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第一章 離島生活

8話 未来視

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 部屋に戻ると白い肌着に着替えているヴィーちゃんが机に向かって日記を書いていました。髪も白いのに服まで白いと全身真っ白ですね。

 私も自分用に用意された肌着に着替えるため、紺色の修道服を脱いで用意されたベッドの上に投げ捨てます。


「ちょっとクリスチナ? 脱いだ服くらい畳んでおきなさいよ。しわになるわよ」
「大丈夫ですよ! この程度ではしわになりませんから」
「何でわかるのよ」
「いいんです!」


 肌着に袖を通して私はベッドに潜り込みます。それを見たヴィーちゃんも机の脇に置かれた蝋燭の火を消し、彼女もベッドに潜り込みました。

 夢を見る。明日の夢。朝はヴィーちゃんに叩き起こされ、遅れることなくお風呂に向かいます。
 お風呂場ではぎゅうぎゅうに詰められた状態でモニカお姉ちゃんの傍にいると体中を触られてしまうみたいです。うーむ。回避しましょうか。
 部屋に戻って身支度を整えたら、朝の礼拝。
 その後に私達フランチェスカ班は昨日同様に朝食の準備を始めるのです。私達の朝食準備は明日を含めあと二日。
 ローテーションで行われる作業は、三日ごとに別の作業にローテーションされるようです。
 作業中にモニカお姉ちゃんが、刃物で指を切ってしまうみたいです。これは助けましょうか。朝食を食べる時は特にいつも通りで変わらない。
 しばらくは明日の夢が繰り広げられていましたが、最後に二つだけ、ずっと先の未来の夢が浮かびました。

 明後日の夜に、サーシャさんは水浴びをしてはいけないこと。
 そして十日目の夜にシスター・タチアナに目撃された上で、一人で出かけること。

 それぞれ何をさしているかわからないところもありましたが、何故そうしなければいけないのかはなんとなくわかりました。

 とりあえず明日は普通に生活しましょうか。

 夢は終わりを告げます。私は振り下ろされる枕を受け止めました。


「え? 起きてたの?」
「感が鋭く見えませんか?」
「偶然寝相で受け止めたかと思ったわ」


 ヴィーちゃんが私に枕を叩き付けようとしたところ。私は上手にその枕を受け止めると、ヴィーちゃんは目を丸くして驚いていました。

 私達は一度肌着のまま、宿舎の部屋から出ると、廊下にはゾロゾロ歩く他の聖女候補生たちにより、辺り一面が肌着の白色で埋め尽くされます。

 私はすぐさまモニカお姉ちゃんの位置を確認すると、彼女と距離を取ることを意識しながら浴場に向かいました。

 浴場近辺には護衛の騎士は近寄ってきません。女性の騎士様がいらっしゃれば話は変わるのですが、この離島にいる騎士様たちは皆男性です。
 なぜなら、聖女候補生を護衛の任務は基本的に志願制。その上で男性ばかりなのは、聖バレリア教皇国では聖女または聖女に選ばれなかった聖女候補生たちは、聖痕が浮かんでいる限りこの国での高い地位が約束されているからです。

 その為、聖痕持ちの女性と結婚したい騎士や、息子を結婚させたいと考える親の指示により志願した騎士ばかりだから必然的に男性ばかりになります。

 ちなみに聖女も聖女候補生も婚姻に規制はなく、自分が選んだ相手と結婚できますので、この離島生活の護衛任務は、聖痕持ちの女性と親しくなるチャンスでもあるのです。

 浴場に向かう最中、さすがに聖女候補生だけを固める訳にもいかずに多くのシスターが見張りとして近くを歩いていました。

 そこまでしなくても、今日の入浴は安全なんですけどね。ですが、もし今日の入浴は安全だから、警備はしなくていいと声をかけたら、未来が変わるかもしれない。
 だから私は今日は安全だと誰にも伝えられない。今日も護衛を続けて貰うことが最善であると、私だけが知っていればいい。

 浴場では肌着のまま次々と浴槽に詰め込まれる聖女候補生たち。非常にシュールです。

 貴族出身の聖女候補生が不快そうしていたり、はじめて浴槽に使ったスラム出身の聖女候補生は目を輝かせていたりと、ここでもまた千差万別の反応を見ることができます。

 モニカお姉ちゃんは遠く離れた私を諦め、偶然近くにいたヴィーちゃんが餌食になっていました。ごめんなさい。

 私は密かにサーシャさんの近くに寄っていたため、昨日の水浴びに近い心地よさを感じながら入浴を楽しむことにしました。
 聖水の力をもってしても、前後左右誰かとぶつかったり離れたりしながらの入浴は中々落ち着くことはできないのですけどね。
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