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158話 違和感

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 六人になった私たちは次の方針を話し合います。

 全員が焚火を囲むように座っていると、ジョアサンが手を挙げてから発言しました。

「ひとまず他のみんなを探すことは続けるべきだろうが、その前に六人分と少しだけ余分に食糧を集めるべきでしょう」

 ジョアサンの提案に全員が頷きます。食糧調達ができる川と果物のなる木の位置をジョアサンが把握していたため、今回は散策班にジョアサンが確定で入ります。

 ジョアサンが立ち上がると、つられるようにビルジニが立ち上がった。

「僕は侯爵令嬢だけど、公爵家嫡男や公爵令嬢よりは狩りになどでかけたことがあると思ってね。食糧調達なら僕も行こう」

 そして私と目を合わせたカトリーヌさん。私達は攻撃魔法持ちで一緒に行動はできません。

「いい加減私も動くわ。クリスティーンはここで休んでなさい」

「ありがとねカトリーヌさん」

「…………いい加減カトリーヌって呼べばいいじゃない」

 そう言ったまま、三人はジョアサンに連れられて食糧調達と他の皆様を探しに出かけてしまいました。

 アレクシスと向かい合う様に座り、私の右側少し後ろにスザンヌが座りました。

「冷えませんか?」

 アレクシスの質問に対し、私は首を横に振った。

「十分温かいわ。みんなと再会できてよかった」

「本当にお強い方です。思えば魔法遠征の時も諦めずに脱出しようとしていましたし、馬上槍大会でも貴女は強かった。その力はどこから?」

「そうね…………きっと子供の時からよ。覚えているかしら? 私達が幼い頃の話」

「いつのことですか?」

「私がジェラールとエリザベートのクレメンティエフ領視察について行った時よ」

「ええ、覚えていますよ」

「あの時、私達はこっそり大人たちから逃げ出したじゃない。そのあとに貴族の子供を狙った悪い大人たちに襲われて…………あの時は貴女が助けてくれたでしょう?」

「ええ、そうでしたね」

「…………ええ、そうだったのよ」

 私達の話が終わると、パチパチパチという焚火の音だけが耳に届く。

 スザンヌも待機しているだけで何も話そうとしない。

 やがて元々薄暗かった魔界も、日が沈み始めます。これ以上の行動は危険と判断したのか、ジョアサンたちも戻ってきました。

「クリスティーン姫!」

「リビオ!」

 ジョアサン達はでかけたメンバーに加え、リビオまで混じっていました。

 どうやら運よく合流できたみたいです。

「アレクシスもいたのか」

「いてもいいだろ」

「お二人ともいつも通りですね」

「姫君の前だ。もう少し落ち着きたまえ」

 みんなでガヤガヤと話し始める。なんだかんだ言って七人も集まればあと少し。

 とにかく明日辺りからは脱出手段も考えないとね。

 焼いた川魚はちょうど七匹。一人一匹ずつ渡され、食事を始めます。また、目覚めた時同様の不気味な色の果物もあります。

「さすがに夜は人を探せないわ」

 私がそう呟くと、リビオがすぐに返事をします。

「ですが焚火の灯りがあれば誰かはここに気付くでしょう」

「灯りと言えばジャンヌ君が魔法を使えばこちらも観測できるのでは?」

 ビルジニの発言に対し、カトリーヌさんが返した。

「ジャンヌは光の波動魔法だけど、まだまだ戦闘慣れしていないわ。気付いたら真っ先に駆けつけるべきね」

 そして咀嚼していた魚を飲み込んだアレクシスも続けて会話に加わります。

「その点でいえば、見つかっていないメンバーも野営もできて実力もあるミゲルや、自衛力の高い幻惑魔法が使えるオリバーで、多少の不安はありますけど、何とかなりそうな人たちが残りましたね」

 しばらくして食事の後片付けをスザンヌがしていると、何かに気付いて私を呼びました。

「姫様! 少し遠目ですが発光しています!」

「!? どっち? 案内して頂戴。時空魔法、加速アクセル

 私は自分とスザンヌに加速アクセルをかけて光の発生源に一直線に駆けつけました。

 光の発生源では大きなウシのように大きい黒い狼型の獣とジャンヌさん。それからミゲルが交戦していました。

 獣はジャンヌさんに飛びつくも、ミゲルが守護魔法で的確にガードし、ジャンヌさんがレーザーでカウンターを仕掛ける。

 しかし、ジャンヌさんのカウンターは発生が速くても彼女自身がまだまだ遅い。獣に遊ばれているようでした。

 ミゲルの結界が砕かれる瞬間。私は大地に両手を付けます。

 どんなに俊敏な獣でも、どんなに感が鋭くても、地に足をつける者は逃げ出せやしない。

「波動魔法、地震アースクエイク

 私が波動魔法を使うとほぼ同時にスザンヌがジャンヌさんとミゲルに付与魔法、浮遊レヴィテートを行使した。

 獣は突然の地震に対応できずにどこかに逃げ去ってしまいました。

「二人とも!」

「ご無事でしたか!」

 私に気付いたミゲルは、ちゃんとジャンヌさんを抱えてからこちらに走ってきました。

「姫様! 良かったです! 心配していました!」

「私は貴女の方が心配だったわよ」

「へ? でも私は…………平民じゃないですか」

 私もミゲルもスザンヌも、こいつ何を言っているんだ。そういう顔でジャンヌさんを見ていました。

「貴女が私を姫だと思うのは勝手。でもね、私が貴女を友達だと思うのも勝手でしょう?」

「え? 姫様は…………私がそう思わなくても姫様ですよね?」

「いえ、…………まあそうなんですけどね。気持ちの問題よ。友達の命はみな平等よ」

「違いますよ姫様、姫様は友達じゃなくても守ってくれる人です」

「過大評価よ」

 私達は四人でみんなを残してしまった焚火の所に戻りました。
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