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第2章 どうやらみんなは試験を受けるようです。
職業危機
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実際、俺にとってはさっきの説明は初耳だった。
だって俺がこの世界に転移した時、すでに免許持ってたし、すでに付喪人だったからである。
しかし、この世界の事を全く知らないのもヤバイのだろう。
俺は今日の出来事をきっかけに少しずつこの世界の事を勉強していくことにした。
「ちょっと、明山さん。聞いてますか?」
全く…人がせっかく勉強する気になったってのに…。
「このまま着けてないままでいると、明山さんがどれだけ頑張って付喪神を倒しても、レベルどころか給料も上がらず、最悪の場合もらえないかもしれません。そうなるとホントに一大事です。なので後で明山さんの家に行って探してみましょうよ。きっとどこかに隠れてるかも…。」
「英彦、もしかして一緒に探してくれるのか?」
「当たり前じゃないですか。早く見つけないと…。」
あっ、こいつスゲーいい奴だ。
英彦の優しさに涙が出そうになる。
恐らくあれは付喪人には当たり前の事で、もちろん基礎知識だろう。
それを知らないと笑い者にされるほどの…。
でもこいつは俺が知らないと言っても、笑い者にもせず、同情してくれたのだ。
「よしこれ以上お前の時間を取るわけにはいかない。今から探しに行こう。」
すると英彦はその発言に対して驚いた表情を見せる。
「今ってもう開店前ですよ。明山さんはバイトどうするんですか?」
俺はそういう質問が来ることをちゃんと予想していた。
「この際だから言っておこう。実はこの店のバイトリーダーはシフト制なんだ。だから俺は今日はバイトの日じゃないんだ。」
ポカーンとなった英彦の事はさておき、俺はそのまま説明を始める。
「この店のバイトリーダーは週1のシフト制で、俺は金曜日担当バイトリーダーなんだ。」
「えっ、じゃあこの前バイオンにあんなはっきりとバイトリーダーだと言った理由は一体。」
俺はいい声のボイスで、
「あの日が、金曜日だったからだァ!!」
…と言い放ってみたところ、なんか店の中が一瞬静かになったように感じた。
結局、俺たちはサンチュウといわれているブレスレットを探しに明山の家に行くことに…。
自分の家なのに中身が違うという変な状態なので俺は、俺の家ではなく“明山の家”と呼ぶことにしているのである。
家の様子は少し豪華な洋風の家で、小さな庭もある。
そこに父、母、そして俺の三人で住んでいたようだ。
俺には兄弟が何人かいるらしいが、すでに家を出てそれぞれで暮らしているらしい。
この家に引っ越して住み始めた時には、すでに三人だった。
しかし、途中から父と母は仕事の関係で海外に行くことになり、結局明山は一人暮らしで生活していたと明山の日記には書かれてある。
「お邪魔しまーす。」
無事に明山の家に着いた俺たちは、早速サンチュウを探し始めた。
明山の部屋、リビング、タンスにクローゼットの中まで隈無探した。
そして一時間後、
どうやら英彦が何か見つけてこちらに持ってきた。
「明山さんこれは何ですか?」
それは探していたブレスレットではなく。
「あー、これはたぶん家のアルバムだろうな。」
「へー、アルバムですか…。これは小さいときの明山さんでしょうか。ふーん おっ、これは…。」
「ちょっ…やめろよ。恥ずかしいだろ。英彦」
本来なら中身は違うはずなので、恥ずかしい等と思うはずがないのだが、もしも俺が明山平死朗として生まれていたならと思うとなぜか英彦を止めずにはいられなかった。
10分くらい格闘した後、やっと英彦からアルバムを取り返す。
「よし、あいつに見つからない場所に…………………いや待て。」
一度冷静になり少し息を整えて記憶をたどる。
何か忘れてるのだ。
何かの目的、ここに来た理由。
「ハッ!!」
思い出した。
「どうしたのですか。いきなり大きな声で?」
「こんなことしてる場合じゃない。どうする?
ここまで探してもないとすると…。」
「何かあったんですか?」
「いや今日ここに来た理由は、ブレスレットを探すためだろ。
俺たちはそれをすっかり忘れてこんなことで時間を潰してしまっていたんだ。」
英彦はポカーンとしている。
こいつ…まさか今の説明でも思い出せてないのか?
