をかけたし、ドアの前には対付喪神用小型自動追撃戦車KOBORUTOをいくつも並べている。
完璧に立てこもる準備を済ませることができた。
「───さてと、これで準備は完了ね。あとはどれ程持ちこたえれるか」
黒は汗を拭い、ホッと一安心する。あとはこのまま時間をかけて籠城していくのみ。衣服も食事も黒の能力で取り出すことが出来るため、何日でもこのビルの屋上に立てこもることはできる。籠城戦というやつだ。
すると、被害者の女性は申し訳なさそうな顔をして黒を見る。
「すみません。見ず知らずの私なんかのために……」
「良いわ別に。困ってる人がいたら助ける。そう教わってきたから」
その返事に彼女は静かに笑った。その笑顔に連れられて黒も静かに笑う。
「私、3ヶ月前からずっと部屋に隔離されていたんです。不治の病です。
毎日、ご飯を食べて薬を飲んで寝るだけの生活でした。
ある日、とある人に出会って私の人生は変わりました。
まぁ、今外に出て自由にできているのも彼のお陰です。本当にあの人には感謝しています。
リベリオと呼ばれるカウンセリングルームの先生にいつか恩返しするのが夢なんです」
「外に出たくらいで嬉しかったの?
なら、もっと嬉しくさせなくちゃね!!」
その言葉に彼女は少し驚く。
「えっ!?」
「綺麗な景色も見に行きましょう。
というか、お金も貯めなきゃ。いいバイト先があるんだけど?
私のバイト先に来ない?
バイト仲間は変な人達だけどいい人だし、素晴らしいカフェよ。
えっと、とにかく失われた貴方の3ヶ月を取り戻しましょう」
彼女は楽しそうに言っている黒を不思議に思った。なぜ、彼女がそこまで楽しそうに語ってくれるのか。なぜ、集団から助けてくれただけの恩人がさらに自分の面倒まで見ようとしてくれるのか。
「何で? そこまで言ってくれるんですか?」
少女の純粋な疑問。ここで少女を置いて立ち去れば、
「だって、もう私達知り合った仲じゃない。あっ、そう言えば名前を聞いてなかった」
「仲……仲ですか。あっ、私は『飯野(めしの)』です。よろしくお願いします」
自分とは全く正反対の性格をしている黒を、飯野は物珍しく眺めている。
内気な性格から友達はできず、いつも一人だった日々。親も来ず、来るのは白衣の医者達。
カウンセリングルームに出会わなければ、人間不振になっていただろう。
だが、それにカウンセラーに救われたおかげで今ではこうして外にいられる。新しい出会いを味わうことが出来る。本当に飯野はカウンセラーや2人に心の中で感謝していた。
「飯野ちゃん、飯野ちゃん」
ふと気づくと黒が自分を呼んでいる。
「飯野ちゃん。そろそろ、生徒会共のお出ましよ」
屋上より下の階に配置しておいたKOBORUTOからの通信が消える。
これはつまり、あの集団がこちらへと近づいてきているという証明であった。
「黒さん。私と出会った時、あるお店の前にいましたよね。今度三人でそこに行きませんか?
私、今日のお礼がしたいので……。」
「えっ!! もちろん行くわ。妙義もきっと喜ぶよ。でもお金は?」
「もちろん、あなたのバイト先で働いて稼ぎますよ!!」
バイト代で行けるほど安いお店ではないことは飯野も知っているが、彼女はそれを望んだ。
2人の少女の約束。それを遮るようにして、屋上へと続くドアが蹴り飛ばされてズボンに手を入れたまま山上が2人の目の前に現れた。
山上によって縛り上げられた戦車が無残に見える。
しかも、山上はどうやら一人でここに上がって来たみたいだ。その背後には誰かがいるような気配がなく。彼1人だけがゆっくりと屋上へと足を踏み出す。
「生徒会長や、皆は置いてきた。
生徒会長や仲間の何人かは付喪人だが、契約をできない奴もいるからな。
それにてめぇは危険だ。仲間は危険な目に会わせられねぇ」
「へぇー、私の名も有名になったものね。危険なんて言われるのは悲しいけど~」
闘いが始まる。相手は王レベルという付喪人。そのオーラから関しても強いのは分かるが、油断しなければ黒の敵ではない。しかし、その時、黒は明山に聞いた話を思い出した。
「いいか、物語に出てくる糸使いは強い奴が多いからな。
付喪人なんてもんがいるなら、いずれそんな奴と出会うかも知れない。気を付けろよ。俺も殺されたからな」と笑いながら言ってたようなそんな記憶があった。
あの時は「何言ってんだこいつ」と思ったが今なら明山の言っていたことが黒には分かる。
「いい? 飯野ちゃん。あなたのすぐ後ろに私の能力である引き出しの一段を出している。そこはここから少し離れた場所に繋がっているわ。
そこから逃げて!!」
「そんな、嫌ですよ。黒さん一緒に行きましょう」
飯野にとっては黒は友達なので、置いていくなんてことはできない。しかし、山上に先に飯野を狙われてはいけない。ここはどうにかしてでも飯野を逃がさねばならない。
すると、黒は子供を宥めるような口調で振り返ることなく飯野に向かって口を開いた。
「いい? 私の能力は使うとお腹がすいて動けなくなっちゃうの。
