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198話 戦う理由は教えてくれない
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衝撃の中、ゆっくりと闇色に染まる景色。その景色の中で私は守護魔法でウィルフリードを囲む。衝撃のあまりの強さに私の結界はすぐにひび割れたガラスのようになってしまいました。
魔法の出力が強化される【青】のワンダーオーブの力をもってしてもこんなに耐久力がなくなるなんて……ブランクはどれほど強力な魔法をフレデリックに打ち込んだのでしょうか。
私のカバンの中にある【白】のワンダーオーブがまたもや緑色に輝き始めます。どうやらこのワンダーオーブは、光ることで各ワンダーオーブの力を借りることができるみたいです。
魔力総量の回復した私の二重結界。一つ目の結界が完全にひび割れたと同時に、二つ目の結界もすぐにヒビが入り始めます。破壊の限りを尽くす謎のエネルギーを前に、私はただただ新しい結界を作っていくことしかできませんでした。
それでも、今度こそウィルフリードを守り抜く。それが私の誓いなんだ。
もう何枚目の結界が破壊されたかわからない。この攻撃がやむ雰囲気もない。そもそもブランクは私のことに気づいているのかもわからない。今度こそ助けが来ないかもしれない。
内側に何枚も結界を張り続けているせいで、少しずつ結界が縮まっていく。巨体のウィルフリードを覆いきるのも限界なところで黒い魔力の塊は少しずつ収束していきました。
「はぁはぁ。終わった?」
「お前!!」
私の目の前に瞬時に転移して現れるブランク。赤と黒のオッドアイが睨むように私を見つめます。
「この子を守りたかったのよ」
私が横たわるウィルフリードの毛並みをなでると、ブランクはその体をじっと見つめます。そしてゆっくりとなでる。
「こいつは仮にも魔狼だ。そんなにやわじゃない」
「大丈夫なの? 死なない?」
私がそう聞くと、ブランクは私の頭にも手をのせる。そしてゆっくりとまたなでてきました。
「少し待てば治る。それよりもここは危険だ城に戻るといい」
「ブランクは?」
「俺は…………もうしばらく戦うさ。それに王宮にいる意味なんてないだろう?」
「どこに向かうの? フレデリックを倒したならもう向こうのリーダーはいないんでしょう? この戦争も勝ったんじゃない?」
「そんなわけないだろ……むしろこいつらは傭兵だ。雇われてここにいるんだ。仲良しごっこなんかじゃない。仲間が死のうがリーダーが死のうがどうでもいいだろう。こいつらは金銭に似合わないと判断するまで戦い続ける。そういう奴らだ」
傭兵? 雇われて? そうだったわ、まだ黒幕が残っているんだ。そっか、アリゼだ。まだアリゼがいるんだ。彼らはアリゼに雇われてここにいるというなら、リーダーであるフレデリックを撃破してもダメなのね。
「俺はまだ戦う」
「どうして? どうして今まで戦ってくれなかったの?」
「…………理由がなかったからだ」
「理由!? 理由って何よ!! なんで戦ってくれないの?」
私が彼に問い詰めると、彼は冷たい表情のまま。
「俺は魔族だ。魔族が人族を守る理由はない」
「でも来てくれたじゃない」
「それは…………そうだが」
歯切れの悪そうに答えるブランク。何かを言いたそうで、それでも言えない。魔族だか魔王だか人族じゃないとか。彼なりの理由はあるにせよ、そんなことで私は納得できなかった。それに今まで戦う理由がなかったくせに、今度は急にやる気を出して戦いだす。理由もわかりません。
「貴方のことだからどうせ無事に帰ってきてくれるんですよね?」
「……任せろ」
「ついて行ったら邪魔かな?」
「そうだな」
…………あれ? そういえばブランクはもともと誰かから何かを奪われて…………それを取り戻すためにワンダーオーブの力が必要で…………きっと失われたものの正体は【赤】のワンダーオーブに関係していて…………つまりブランクから奪った諜報人はアリゼで…………アリゼは…………個人でブランクと渡り合えるってことなんじゃ…………