「とにかく英彦。もしもサンチュウをなくした場合って皆どうしてるんだ?」
俺は一旦聞いてみることにした。
すると、英彦は恐ろしい事を言いはなってくる。
「変えはありません。なので連盟にもらいに行くしかないでしょう。
ですが、もし着けずに何日も経っていたら、仕事放棄したと思われてしまうでしょうね。
そしてクビという事になり、免許は剥奪されます。でも大体の人は着けずに戦ったとしても戦闘経歴が無いことが分かって直接、連盟にもらいに行くのです。」
仕方なかったんだ。知らなかったんだ。
サンチュウなんて名前のブレスレットのことも、付喪人に免許が必要だったことも…。
この世界に来て今日で何ヵ月だろうか。
ああ、夕焼けがきれいだな。
俺はあの後、付喪連盟にサンチュウを貰いに行ってみた。
わずかな希望に賭けて…。
だがサンチュウの戦闘経歴が3ヶ月以上更新が無かったので、クビになっていると言われた。
つまり俺がこの世界に来て何体もの付喪神と戦い。
町を陰ながら守ってきた事は誰も知らないのだ。
これからはカフェ一筋でバイトを頑張っていくしかないのだ。
ここまで来たら泣きたくなる。
俺は夕焼けの中を少しでも早く帰宅するために走った。
もちろん、家に帰ってきても誰もいない。
英彦はさっき帰ってしまったのだ。
明山はいつもこんな暮らしだったのだろうか。
俺が明山になるまで一体どんな人生を歩んできたのだろうか。
どんな仲間と出会い、どんな敵と戦い、どんな性格で今まで生きてきたのだろうか。
俺は明山になれているだろうか…。
そしてサンチュウをどこで無くしたのだろうか。
そう、今の俺には明山の書いた日記以外のことは分からない。
しかし、考えても仕方ないことだ。
俺は部屋の端のソファーに座りテレビを見ようと電源を入れた。
「はいブロウド久しぶりね。
あら? 元気が無いわねどうしたの?」
テレビには外国人風の男女が映っている。
もしかして、通販番組だろうか?
「やあ、ジェニファー。実はどうしても倒したい人がいるんだけど、僕の今の力じゃどうにもならないんだ。どうにかして修行できれば強くなれるのに…。」
「そういうことよくあるわよ。でもね、これがあれば解決よ。」
ジェニファーは舞台裏から何かを持ってくる。
「いや持って来てから始めろよ。」
しかし、ブロウドの小声の批判は聞こえなかったらしい。
そしてジェニファーはそれをカメラの方向に向けた。
「これは!?」
画面に写ったのは何かのチラシだった。
「いやそれただのチラシじゃないか。」
「実はね。これは付喪連盟の付喪人試験申し込みのチラシなのよ。」
「いやジェニファー? これは通販番組だよ?
何でチラシなの?」
「実は今日は宣伝を頼まれたの。スポンサーだしね。だから今日は通販番組はしません。」
こんなのでいいのかテレビ局?
