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152話 姫と皇子の悩み

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 夜会には次々と大人たちが入場していく中、私達子息子女も特定の相手と一緒に入場する者、両親に連れられて入場する者と様々。

 アレクシスやビルジニは両親と共に入場していましたが、ミゲルとリビオは母親だけ。

 ガエルは護衛として働いていて、レイモンはサボリなのでしょう。

 ガエルもこんな日くらいは休めばいいのには、昼間のせいで通用しなくなったのでしょう。

 オリバーは帝国の人間を引き連れて入場し、カトリーヌさんはお父さんにエスコートされています。

「さすがにジャンヌさんは来れませんか」

「彼女は彼女で親しい方々や家族と過ごされているかと」

 私が会場の片隅で周囲を見渡していると、すぐ横に給仕として働いているスザンヌがいました。

「サボリかしら?」

「第一王女が目立たない場所に逃げ込んでいましたのでつい」

「いやぁまさか求婚ラッシュが夜会まで続くと思わないじゃない」

「だからと言って幻惑魔法で隠れなくても」

 夜会会場だというのに、堂々と魔法を行使。今の私にはワンダーオーブの力のおかげか、私よりも巧みに幻惑魔法が操れるものがほとんどいない。

 だから会場の隅っこに隠れることくらい容易なのです。

 定期的にこちらを見ているエリザベートには、ガッツリバレているみたいですけどね。

 しかし、オリバーには感づかれました。真っすぐこちらに向かってくる帝国の皇子。

 私は壊される前に幻惑魔法のドームに小さな入り口を作ると、彼はニヤリと笑ってから侵入してきました。

「王国の姫が恥ずかしがり屋だとは知りませんでしたよ」

「帝国の皇子がデリカシーのない男だってことは知っていたわ」

「良いのですか? 国王、つまり父上の誕生日なのでしょう?」

「スっと現れて! サッと消えるから良いのよ! またいい感じのタイミングでバッとでて! パパっと消えちゃうわ!」

「おおよそ伝わりましたが、貴女の説明には気品を感じませんね」

「伝わればいいじゃない」

 二人で煌びやかな会場を片隅から眺める。ダンスを申し込まれるカトリーヌさんや、令嬢が集まって身動きができないアレクシス。

  愛や恋。十四の私にはまだ早いなのか、もう遅いなのか。

 周囲を見ていればわかる。遅いんだ。そもそも貴族令嬢の結婚適齢期が十四歳なのに、私には浮いた話の一つもない。

「ねえ? オリバーは私のことどう思う? 行き遅れになりそう?」

「貴女がそんな不安をね。本当にその時はウチの側室に来るといい」

「それは断ったでしょ?」

 そう、オリバーには一度アリゼとの最終決戦の協力を要求した際に、オリバーから「君が俺の側室に来るなら考えてあげよう。ああ、正妃は無理だ。君には気品がない」等と言われている。

 言われた当初は頭に来ましたが、冷静になって考えてみれば、一夫多妻なんて普通よね。むしろブラン王国に側室がないことの方がおかしいんだわ。

 多分、日本人女性向けのゲームの世界だからなんでしょうけどね。

 当然、日本で育った経験のある私には、お前のことは愛せないけど、何番目かの妻にはしてやるだなんて言われたらお断りである。

「さて、君にしては珍しい深刻そうな質問だ。ここは普段笑わせて貰っている身として相談にのろう」

「なんで普段私を見て笑っているのよ!?」

「そうだね、行き遅れるかどうかはさておき、結婚相手が誰でも良いなら、君を欲しがる奴なんて無限にいるだろう。それでも悩むと言うことは、その年で、その立場で乙女の夢でも見ているのかい?」

 十四の姫。確かに乙女の夢を見るにはもう難しい。

 両親から愛した人と結婚していいと言われていますが、はたしてそれ以外の周りが許すだろうか。

「そうよ。私、多分だけど恋したいんだと思う」

「王国の姫は羨ましいよ。結婚する相手を選べるのだからね」

「は? アンタは思いっきり私を勧誘したじゃない」

「ああ、そうさ。せめて心許せる人間を一人くらいは妃にしたいと思ったんだけどね」

「…………? え?」

 私が何かを言う前に、私が隠れている幻惑魔法のドームからオリバーが出ていってしまう。

 そっか。オリバーは次期皇帝。私以上に結婚相手を自由に選ぶことなんてできないんだ。

 心許せる人を勧誘したかった。…………そうよね、貴方学園でも話せる友達少ないもんね。だから、私が勧誘されたのか。

 カトリーヌさんやビルジニも勧誘されたのかな?
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