「待ってブランク!!」
私がそう声を出すころには、もう消えていく転移の魔法陣だけが地面に浮かんでいました。
魔法の出力が強化される【青】のワンダーオーブの力をもってしてもこんなに耐久力がなくなるなんて……ブランクはどれほど強力な魔法をフレデリックに打ち込んだのでしょうか。
私のカバンの中にある【白】のワンダーオーブがまたもや緑色に輝き始めます。どうやらこのワンダーオーブは、光ることで各ワンダーオーブの力を借りることができるみたいです。
魔力総量の回復した私の二重結界。一つ目の結界が完全にひび割れたと同時に、二つ目の結界もすぐにヒビが入り始めます。破壊の限りを尽くす謎のエネルギーを前に、私はただただ新しい結界を作っていくことしかできませんでした。
それでも、今度こそウィルフリードを守り抜く。それが私の誓いなんだ。
もう何枚目の結界が破壊されたかわからない。この攻撃がやむ雰囲気もない。そもそもブランクは私のことに気づいているのかもわからない。今度こそ助けが来ないかもしれない。
内側に何枚も結界を張り続けているせいで、少しずつ結界が縮まっていく。巨体のウィルフリードを覆いきるのも限界なところで黒い魔力の塊は少しずつ収束していきました。
「はぁはぁ。終わった?」
「お前!!」
私の目の前に瞬時に転移して現れるブランク。赤と黒のオッドアイが睨むように私を見つめます。
「この子を守りたかったのよ」
私が横たわるウィルフリードの毛並みをなでると、ブランクはその体をじっと見つめます。そしてゆっくりとなでる。
「こいつは仮にも魔狼だ。そんなにやわじゃない」
「大丈夫なの? 死なない?」
私がそう聞くと、ブランクは私の頭にも手をのせる。そしてゆっくりとまたなでてきました。
「少し待てば治る。それよりもここは危険だ城に戻るといい」
「ブランクは?」
「俺は…………もうしばらく戦うさ。それに王宮にいる意味なんてないだろう?」
「どこに向かうの? フレデリックを倒したならもう向こうのリーダーはいないんでしょう? この戦争も勝ったんじゃない?」
「そんなわけないだろ……むしろこいつらは傭兵だ。雇われてここにいるんだ。仲良しごっこなんかじゃない。仲間が死のうがリーダーが死のうがどうでもいいだろう。こいつらは金銭に似合わないと判断するまで戦い続ける。そういう奴らだ」
傭兵? 雇われて? そうだったわ、まだ黒幕が残っているんだ。そっか、アリゼだ。まだアリゼがいるんだ。彼らはアリゼに雇われてここにいるというなら、リーダーであるフレデリックを撃破してもダメなのね。
「俺はまだ戦う」
「どうして? どうして今まで戦ってくれなかったの?」
「…………理由がなかったからだ」
「理由!? 理由って何よ!! なんで戦ってくれないの?」
私が彼に問い詰めると、彼は冷たい表情のまま。
「俺は魔族だ。魔族が人族を守る理由はない」
「でも来てくれたじゃない」
「それは…………そうだが」
歯切れの悪そうに答えるブランク。何かを言いたそうで、それでも言えない。魔族だか魔王だか人族じゃないとか。彼なりの理由はあるにせよ、そんなことで私は納得できなかった。それに今まで戦う理由がなかったくせに、今度は急にやる気を出して戦いだす。理由もわかりません。
「貴方のことだからどうせ無事に帰ってきてくれるんですよね?」
「……任せろ」
「ついて行ったら邪魔かな?」
「そうだな」
…………あれ? そういえばブランクはもともと誰かから何かを奪われて…………それを取り戻すためにワンダーオーブの力が必要で…………きっと失われたものの正体は【赤】のワンダーオーブに関係していて…………つまりブランクから奪った諜報人はアリゼで…………アリゼは…………個人でブランクと渡り合えるってことなんじゃ…………
「待ってブランク!!」
私がそう声を出すころには、もう消えていく転移の魔法陣だけが地面に浮かんでいました。
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