「えっと…このチラシの裏には応募用紙がついていて、それを記入して送ると付喪人試験に参加できるという仕組みよ。
どう? ブロウド?」
しかしブロウドは首を横に振り、
「僕は修行がしたいって言ったんだよ。付喪人試験なんて受けないよ。」
「そんな固いこと言わないで…。もし付喪人になったら女性にモテモテでしょうね。
後、上位に行くほど給料アップするらしいわよ。どうせ修行なんて続かないんんだからやめちゃって、付喪人として活躍しちゃいなさいよ。ブロウド。」
「モテモテ? 給料アップ?」
ブロウドはやる気の炎で燃え上がっている。
「分かったよ。ジェニファー僕やるよ。
よし、そうと決まれば早速チラシを貰いに行かなくっちゃ。」
上手く丸め込まれたブロウドは颯爽とスタジオを飛び出した。
スタジオ内に異様な空気が流れる。
「──えっと、ブロウドがいなくなってしまったのでこれで番組を終わります。最後にこちらの試験はどんな人でも受けることができます。
例えば、子供やお年寄り、すでにクビになった人でも誰でも受けることができます。さぁ、皆さんも試験に合格して付喪人ライフをお楽しみください。それでは明日もこの時間にお会いしましょう。」
この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りしました。
だって俺がこの世界に転移した時、すでに免許持ってたし、すでに付喪人だったからである。
しかし、この世界の事を全く知らないのもヤバイのだろう。
俺は今日の出来事をきっかけに少しずつこの世界の事を勉強していくことにした。
「ちょっと、明山さん。聞いてますか?」
全く…人がせっかく勉強する気になったってのに…。
「このまま着けてないままでいると、明山さんがどれだけ頑張って付喪神を倒しても、レベルどころか給料も上がらず、最悪の場合もらえないかもしれません。そうなるとホントに一大事です。なので後で明山さんの家に行って探してみましょうよ。きっとどこかに隠れてるかも…。」
「英彦、もしかして一緒に探してくれるのか?」
「当たり前じゃないですか。早く見つけないと…。」
あっ、こいつスゲーいい奴だ。
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恐らくあれは付喪人には当たり前の事で、もちろん基礎知識だろう。
それを知らないと笑い者にされるほどの…。
でもこいつは俺が知らないと言っても、笑い者にもせず、同情してくれたのだ。
「よしこれ以上お前の時間を取るわけにはいかない。今から探しに行こう。」
すると英彦はその発言に対して驚いた表情を見せる。
「今ってもう開店前ですよ。明山さんはバイトどうするんですか?」
俺はそういう質問が来ることをちゃんと予想していた。
「この際だから言っておこう。実はこの店のバイトリーダーはシフト制なんだ。だから俺は今日はバイトの日じゃないんだ。」
ポカーンとなった英彦の事はさておき、俺はそのまま説明を始める。
「この店のバイトリーダーは週1のシフト制で、俺は金曜日担当バイトリーダーなんだ。」
「えっ、じゃあこの前バイオンにあんなはっきりとバイトリーダーだと言った理由は一体。」
俺はいい声のボイスで、
「あの日が、金曜日だったからだァ!!」
…と言い放ってみたところ、なんか店の中が一瞬静かになったように感じた。
結局、俺たちはサンチュウといわれているブレスレットを探しに明山の家に行くことに…。
自分の家なのに中身が違うという変な状態なので俺は、俺の家ではなく“明山の家”と呼ぶことにしているのである。
家の様子は少し豪華な洋風の家で、小さな庭もある。
そこに父、母、そして俺の三人で住んでいたようだ。
俺には兄弟が何人かいるらしいが、すでに家を出てそれぞれで暮らしているらしい。
この家に引っ越して住み始めた時には、すでに三人だった。
しかし、途中から父と母は仕事の関係で海外に行くことになり、結局明山は一人暮らしで生活していたと明山の日記には書かれてある。
「お邪魔しまーす。」
無事に明山の家に着いた俺たちは、早速サンチュウを探し始めた。
明山の部屋、リビング、タンスにクローゼットの中まで隈無探した。
そして一時間後、
どうやら英彦が何か見つけてこちらに持ってきた。
「明山さんこれは何ですか?」
それは探していたブレスレットではなく。
「あー、これはたぶん家のアルバムだろうな。」
「へー、アルバムですか…。これは小さいときの明山さんでしょうか。ふーん おっ、これは…。」
「ちょっ…やめろよ。恥ずかしいだろ。英彦」
本来なら中身は違うはずなので、恥ずかしい等と思うはずがないのだが、もしも俺が明山平死朗として生まれていたならと思うとなぜか英彦を止めずにはいられなかった。
10分くらい格闘した後、やっと英彦からアルバムを取り返す。
「よし、あいつに見つからない場所に…………………いや待て。」
一度冷静になり少し息を整えて記憶をたどる。
何か忘れてるのだ。
何かの目的、ここに来た理由。
「ハッ!!」
思い出した。
「どうしたのですか。いきなり大きな声で?」
「こんなことしてる場合じゃない。どうする?
ここまで探してもないとすると…。」
「何かあったんですか?」
「いや今日ここに来た理由は、ブレスレットを探すためだろ。
俺たちはそれをすっかり忘れてこんなことで時間を潰してしまっていたんだ。」
英彦はポカーンとしている。
こいつ…まさか今の説明でも思い出せてないのか?
