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90話 命令だから
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レポート提出日から数日。私とカトリーヌさんは、二人そろって屋上に来ていました。正直とても不安だ。あんな訳の分からない亀裂の下の調査だったため、教師陣からは好印象だったと聞いてはいるが、それでも、相手が悪い。
カトリーヌさんでしたら完璧なレポートを用意してくるに違いない。だったらこっちは完璧以上を用意できていなければ負ける。
私はレポートにつけられた評価をじっと眺める。そこに記された文字は満点を表していない。限りなく高得点に近い。
つまり、まだ負けている可能性の方がある。この勝負、負けた方が相手の言うことを聞くことになっており、私が負けた場合は、今後リビオとの交流を禁止されてしまうことだ。
私としては【緑】のワンダーオーブの件もあるが、それをさしおいても、友人であるリビオと縁を切るだなんて冗談ではない。
それに、私から一方的に縁を切られたリビオの気持ちも考えるならば、この勝負、負ける訳には行かない。
私の金色の髪と彼女の銀色の髪が風にたなびく。そしてお互いのレポートに記載された点数を同時に見せ合った。
カトリーヌさんのレポート用紙には九十七と記されており、私のレポート用紙には…………九十六と記されていたのだ。
「…………三点も失点してしまいましたわ」
「はは…………こっちは四点。私の負けねカトリーヌさん」
勝てると思っていた。わずかばかり過信していた。負けるかもとドキドキしながらも、九十六という点数。少し、いえかなり期待していた。その結果がこれだ。
「約束通り、私の負けね姫様」
「ええ、そうね。今後はリビオには…………は?」
どういうこと? 私、いつの間にか数字が読めなくなったのかな? しかし、何度確認しても彼女の方が一点多い。別にさかさまに見たから数字を誤認しているという訳でもない。
「私は一週間、パートナーと集中して全力でぶつかって九十七。それに対して姫様は暴動事件まで止めて九十六。こんなの私の負けに決まっているじゃない」
「…………いいの?」
「全力でぶつかって一点差だった。貴女が全力だったらこれくらい埋められるし、超えられるわ。だから私の負け」
そう言ったカトリーヌさんの深紅の瞳は、私の紺碧の瞳を真っすぐととらえる。
「ありがとう。貴女が気高き王国貴族で良かったわ」
私が微笑みながら彼女の手を握ると、カトリーヌさんはその握った手をまじまじと見つめています。
「あ、あら? 何かいけなかったかしら?」
「あ、いえ……そう馴れ馴れしくされるのは初めてでして」
そういえばこの子も公爵令嬢ですし、私やアレクシスと接点があまりなかった時点でおそらく自分より地位の低い方としか過ごしたことがなかったのですよね。うん、それすっごくわかる。
だって私は姫だから。
「勝負の代償として貴女には一つだけ私の言うことを聞いて頂きますカトリーヌ・ド・カリーナ」
「ええ、私が言い出したことよ。退学でもなんでも受けてあげる」
彼女は覚悟している。どんな命令でも受け入れるつもりだ。たかだが学生の課題の点数できめう勝負事でも、彼女は私の命令に背かないでしょう。
「私、私のことを対等に扱ってくれる同性の友達が欲しかったの」
「…………友達? 用意すればいいの?」
「攻略キャラに惚れられていることに対して全く気付かない主人公みたいな鈍感さね」
「何故かしら。意味が分かりませんが貴女には言われたくありません」
私はやれやれと思いながら、首を左右に振ると、イラっときたカトリーヌさんが何かがみがみと文句を言い始めます。それを無視して私は話をつづけました。
「私と友達になってください。カトリーヌ」
「…………嫌よ。でも嫌なだけ…………命令は聞いてあげるわ」
そう言ったカトリーヌさんは、「もう用はないわね?」と言って屋上を後にします。
あれ? これお友達になれましたよね?
カトリーヌさんでしたら完璧なレポートを用意してくるに違いない。だったらこっちは完璧以上を用意できていなければ負ける。
私はレポートにつけられた評価をじっと眺める。そこに記された文字は満点を表していない。限りなく高得点に近い。
つまり、まだ負けている可能性の方がある。この勝負、負けた方が相手の言うことを聞くことになっており、私が負けた場合は、今後リビオとの交流を禁止されてしまうことだ。
私としては【緑】のワンダーオーブの件もあるが、それをさしおいても、友人であるリビオと縁を切るだなんて冗談ではない。
それに、私から一方的に縁を切られたリビオの気持ちも考えるならば、この勝負、負ける訳には行かない。
私の金色の髪と彼女の銀色の髪が風にたなびく。そしてお互いのレポートに記載された点数を同時に見せ合った。
カトリーヌさんのレポート用紙には九十七と記されており、私のレポート用紙には…………九十六と記されていたのだ。
「…………三点も失点してしまいましたわ」
「はは…………こっちは四点。私の負けねカトリーヌさん」
勝てると思っていた。わずかばかり過信していた。負けるかもとドキドキしながらも、九十六という点数。少し、いえかなり期待していた。その結果がこれだ。
「約束通り、私の負けね姫様」
「ええ、そうね。今後はリビオには…………は?」
どういうこと? 私、いつの間にか数字が読めなくなったのかな? しかし、何度確認しても彼女の方が一点多い。別にさかさまに見たから数字を誤認しているという訳でもない。
「私は一週間、パートナーと集中して全力でぶつかって九十七。それに対して姫様は暴動事件まで止めて九十六。こんなの私の負けに決まっているじゃない」
「…………いいの?」
「全力でぶつかって一点差だった。貴女が全力だったらこれくらい埋められるし、超えられるわ。だから私の負け」
そう言ったカトリーヌさんの深紅の瞳は、私の紺碧の瞳を真っすぐととらえる。
「ありがとう。貴女が気高き王国貴族で良かったわ」
私が微笑みながら彼女の手を握ると、カトリーヌさんはその握った手をまじまじと見つめています。
「あ、あら? 何かいけなかったかしら?」
「あ、いえ……そう馴れ馴れしくされるのは初めてでして」
そういえばこの子も公爵令嬢ですし、私やアレクシスと接点があまりなかった時点でおそらく自分より地位の低い方としか過ごしたことがなかったのですよね。うん、それすっごくわかる。
だって私は姫だから。
「勝負の代償として貴女には一つだけ私の言うことを聞いて頂きますカトリーヌ・ド・カリーナ」
「ええ、私が言い出したことよ。退学でもなんでも受けてあげる」
彼女は覚悟している。どんな命令でも受け入れるつもりだ。たかだが学生の課題の点数できめう勝負事でも、彼女は私の命令に背かないでしょう。
「私、私のことを対等に扱ってくれる同性の友達が欲しかったの」
「…………友達? 用意すればいいの?」
「攻略キャラに惚れられていることに対して全く気付かない主人公みたいな鈍感さね」
「何故かしら。意味が分かりませんが貴女には言われたくありません」
私はやれやれと思いながら、首を左右に振ると、イラっときたカトリーヌさんが何かがみがみと文句を言い始めます。それを無視して私は話をつづけました。
「私と友達になってください。カトリーヌ」
「…………嫌よ。でも嫌なだけ…………命令は聞いてあげるわ」
そう言ったカトリーヌさんは、「もう用はないわね?」と言って屋上を後にします。
あれ? これお友達になれましたよね?
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