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69話 ミカエルルート

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 授業中。私は講師の魔法使いの話を聞き流しながら、【藍】のワンダーオーブを手に入れるために、ミカエルルートのことを思い出していました。

 ミカエルルートでは、平民よりの思想に近いヒロインとミカエルが徐々に互いのことを知っていき、学園内でデートするイベントも基本的には性格の割には家庭的なミカエルのいいところに癒されるシーンばかり。でも、喋るたびに癒し要素をぶっ飛ばすのよね彼。

 そんな中でワンダーオーブを手に入れるきっかけになるイベントは学園内に紛れ込んだ魔獣を手当てし始めるイベントから始まる。口はともかく行動では誰よりも優しかったミカエルでさえ、魔獣を助けるという行動はできずにヒロインと一時期仲違いをするのだけど、それでもたった一人で献身的に魔獣の手当や元気になるまで世話をする彼女を見続けていたミカエルは、本来手を差し伸べるつもりのなかった魔獣にさえ、その慈悲の心をもって接し始めます。

 いつしか魔獣が元気になって魔の森に帰った辺りでミカエルルートの中盤が終わり、終盤手前に石碑より神の声と共にワンダーオーブを授けられて…………あれ? 重要なワンダーオーブを手に入れる場所ってどこだったかしら?

 そうだ!! あのゲームはマップを移動する訳じゃなくて、選択肢によって勝手にヒロインが移動するシミュレーションゲーム!! なんとなくここにいる程度しかわからないんだったわ!!

 完全に墓穴。何よりも各ワンダーオーブはそれぞれ入手場所が異なります。そしてこの世界では自分自身で歩いていく必要がある。

 そもそも学園内でワンダーオーブを託そうとする神の声の持主にジョアサンが授けるに値する二人組をと認められる必要があり、そのキーワードこそ『慈悲』。

 ちなみに二人組の理由は、一人だけで待つと、あまりの魔力の強さに持主を狂わせてしまうから供給する力を分散させる為だったわね。

 ワンダーオーブには持主の強化と共に、それぞれ七つの汚れを浄化する浄化魔法が扱えるようになるわ。ワンダーオーブ事態は、設定集を読んだ限り汚れが未来に訪れなくても、適正者がでれば授けられるシステムになっていますが、ゲームでは必ず関連する汚れが待ってましたと言わんばかりにやってくるのよね。

 ちなみにこの世界の歴史としてはヒロインが【赤】のワンダーオーブを手に入れますが、汚れに対面する前に退学になったバッドエンドであることは確実なのである。汚れに敗れたバッドエンドの場合、ヒロインは死に、ジェラールは一生目を覚まさない。

 ジェラールルートの汚れは魔王そのものが王国に攻めてくるのよね。…………魔王ね。そしてミカエルルートの場合は、平民による革命運動。貴族に対する怒りが募り、あらゆる場所で争いがおこり始めます。

 それを解決することで見事ハッピーエンドな訳ですが、当然汚れですので、【藍】のワンダーオーブの力で人々の心に温かい感情が産まれ、貴族も平民も互いを尊重し合う様になるというご都合エンド。……って今はワンダーオーブを手に入れたあとのことなんてどうでも良いのよね。物語と同じように暴動が起きる訳じゃないんですしね。

 ですが、今の貴族と平民の様子を見ていれば、いずれ…………それこそ明日暴動が起こってもおかしくない。それくらいに扱いのひどさを感じました。

 授業が終わり、小休憩のタイミングでふとジャンヌさんの方に視線を向ける。彼女も貴族生徒に対して怒りを感じているのでしょうか。離している限り、そういう風には感じませんでしたが、悪いのは貴族わたしたちだから、もし彼女もそう感じしているのなら、真正面から受け止めよう。

「どうされましたか姫様?」

「いえ、なんでもないわ」

 設定資料集を呼んだ限りでは、そのような因果関係はないと記載されていましたが、もしワンダーオーブを手に入れることがきっかけとなり、汚れが生まれるのであれば、私はこれからひどいことをしようとしているのではないだろうか。

 いえ、そんなことはないわね。だって【赤】のワンダーオーブはヒロインの手にあるのに、この世界に魔王は現れていないのだから!
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