226 / 228
220話 気付き
しおりを挟む
私たちとアリゼが交戦している現場に、膨大な魔力と殺気を纏いながら現れたのは、王国民であれば見間違うこともない我が父、ジェラールその人であった。色だけで言えば金色の髪も青い瞳もありふれれているといえばその通り。
しかし、その風格と美貌。そして何よりも特徴的な青い瞳の透き通った海のような瞳は、見る人を吸い込むような深さを錯覚させるほどであった。
ジェラールは私の方に視線を向ける。彼も少々驚いたであろう。ジェラールと同じ深い海のような青い瞳の私を見て、失踪した娘と重ねてしまわないだろうか。本人ですけど。しかし、私と私は、彼から見て同一人物に映るだろうか。
「そこのお前は…………こちら側の人間と捉えていいのか?」
「…………」
ジェラールは私が王国兵を護ったところを見ている。だからそう判断することにしてまずはアリゼの方から片付けようとしているのでしょう。アリゼの姿は所々ノイズがかかっており、数十年の時のせいなのか、ジェラールはまだ気づいていない。一度はともに【赤】のワンダーオーブを手に入れるくらいには信頼しあった相手だというのに、目の前にいるアリゼはもうジェラールにはかつての級友と理解できない姿に変わっていたようでした。
アリゼもアリゼで記憶が剥がれ落ちているのか、ジェラールをジェラールと認識はできているのか。全く喋ろうとしない。でも今は下手に情が生まれてジェラールの手が緩む方が問題……よね。それに私がアリゼとジェラールの関係性を知っている方がおかしい。黙って成り行きに任せるしかないわね。
ジェラールは剣を抜き、そこに波動魔法をのせ、剣が振動し始める。振動し始めた剣が偶然、庭の植物に触れると、触れた葉は塵になって風に流されてしまった。
「波動剣」
「俺の魔法を知っているのか」
ついジェラールの魔法の名前を口に出してしまった私に、ジェラールが質問をする。言えない。でも、私はその質問に答える気はなかった。ジェラールも口に出しただけで追及してこない。
剣を握ったジェラールに対し、アリゼもこないだと同様金属の塊を放出して来る。何の魔法か未だに解明できないまま。成人男性一人を丸々呑み込めそうな大きさの鉄球を、ジェラールは剣でついた。突かれた鉄球は一瞬で砂鉄に変化するも、今度は砂鉄が再形成し始め、無数の槍になってジェラールに襲い掛かる。それすらもジェラールには無効。波動剣を横薙ぎ払いするその一瞬で、触れてもいない砂鉄の槍たちが木端微塵に破裂してしまった。それでも砂鉄達はまた新たな姿となり、ジェラールに襲い掛かる。
一見きりがないように見えるが、ジェラールは確実に一歩ずつアリゼに近づいている。アリゼは砂鉄を操作するために足をとめていることにより、二人の距離は有限。剣の間合いこそが、アリゼに残されたタイムリミット。
だけど、私とジャンヌも指をくわえてみているわけじゃないわ。
「ジャンヌ……そろそろあの魔法を使いましょう」
「!? わかりました」
ジャンヌが魔力をためるために、少しばかり集中し始めます。彼女にとってこれから使う魔法は慣れ親しんでいない魔法。
そして私も走り出しては、アリゼに魔法を放つ。
「波動魔法、隆起」
大地を隆起させ、その鋭い牙がアリゼの身体を貫こうとする。しかし、それよりも早く鋼鉄が邪魔をして隆起は砕かれてしまった。しかし、そんなものは問題ない。彼女が一瞬でもジェラールから視界を外すことが目的。
ジェラールは一気に間合いをつめるも、アリゼはジャンプして足元に金属の足場を作って上空に逃げようとし始めた。止める。
「ジャンヌ!!!」
「波動魔法、雷龍《ライジング》」
ジャンヌが繰り出すのは光の波動魔法ではなく、雷の波動魔法。彼女は禁術による六年という時間で、光の波動魔法以外の習得に成功していた。荒ぶる雷龍の姿をした波動が、アリゼの金属の足場を莫大な熱量でとかし始め、アリゼもそこに立っていられはずもなく飛び降りる。飛び降りた先にジェラール。
アリゼは即座に新たな盾を作り始めるも、ジェラールの剣には無意味。一瞬で塵になる盾。そしてアリゼとジェラールの間にはもう何もない。
ジェラールの剣がアリゼを貫こうとするその瞬間。
