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第一章 離島生活
1話 聖女候補生クリスチナ・フォン・アニェージ
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ファータ大陸最西端にある聖バレリオ教皇国。温厚な気候の平野にある首都を拠点とする中央教会には、教皇と呼ばれる役職のオッサンが、聖女候補生を大陸から少し離れたところにある無人島の屋敷に集めました。私も、その聖女候補生として無人島に連れていかれます。そしてすぐに夜になり、私たちは与えられた部屋に二人一組で就寝を共にすることになりました。
その日はすぐに眠りにつきます。
翌朝、陽光が差し込む窓を開け空を見上げた。空は夜と移り変わる幻想的な色合いをしていて、これから毎日見る光景と理解しながらも、瞳にはこびりつくように焼き付いた。
「やっとこの日ですね。私が聖女と照明される最初の一日。スーパーウルトラミラクルラッキーセイントガールのクリスちゃんの物語の始まりです」
身支度を整えるために一度窓から離れて化粧台に向かいます。
灰色の髪を揺らしながら、赤褐色の瞳で鏡を見つめて、前髪を整える。
「うるさいわよクリスチナ」
「はい! 聖女クリスちゃんです!」
「いや、その返事はおかしいでしょ」
ベッドから起き上がったのは、運が良いことに私と同室を与えられた聖女候補生。白い髪にロングヘアの少女。
琥珀色の瞳にツリ目が可愛い童顔の彼女の名前はヴィルナ・ガエターナ・クナップ。
聖女候補として呼ばれ、聖痕が浮かび上がったことによって結界魔術の力に目覚めたそうです。
この国では聖痕が浮かび上がる者は神から力を授かります。しかし、聖痕が浮かび上がるタイミングはひとそれぞれ。生まれつきの人もいれば、朝目覚めたら浮かんでいたという人もいます。
ここに集められた女性は地域や身分を無視して体に聖痕が発現している人たちです。
年齢も千差万別。下は八歳から上は五十四歳まで。
最高齢は私よりもちょうど四十歳も年上と言うことですね。
「ヴィーちゃんは十二歳なのに偉いでちゅねー」
「アンタと二つしか違わないでしょ!」
「えー? お姉さんのことはいつでも聖女様と呼んでいいんですよ?」
「はぁ!? 聖女になるのはアタシよ!」
私の言葉に威嚇するように返事をするヴィーちゃん。わかりますよ。ヴィーちゃんは子猫ちゃんなんです。最初は中々懐かないものですよね。
私とヴィーちゃんが朝の戯れをしている最中、少々強めにドアがノックされます。
「クリスチナ・フォン・アニェージ嬢、ヴィルナ・ガエターナ・クナップ嬢。起床済みだな? 朝の礼拝は済ませたのか?」
荒々しくワイルドな男性の声。その声が聞こえた私の背筋はピーンと伸び切った。
「今行きます! 少々お待ちください」
「早くしろ! 毎朝呼びに来るまで怠けていると聖女に選ばれないぞ!」
「ごめんなさい! アンタのせいよクリスチナ!」
「私のことは聖女様でいいですよ?」
「うっさい!! 初日から遅刻魔だと思われちゃうじゃない!!」
私とヴィーちゃんの二人は部屋から出ると、部屋の外で待機していた騎士の男性が私達二人に視線を落とします。
藍色の髪は戦いの邪魔にならない様に短めですが、襟足は少しだけ長め。髪より少し明るい色の瞳は、深い海のような色をしていました。
「お待たせしました騎士様」
「礼拝堂に案内しよう。ついてこい」
騎士ヴィンセント・アウレリオ・ベニーニ。私より四つ年上で、そしていつか…………私が恋する男性です。
なぜそんなことがわかるのか。それは私の聖痕の力が…………未来を知る力だからです。
その日はすぐに眠りにつきます。
翌朝、陽光が差し込む窓を開け空を見上げた。空は夜と移り変わる幻想的な色合いをしていて、これから毎日見る光景と理解しながらも、瞳にはこびりつくように焼き付いた。
「やっとこの日ですね。私が聖女と照明される最初の一日。スーパーウルトラミラクルラッキーセイントガールのクリスちゃんの物語の始まりです」
身支度を整えるために一度窓から離れて化粧台に向かいます。
灰色の髪を揺らしながら、赤褐色の瞳で鏡を見つめて、前髪を整える。
「うるさいわよクリスチナ」
「はい! 聖女クリスちゃんです!」
「いや、その返事はおかしいでしょ」
ベッドから起き上がったのは、運が良いことに私と同室を与えられた聖女候補生。白い髪にロングヘアの少女。
琥珀色の瞳にツリ目が可愛い童顔の彼女の名前はヴィルナ・ガエターナ・クナップ。
聖女候補として呼ばれ、聖痕が浮かび上がったことによって結界魔術の力に目覚めたそうです。
この国では聖痕が浮かび上がる者は神から力を授かります。しかし、聖痕が浮かび上がるタイミングはひとそれぞれ。生まれつきの人もいれば、朝目覚めたら浮かんでいたという人もいます。
ここに集められた女性は地域や身分を無視して体に聖痕が発現している人たちです。
年齢も千差万別。下は八歳から上は五十四歳まで。
最高齢は私よりもちょうど四十歳も年上と言うことですね。
「ヴィーちゃんは十二歳なのに偉いでちゅねー」
「アンタと二つしか違わないでしょ!」
「えー? お姉さんのことはいつでも聖女様と呼んでいいんですよ?」
「はぁ!? 聖女になるのはアタシよ!」
私の言葉に威嚇するように返事をするヴィーちゃん。わかりますよ。ヴィーちゃんは子猫ちゃんなんです。最初は中々懐かないものですよね。
私とヴィーちゃんが朝の戯れをしている最中、少々強めにドアがノックされます。
「クリスチナ・フォン・アニェージ嬢、ヴィルナ・ガエターナ・クナップ嬢。起床済みだな? 朝の礼拝は済ませたのか?」
荒々しくワイルドな男性の声。その声が聞こえた私の背筋はピーンと伸び切った。
「今行きます! 少々お待ちください」
「早くしろ! 毎朝呼びに来るまで怠けていると聖女に選ばれないぞ!」
「ごめんなさい! アンタのせいよクリスチナ!」
「私のことは聖女様でいいですよ?」
「うっさい!! 初日から遅刻魔だと思われちゃうじゃない!!」
私とヴィーちゃんの二人は部屋から出ると、部屋の外で待機していた騎士の男性が私達二人に視線を落とします。
藍色の髪は戦いの邪魔にならない様に短めですが、襟足は少しだけ長め。髪より少し明るい色の瞳は、深い海のような色をしていました。
「お待たせしました騎士様」
「礼拝堂に案内しよう。ついてこい」
騎士ヴィンセント・アウレリオ・ベニーニ。私より四つ年上で、そしていつか…………私が恋する男性です。
なぜそんなことがわかるのか。それは私の聖痕の力が…………未来を知る力だからです。
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