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41話 エリザベートの魔法

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 エリザベートと午後に約束をして、午前中はいつも通り礼儀作法を躾けられました。また、成長してきたこともあり、新しい洋服を作るとのことで採寸なども行います。

「お嬢様はどのどうなドレスがお好みですか?」

 セシルが私にドレスの好みを訪ね、私は少し悩んでお母様みたいなのと答えると、少し困った顔をされます。

 母のドレスは少し大人っぽすぎるからダメと言うことでしょうか。仕方ないので色だけ答えておきました。

 いつも母が着ている赤を指定すると、セシルは赤ですね、職人さんに伝えておきますと言われました。

 あら、採寸している方が職人ではないのですね。

 それにしてもわざわざ採寸してドレスを作るなんて、今までは成長してももう少しいい加減だったじゃないですか。

 何かあるのでしょうか。建国祭ですらお留守番だった姫だというのに。

 建国祭もつい最近終わりましたので、どんどん大きくなる子供に対してこのタイミングで来年のドレスを用意なんてしませんよね。

 私が主役とか? もしかして…………私の誕生日? 五歳まで何もしなかったのに?

 むしろ、仲良くなろうと働きかけたおかげで、誕生パーティまでやろうとしている? 発案はどっち? ジェラール? エリザベート?

 誕生パーティが行われるのは非常に嬉しい。でも、今はまだ憶測でしかなく、あとでエリザベートにそれとなく聞いてみましょうか。

 昼食をともいすることになり、庭園に呼ばれると、そこにはエリザベートだけいらっしゃいました。

「お父様は?」

「忙しいのよ。彼は国王なの」

「そうですか」

 両親と食事を取るようになってからエリザベートと二人きりの食事は初めてだ。

 普段はジェラールがなるべく話しかけてくれるのですが、エリザベートは相槌をうつばかり。

 たまに彼女から喋り始めることもありますが、ほとんどありません。

 ここは私から話しかけるべきなのでしょうか。

「お母様、午前中はドレスの採寸を行ったのですが、あのドレスはいつ頃着れるのでしょうか?」

「ど、ドレスの採寸? オーダーメイドのドレスを作る予定なんてあったかしら? 夜にジェラールに聞いてみるわ」

 なぜ一瞬どもったのでしょうか。視線も明後日の方向を向いています。何か知っているようにしか見えません。

 でも、わざわざ私に隠す。エリザベートが私関連のことで隠し事をするときはあまり後ろめたいことではないと思いますので、大丈夫でしょう。

 そもそもドレスの採寸で後ろめたいことなんてありえない。

 ではなぜ? サプライズ? いえ、そういう性格でもありませんよね。

 そもそもサプライズだったらもっとばれない様にドレスをオーダーメイドして欲しい。

 あとは…………照れ臭いとか? まさかね。

「そんなことより、午後は何をしたいかとか決めているのですか?」

「えっとですね、実は体力をつけておきたくてですね」

「体力? 貴女にそんなものは必要ないわ。最低限あればいいのよ」

 いえ、体力は十分すぎるほどに必要になります。十年先になりますが、ワンダーオーブを手に入れる時のことを考えたら、絶対に必要。

 それと、魔力の使用で体力切れを起こしたくないので必要です。

「こないだみたいに体力がなくなってしまったら、護身用に魔法を覚えた意味がありませんので。私は少しでも早くお父様とお母様と一緒に外に出てみたいのです」

 私がそういうと、エリザベートはわかったわ。とだけ言って残りの食事を済ませました。

 エリザベートと二人で庭園に出ると、大きなバラ園まで連れていかれました。

 バラ園は赤い薔薇しか咲いていませんが、その美しさは一瞬で心を奪われるほどです。

「ここで何をするのですか?」

「貴女は時空魔法が使えるでしょう? 今日はそれで遊んであげる」

「時空魔法で?」

 体力をつけたいと言ったら、魔法で遊ぶことになりました。

「あの、運動とかでは?」

「ドレス着てそんなことをするわけないでしょう? 魔力の使い過ぎによる体力切れなら、魔力を上手に使うことを覚える方が先よ」

「そう言うことですか」

 このバラ園のバラは年中咲き誇っている不思議な空間です。

 しかし、魔法を勉強するようになってからはじめてここに訪れてようやく気付きました。

 ここは時空魔法でバラの時間だけ止まった空間なんだ。最も美しい次期を、写真で残す様に。

 これをやっているのは、お母様!?

 エリザベートが一本のバラを指さして私に言います。

「今からこのバラの時間を進めるわ。貴女はバラの時間の進みを少しでも遅くしなさい」

「はい」

 お母様がバラを一つ選び、私がバラに対して遅延の魔法をかけます。

 時空魔法を使用している間は、感覚的とはいえ、周囲の時間の進み方を知覚できます。

 周囲のバラは完全に静止していることがわかりますが、私が遅延をかけているバラはゆっくりですが動いている。

「あの? 遊んでくださるのでは?」

「次もあるわ。貴女の魔法を見るのは初めてだったから一応見ておきたかったのよ」

 そういえば、お母様の前で魔法を使用したことないんでしたね。

「貴女に教える魔法はこれよ。覚えておくときっと楽しいことになるわ」

「え?」

 お母様は私がさきほど時間を遅くしていたバラに対して何かの魔法をかけると、そのバラは赤から青に変わりました。
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