アリゼとジェラールの視線がぶつかる。
「貴様! アリゼ……なのか?」
しかし、その風格と美貌。そして何よりも特徴的な青い瞳の透き通った海のような瞳は、見る人を吸い込むような深さを錯覚させるほどであった。
ジェラールは私の方に視線を向ける。彼も少々驚いたであろう。ジェラールと同じ深い海のような青い瞳の私を見て、失踪した娘と重ねてしまわないだろうか。本人ですけど。しかし、私と私は、彼から見て同一人物に映るだろうか。
「そこのお前は…………こちら側の人間と捉えていいのか?」
「…………」
ジェラールは私が王国兵を護ったところを見ている。だからそう判断することにしてまずはアリゼの方から片付けようとしているのでしょう。アリゼの姿は所々ノイズがかかっており、数十年の時のせいなのか、ジェラールはまだ気づいていない。一度はともに【赤】のワンダーオーブを手に入れるくらいには信頼しあった相手だというのに、目の前にいるアリゼはもうジェラールにはかつての級友と理解できない姿に変わっていたようでした。
アリゼもアリゼで記憶が剥がれ落ちているのか、ジェラールをジェラールと認識はできているのか。全く喋ろうとしない。でも今は下手に情が生まれてジェラールの手が緩む方が問題……よね。それに私がアリゼとジェラールの関係性を知っている方がおかしい。黙って成り行きに任せるしかないわね。
ジェラールは剣を抜き、そこに波動魔法をのせ、剣が振動し始める。振動し始めた剣が偶然、庭の植物に触れると、触れた葉は塵になって風に流されてしまった。
「波動剣」
「俺の魔法を知っているのか」
ついジェラールの魔法の名前を口に出してしまった私に、ジェラールが質問をする。言えない。でも、私はその質問に答える気はなかった。ジェラールも口に出しただけで追及してこない。
剣を握ったジェラールに対し、アリゼもこないだと同様金属の塊を放出して来る。何の魔法か未だに解明できないまま。成人男性一人を丸々呑み込めそうな大きさの鉄球を、ジェラールは剣でついた。突かれた鉄球は一瞬で砂鉄に変化するも、今度は砂鉄が再形成し始め、無数の槍になってジェラールに襲い掛かる。それすらもジェラールには無効。波動剣を横薙ぎ払いするその一瞬で、触れてもいない砂鉄の槍たちが木端微塵に破裂してしまった。それでも砂鉄達はまた新たな姿となり、ジェラールに襲い掛かる。
一見きりがないように見えるが、ジェラールは確実に一歩ずつアリゼに近づいている。アリゼは砂鉄を操作するために足をとめていることにより、二人の距離は有限。剣の間合いこそが、アリゼに残されたタイムリミット。
だけど、私とジャンヌも指をくわえてみているわけじゃないわ。
「ジャンヌ……そろそろあの魔法を使いましょう」
「!? わかりました」
ジャンヌが魔力をためるために、少しばかり集中し始めます。彼女にとってこれから使う魔法は慣れ親しんでいない魔法。
そして私も走り出しては、アリゼに魔法を放つ。
「波動魔法、隆起」
大地を隆起させ、その鋭い牙がアリゼの身体を貫こうとする。しかし、それよりも早く鋼鉄が邪魔をして隆起は砕かれてしまった。しかし、そんなものは問題ない。彼女が一瞬でもジェラールから視界を外すことが目的。
ジェラールは一気に間合いをつめるも、アリゼはジャンプして足元に金属の足場を作って上空に逃げようとし始めた。止める。
「ジャンヌ!!!」
「波動魔法、雷龍《ライジング》」
ジャンヌが繰り出すのは光の波動魔法ではなく、雷の波動魔法。彼女は禁術による六年という時間で、光の波動魔法以外の習得に成功していた。荒ぶる雷龍の姿をした波動が、アリゼの金属の足場を莫大な熱量でとかし始め、アリゼもそこに立っていられはずもなく飛び降りる。飛び降りた先にジェラール。
アリゼは即座に新たな盾を作り始めるも、ジェラールの剣には無意味。一瞬で塵になる盾。そしてアリゼとジェラールの間にはもう何もない。
ジェラールの剣がアリゼを貫こうとするその瞬間。
アリゼとジェラールの視線がぶつかる。
「貴様! アリゼ……なのか?」
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる