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220話 気付き

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 私たちとアリゼが交戦している現場に、膨大な魔力と殺気を纏いながら現れたのは、王国民であれば見間違うこともない我が父、ジェラールその人であった。色だけで言えば金色の髪も青い瞳もありふれれているといえばその通り。

 しかし、その風格と美貌。そして何よりも特徴的な青い瞳の透き通った海のような瞳は、見る人を吸い込むような深さを錯覚させるほどであった。

 ジェラールは私の方に視線を向ける。彼も少々驚いたであろう。ジェラールと同じ深い海のような青い瞳の私を見て、失踪した娘と重ねてしまわないだろうか。本人ですけど。しかし、私と六年前の私は、彼から見て同一人物に映るだろうか。

「そこのお前は…………こちら側の人間と捉えていいのか?」

「…………」

 ジェラールは私が王国兵を護ったところを見ている。だからそう判断することにしてまずはアリゼの方から片付けようとしているのでしょう。アリゼの姿は所々ノイズがかかっており、数十年の時のせいなのか、ジェラールはまだ気づいていない。一度はともに【赤】のワンダーオーブを手に入れるくらいには信頼しあった相手だというのに、目の前にいるアリゼはもうジェラールにはかつての級友と理解できない姿に変わっていたようでした。

 アリゼもアリゼで記憶が剥がれ落ちているのか、ジェラールをジェラールと認識はできているのか。全く喋ろうとしない。でも今は下手に情が生まれてジェラールの手が緩む方が問題……よね。それに私がアリゼとジェラールの関係性を知っている方がおかしい。黙って成り行きに任せるしかないわね。

 ジェラールは剣を抜き、そこに波動魔法をのせ、剣が振動し始める。振動し始めた剣が偶然、庭の植物に触れると、触れた葉は塵になって風に流されてしまった。

波動剣ショックブレード

「俺の魔法を知っているのか」

 ついジェラールの魔法の名前を口に出してしまった私に、ジェラールが質問をする。言えない。でも、私はその質問に答える気はなかった。ジェラールも口に出しただけで追及してこない。

 剣を握ったジェラールに対し、アリゼもこないだと同様金属の塊を放出して来る。何の魔法か未だに解明できないまま。成人男性一人を丸々呑み込めそうな大きさの鉄球を、ジェラールは剣でついた。突かれた鉄球は一瞬で砂鉄に変化するも、今度は砂鉄が再形成し始め、無数の槍になってジェラールに襲い掛かる。それすらもジェラールには無効。波動剣を横薙ぎ払いするその一瞬で、触れてもいない砂鉄の槍たちが木端微塵に破裂してしまった。それでも砂鉄達はまた新たな姿となり、ジェラールに襲い掛かる。

 一見きりがないように見えるが、ジェラールは確実に一歩ずつアリゼに近づいている。アリゼは砂鉄を操作するために足をとめていることにより、二人の距離は有限。剣の間合いこそが、アリゼに残されたタイムリミット。

 だけど、私とジャンヌも指をくわえてみているわけじゃないわ。

「ジャンヌ……そろそろあの魔法を使いましょう」

「!? わかりました」

 ジャンヌが魔力をためるために、少しばかり集中し始めます。彼女にとってこれから使う魔法は慣れ親しんでいない魔法。

 そして私も走り出しては、アリゼに魔法を放つ。

「波動魔法、隆起アースファング

 大地を隆起させ、その鋭い牙がアリゼの身体を貫こうとする。しかし、それよりも早く鋼鉄が邪魔をして隆起は砕かれてしまった。しかし、そんなものは問題ない。彼女が一瞬でもジェラールから視界を外すことが目的。

 ジェラールは一気に間合いをつめるも、アリゼはジャンプして足元に金属の足場を作って上空に逃げようとし始めた。止める。

「ジャンヌ!!!」

「波動魔法、雷龍《ライジング》」

 ジャンヌが繰り出すのは光の波動魔法ではなく、雷の波動魔法。彼女は禁術による六年という時間で、光の波動魔法以外の習得に成功していた。荒ぶる雷龍の姿をした波動が、アリゼの金属の足場を莫大な熱量でとかし始め、アリゼもそこに立っていられはずもなく飛び降りる。飛び降りた先にジェラール。

 アリゼは即座に新たな盾を作り始めるも、ジェラールの剣には無意味。一瞬で塵になる盾。そしてアリゼとジェラールの間にはもう何もない。

 ジェラールの剣がアリゼを貫こうとするその瞬間。

 アリゼとジェラールの視線がぶつかる。

「貴様! アリゼ……なのか?」
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