今ここであいつの足止めはする。だから、早く逃げて。
大丈夫、先に行ってて。貴方はもう自由なんだからね」
「はい!!」
飯野はハッキリと大声で返事をすると、黒の言っていた引き出しに向かって走り出す。
今はどういうことか考えている暇はない。
それは黒を信頼しているから飯野は先に逃げるのだ。
もう彼女を縛る人たちはいない。不治の病も後で考えればいい。今は飯野は反抗したかった。失敗しても成功しても、この一日だけでいいから自由を満喫したかった。
それはただ1つの少女の我儘。それはただ1つの少女の反抗。
どうなろうと信じる。そして飯野は自由を楽しむ。
────はずだった。
黒と女性は、高いところなら見つからないだろうと二人で考えてここに来たのだ。
彼女らの後ろからは先程の流水は追いかけてこない。
だが、生徒会達には居場所がバレているようで下には沢山の制服を着た人たちが野次馬のように集まっているのである。
「無駄な抵抗はやめて降りてこい。田舎のお母さんが泣いているぞ」
スピーカーを持った一人のがたいがいい男が、黒達に語っている。
「私の母は外国に行っているわ」
「私の母は……もう………」
がたいのいい男は二人の反応に男は罪悪感を感じたようで、再びスピーカーを持ちながら2人の女性に向かって謝罪を行う。
「そうか……何か、すまなかったな」
「いや、生徒会長なにしてんだ」
すると、八剣といた山上ががたいのいい男の元へ合流してきた。
「おっ、山上じゃないか。しかし、奴ら中々降りてこないものだな」
「あの女は知らないからな。助けた奴の事を……」
いまだに屋上から黒髪の美少女がこちらを睨み付けている。
「何よ、貴方たち何でこの子をいじめるのよ。シャァァァァァァ!!!」
黒は下にいる集団に向かって威嚇を行ってくる。まるで猫だ。
「俺らは虐めてんじゃねぇよ。理由あっての行動だ。ほら生徒会長もなんとか言って……」
山上は生徒会長の方を見る。
「天使だ。」
生徒会長は目をキラキラとさせて、黒たちを見る。
「ああ、そうか………………はぁ?」
生徒会長からの返答に困惑する山上。生徒会長は黒に惚れてしまったらしい。
「俺はあいつに一目惚れしちまったぜ」
生徒会長には屋上から睨み付けている黒髪の美少女がお迎えに来た美しい天使のように見えているらしい。
生徒会長は一歩前に出ると、自身のスピーカーを地面に落としてビルの屋上に向かって自己紹介を始めた。
「お嬢さん、俺の名は『大台ヶ原(だいだいがはら)』。お嬢さんの名前を教えてください」
「私? 私は黒よ」
何も知らない黒は下にいる生徒会長に向かって素直に名前を教えた。自分が声をかけられている大台ケ原に一目惚れされているなんて彼女には知る由もない。
「黒さん、ここで会ったのも何かの縁だ。俺は貴方に一目惚れした。貴方の素晴らしい天使のような顔、他人をも守ろうとする心の優しさ。俺は感動しました。どうか私と友達になって……あれ?」
まずはお友達から初めていきたいと黒に尋ねていた生徒会長であったが、その想いは届くことがなかった。大台ケ原が気がつくと黒がいない。下から見えるビルの屋上の端から端字まで探しても黒の姿が見当たらない。
「生徒会長、『ここで……』からあいつはいなかったぜ」
山上が大台ケ原の肩をポンポンと叩いて慰めるようにして事の真相を彼に伝える。
「せっかくの告白を聞いてもらえなくて残念がっているだろうな」と山上は考えて、生徒会長を慰めようとしたのだが。
「そんな恥ずかしがり屋の彼女にも惚れるっ!!!」
「こりゃ末期だな」
いつも通りのバカに頭を痛くする山上であった。
さて、ここは黒達のいるビルの屋上。
勝手に建物の屋上にいるのはどうかと思うが、緊急時だから仕方がない。
だが、あの集団にいつここへ侵入されるか分からない。
階段と屋上を繋ぐドアの扉には鍵をかけたし、ドアの前には対付喪神用小型自動追撃戦車KOBORUTOをいくつも並べている。
完璧に立てこもる準備を済ませることができた。
「───さてと、これで準備は完了ね。あとはどれ程持ちこたえれるか」
黒は汗を拭い、ホッと一安心する。あとはこのまま時間をかけて籠城していくのみ。衣服も食事も黒の能力で取り出すことが出来るため、何日でもこのビルの屋上に立てこもることはできる。籠城戦というやつだ。
すると、被害者の女性は申し訳なさそうな顔をして黒を見る。
「すみません。見ず知らずの私なんかのために……」
「良いわ別に。困ってる人がいたら助ける。そう教わってきたから」
その返事に彼女は静かに笑った。その笑顔に連れられて黒も静かに笑う。
「私、3ヶ月前からずっと部屋に隔離されていたんです。不治の病です。
毎日、ご飯を食べて薬を飲んで寝るだけの生活でした。
ある日、とある人に出会って私の人生は変わりました。
まぁ、今外に出て自由にできているのも彼のお陰です。本当にあの人には感謝しています。
リベリオと呼ばれるカウンセリングルームの先生にいつか恩返しするのが夢なんです」
「外に出たくらいで嬉しかったの?
