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111話 乾燥地域と食文化

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 私達は八人組のうち、四人ずつに分かれた。
私と一緒のグループはミゲル、リビオ、カトリーヌさんだ。

 向こうの方にはオリバーもいるし、大丈夫でしょう。基本的に頭の良いオリバーとリビオの二人をわけ、残りは適当に行きたい方角を指さしたら綺麗に別れた。

「さてと、こちらには確か大きな商会と露天商がいくつか並び通りがあるらしいわね」

 私が地図に目を落としながら言う。やはり昨日と違い、読める言語で書かれた地図だと安心感がある。

 地図を持っていたらカトリーヌさんも覗き込んできた。互いの頬が触れそうな距離にその顔が近づく。

 やはり深紅の瞳も、凛とした目つきもエリザベートそっくりのその顔が真横にあるだけで、私はドキッとした。

「何よ人の顔をジロジロと」

「いや、近いなって」

「…………悪かったわね。距離感がわからないのよ」

 カトリーヌさんはそういうと、少しだけ体を離した。そういえば彼女には友達がいなかったんだった。彼女にとってあれくらいの距離感は近すぎるとか遠すぎるとか以前の問題ではないんだ。

「あまり気にしないで頂戴。私に近づいて来てくれる人も少ないから、私の方がおかしいのかもしれないわ」

「それは…………お互い様ね」

 この時、お互いの脳内からほぼゼロ距離で近づいてくるビルジニの存在は除外された。何故なら彼女の距離感は友人の距離感ではないことを、二人とも理解しているからである。

 姫である私が地図を持っていることを気にしたのか、ミゲルが私から地図を受け取り、先導してくれた。

 その後ろに私とカトリーヌさんが並び、後ろはリビオが見張るようについてくる。よく考えれば姫と公爵令嬢が何の護衛もなしに街中を歩いている。

 これはとても危険な気がするが、アンヌ先生他、魔法学園の職員が数十名体制で徘徊しているらしいので、もしかしたら私達にも監視がいるのかもしれない。

「これは何かしら?」

 露店で売られている食べ物。それは見たことのない緑色の分厚い葉肉をした何かが、こんがりと焼かれていました。

「サボテンですね」

 私の問いにミゲルがいち早く答えた。騎士団志望のミゲルは、食べられる植物などを調べたりすることがあったり、ガエルが手土産に持ってくることがあると以前聞いたことから、ミゲルはサボテンを食べたことがあるのか、調べたことがあるのかもしれない。

「え? サボテン!? 食べれるのね」

 この乾燥した地域で生息する植物と考えれば、確かに貴重な栄養源なのかもしれない。味が良ければ他国にも売れるだろう。

 尤も、ブラン王国でサボテンを食べている人は見たことがない。隣国の特産品と考えれば、もう少し見たことがあってもよさそうなのに。

 そう考えるとやはり美味しくはないのね。どちらかと言えばロポポロ公国は、他の野菜を求めて外国から購入しているはずだ。

 昨日の夕食の料理は間違いなくこの乾燥した地域で育つ野菜ではなかった。

 お肉もウサギやシカとブラン王国で一般的に食べられているものばかり。せっかく外国に来たのですから、ここでしか食べられないものにも少しだけ興味がありましたのに。

 しかし、そうはいってもここはまだまだロポポロ公国とブラン王国の境目。文化が交差している土地でもあるし、もしかたらこの地域ではブラン王国と大差ない食文化なのかもしれない。

 通りを見れば、三割ぐらいの人がブラン王国の公用語で話をしている。

 私達も商人に対して王国民、公国民問わず、母国の言葉で会話し、相手もこちらの言葉に合わせて答えてくれた。

 私達は主に食文化と輸入に関するポイントに着眼し、その辺りをレポートにまとめることにした。

 体力と行動力のあるミゲルに頭の良いリビオが主に働き、私とカトリーヌさんはなんか荷物みたいに扱われているような気がしてならない。

「私達もそろそろ本気出そうかしら?」

「ええそうね? それで具体的には?」

「私に策があるとでも?」

「…………大人しくしましょうか」

「はい」

 行動しようとしたものの、危なっかしいと判断されたのかカトリーヌさんに止められる。私達はミゲルとリビオのやり取りがスムーズに動くように相談をしたり、リビオのレポートのチェックをしたりと、やれることから手を付け、午前を過ごした。

「そろそろ他の四人と合流ね」

 合流予定の食堂まで四人で向かい、先に集合場所に他の四人が集まっていました。

 食堂でそれぞれお昼を注文し、待っている間にお互いがレポートにまとめている内容を話し合った。

 こちらの話を聞いたオリバーが返事をする。

「そちらは食文化に輸入ですか。こちらは乾燥地域の資源に輸出の内容ですので内容かぶりはしない感じですね。一つのことに注目して深い内容にするのではなく、広く浅く調べる方針になりますね」

 オリバーが私達の班の方針を決めるのは不服ですが、彼の意見に異論はなく、全員で頷く。レポートの提出は学園に戻ってからの為、出来栄えで強制送還になることはないだろう。

「それじゃあ、午後も引き続き同じメンツで行動で良いかしら?」

「いや、それだと視点を変えにくい。午後はメンツも変えよう」

 ビルジニが提案すると、なるほどと言って全員が納得する。

 そしてくじ引きでチーム分けを決めた。そして私、ジャンヌさん、オリバー、ミゲルの四人で資源と輸出に関するレポートを纏めることになり、八人はまた四人ずつに分かれ、別々の場所でレポートを完成させる為に調査を始めました。
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