「とにかく英彦。もしもサンチュウをなくした場合って皆どうしてるんだ?」
俺は一旦聞いてみることにした。
すると、英彦は恐ろしい事を言いはなってくる。
「変えはありません。なので連盟にもらいに行くしかないでしょう。
ですが、もし着けずに何日も経っていたら、仕事放棄したと思われてしまうでしょうね。
そしてクビという事になり、免許は剥奪されます。でも大体の人は着けずに戦ったとしても戦闘経歴が無いことが分かって直接、連盟にもらいに行くのです。」
仕方なかったんだ。知らなかったんだ。
サンチュウなんて名前のブレスレットのことも、付喪人に免許が必要だったことも…。
この世界に来て今日で何ヵ月だろうか。
ああ、夕焼けがきれいだな。
俺はあの後、付喪連盟にサンチュウを貰いに行ってみた。
わずかな希望に賭けて…。
だがサンチュウの戦闘経歴が3ヶ月以上更新が無かったので、クビになっていると言われた。
つまり俺がこの世界に来て何体もの付喪神と戦い。
町を陰ながら守ってきた事は誰も知らないのだ。
これからはカフェ一筋でバイトを頑張っていくしかないのだ。
ここまで来たら泣きたくなる。
俺は夕焼けの中を少しでも早く帰宅するために走った。
もちろん、家に帰ってきても誰もいない。
英彦はさっき帰ってしまったのだ。
明山はいつもこんな暮らしだったのだろうか。
俺が明山になるまで一体どんな人生を歩んできたのだろうか。
どんな仲間と出会い、どんな敵と戦い、どんな性格で今まで生きてきたのだろうか。
俺は明山になれているだろうか…。
そしてサンチュウをどこで無くしたのだろうか。
そう、今の俺には明山の書いた日記以外のことは分からない。
しかし、考えても仕方ないことだ。
俺は部屋の端のソファーに座りテレビを見ようと電源を入れた。
「はいブロウド久しぶりね。
あら? 元気が無いわねどうしたの?」
テレビには外国人風の男女が映っている。
もしかして、通販番組だろうか?
「やあ、ジェニファー。実はどうしても倒したい人がいるんだけど、僕の今の力じゃどうにもならないんだ。どうにかして修行できれば強くなれるのに…。」
「そういうことよくあるわよ。でもね、これがあれば解決よ。」
ジェニファーは舞台裏から何かを持ってくる。
「いや持って来てから始めろよ。」
しかし、ブロウドの小声の批判は聞こえなかったらしい。
そしてジェニファーはそれをカメラの方向に向けた。
「これは!?」
画面に写ったのは何かのチラシだった。
「いやそれただのチラシじゃないか。」
「実はね。これは付喪連盟の付喪人試験申し込みのチラシなのよ。」
「いやジェニファー? これは通販番組だよ?
何でチラシなの?」
「実は今日は宣伝を頼まれたの。スポンサーだしね。だから今日は通販番組はしません。」
こんなのでいいのかテレビ局?
「えっと…このチラシの裏には応募用紙がついていて、それを記入して送ると付喪人試験に参加できるという仕組みよ。
どう? ブロウド?」
しかしブロウドは首を横に振り、
「僕は修行がしたいって言ったんだよ。付喪人試験なんて受けないよ。」
「そんな固いこと言わないで…。もし付喪人になったら女性にモテモテでしょうね。
後、上位に行くほど給料アップするらしいわよ。どうせ修行なんて続かないんんだからやめちゃって、付喪人として活躍しちゃいなさいよ。ブロウド。」
「モテモテ? 給料アップ?」
ブロウドはやる気の炎で燃え上がっている。
「分かったよ。ジェニファー僕やるよ。
よし、そうと決まれば早速チラシを貰いに行かなくっちゃ。」
上手く丸め込まれたブロウドは颯爽とスタジオを飛び出した。
スタジオ内に異様な空気が流れる。
「──えっと、ブロウドがいなくなってしまったのでこれで番組を終わります。最後にこちらの試験はどんな人でも受けることができます。
例えば、子供やお年寄り、すでにクビになった人でも誰でも受けることができます。さぁ、皆さんも試験に合格して付喪人ライフをお楽しみください。それでは明日もこの時間にお会いしましょう。」
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