なら、もっと嬉しくさせなくちゃね!!」
その言葉に彼女は少し驚く。
「えっ!?」
「綺麗な景色も見に行きましょう。
というか、お金も貯めなきゃ。いいバイト先があるんだけど?
私のバイト先に来ない?
バイト仲間は変な人達だけどいい人だし、素晴らしいカフェよ。
えっと、とにかく失われた貴方の3ヶ月を取り戻しましょう」
彼女は楽しそうに言っている黒を不思議に思った。なぜ、彼女がそこまで楽しそうに語ってくれるのか。なぜ、集団から助けてくれただけの恩人がさらに自分の面倒まで見ようとしてくれるのか。
「何で? そこまで言ってくれるんですか?」
少女の純粋な疑問。ここで少女を置いて立ち去れば、
「だって、もう私達知り合った仲じゃない。あっ、そう言えば名前を聞いてなかった」
「仲……仲ですか。あっ、私は『飯野(めしの)』です。よろしくお願いします」
自分とは全く正反対の性格をしている黒を、飯野は物珍しく眺めている。
内気な性格から友達はできず、いつも一人だった日々。親も来ず、来るのは白衣の医者達。
カウンセリングルームに出会わなければ、人間不振になっていただろう。
だが、それにカウンセラーに救われたおかげで今ではこうして外にいられる。新しい出会いを味わうことが出来る。本当に飯野はカウンセラーや2人に心の中で感謝していた。
「飯野ちゃん、飯野ちゃん」
ふと気づくと黒が自分を呼んでいる。
「飯野ちゃん。そろそろ、生徒会共のお出ましよ」
屋上より下の階に配置しておいたKOBORUTOからの通信が消える。
これはつまり、あの集団がこちらへと近づいてきているという証明であった。
「黒さん。私と出会った時、あるお店の前にいましたよね。今度三人でそこに行きませんか?
私、今日のお礼がしたいので……。」
「えっ!! もちろん行くわ。妙義もきっと喜ぶよ。でもお金は?」
「もちろん、あなたのバイト先で働いて稼ぎますよ!!」
バイト代で行けるほど安いお店ではないことは飯野も知っているが、彼女はそれを望んだ。
2人の少女の約束。それを遮るようにして、屋上へと続くドアが蹴り飛ばされてズボンに手を入れたまま山上が2人の目の前に現れた。
山上によって縛り上げられた戦車が無残に見える。
しかも、山上はどうやら一人でここに上がって来たみたいだ。その背後には誰かがいるような気配がなく。彼1人だけがゆっくりと屋上へと足を踏み出す。
「生徒会長や、皆は置いてきた。
生徒会長や仲間の何人かは付喪人だが、契約をできない奴もいるからな。
それにてめぇは危険だ。仲間は危険な目に会わせられねぇ」
「へぇー、私の名も有名になったものね。危険なんて言われるのは悲しいけど~」
闘いが始まる。相手は王レベルという付喪人。そのオーラから関しても強いのは分かるが、油断しなければ黒の敵ではない。しかし、その時、黒は明山に聞いた話を思い出した。
「いいか、物語に出てくる糸使いは強い奴が多いからな。
付喪人なんてもんがいるなら、いずれそんな奴と出会うかも知れない。気を付けろよ。俺も殺されたからな」と笑いながら言ってたようなそんな記憶があった。
あの時は「何言ってんだこいつ」と思ったが今なら明山の言っていたことが黒には分かる。
「いい? 飯野ちゃん。あなたのすぐ後ろに私の能力である引き出しの一段を出している。そこはここから少し離れた場所に繋がっているわ。
そこから逃げて!!」
「そんな、嫌ですよ。黒さん一緒に行きましょう」
飯野にとっては黒は友達なので、置いていくなんてことはできない。しかし、山上に先に飯野を狙われてはいけない。ここはどうにかしてでも飯野を逃がさねばならない。
すると、黒は子供を宥めるような口調で振り返ることなく飯野に向かって口を開いた。
「いい? 私の能力は使うとお腹がすいて動けなくなっちゃうの。
今ここであいつの足止めはする。だから、早く逃げて。
大丈夫、先に行ってて。貴方はもう自由なんだからね」
「はい!!」
飯野はハッキリと大声で返事をすると、黒の言っていた引き出しに向かって走り出す。
今はどういうことか考えている暇はない。
それは黒を信頼しているから飯野は先に逃げるのだ。
もう彼女を縛る人たちはいない。不治の病も後で考えればいい。今は飯野は反抗したかった。失敗しても成功しても、この一日だけでいいから自由を満喫したかった。
それはただ1つの少女の我儘。それはただ1つの少女の反抗。
どうなろうと信じる。そして飯野は自由を楽しむ。
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