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終章 有史以前から人々が紡いできたこと
5話 デークルーガ城潜入大作戦
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デークルーガ城にはあくまでユリエと会うことが目的。
ですので私以外は数名で潜入し、それ以外は待機することになりました。
エミリアさん、エディータ、ヨハンネスの三人も合流し、潜入ルートも確保。当然作戦は夜決行。ですのであと数刻で潜入開始となります。
身軽で潜入になれたメンバーが選抜されるのですが。
「エミリアさんにお義姉様にエディータの三人は確定よね」
何このメンツ嫌。令嬢《エミリア》、令嬢《オルガ》、姫殿下《エディータ》に令嬢《わたし》フー!
どう考えても失敗。潜入作戦やめたい。私含めて四人。これでメンバーの約半分。あと一人くらい呼ぶべきでしょう。
残っているのはグレイ様、エリオットお兄様、ヨハンネス、メルヒオール様。マリア。ここで誰か一人選んだら贔屓しているように見えるかしら?
私は一番問題なさそうなお兄様に同行をお願いし、四名には待機して頂くことにしました。
「それでは残りの皆様。一つお耳に入れて欲しいことがありまして。実は天啓についてお義姉様と議論しあった結果。もしかしたら答えがでたかもしれません。それである準備をお願いします」
私がそう言いますと、三人はやれやれと言った雰囲気で頷いてくださりました。マリアも、その間に独身男性探してきますとか何言っているのかしらあなたは司祭様の家で待機よ。今決めました。
マリアはおいといて、やはり皆さま頼りになる方々です。
「お願いしますね、皆様の準備。万が一ユリエを鎮圧してもなお、帝国民がユリエ教を支持した時の為に役立ちます」
さあ、今度は私達がユリエを引っ張り下ろす番です。
日が沈み、月の光が大地に届く。私達はなるべく光の届かない影を通りながら城壁付近まで到達しました。
「ここですね。エミリアさん。壁」
「え? 確かに私の胸は壁ですけど、触るのですか?」
「登りなさい」
エミリアさんは、無視、気持ちいと鳴き声を上げた後にせっせと壁を登る準備を始めました。
「あの令嬢はおかしいですよ」
誰もが口にすることを諦めていたことをつぶやくエディータ。でもね、あなたも十分おかしいですよ。
しばらくして城壁の上から縄梯子が吊るされました。これいつも用意しているのかしら。私の家に侵入する為に努力しすぎよ変態。
縄梯子をスルスル登っていくお兄様とお義姉様。そして私を背に乗せて楽々登るエディータ。やっぱり猛獣の称号は彼女にあげましょう。
城壁の上に立ちますと、下を見たことに後悔しました。突然クラっとした感覚に襲われます。何ここ怖い。
「ルクレシア……もしかして高いところ」
今日やっと口を開いた兄。心配になってやっと喋ってくださったことは嬉しいのですが、もっとお義姉様と仲良くなれるようにちゃんと喋れるようになってください。
「こっここここここわ怖くないわよ! これくらい、ダンスだってできるわ!」
「地上でもできない」「そうだね、僕もそう思う」「私がつき落として先回りしてクッションになりましょう!」「ええ、ルクレシアさん信用なさすぎじゃないですか? ……え? 最後? え? は? ん?」
エディータ、あなたここにくるまでずっと一緒にいた珍獣の本性に気付き始めたようですね。
事実を理解できないエディータがは、ひとまず私を抱え安全な場所まで移動してから城壁内に侵入。
場内には数名の兵がいらっしゃいますが、まだバレていないと考えていたことが甘かった。
ユリエの天啓の方が一枚上手だったようです。
「囲まれてしまいましたね」
「僕とエリオットが道を切り開くよ」
お義姉様が前に出ようとした時でした。私、エミリアさん、お兄様、お義姉様は思いっきり投げ飛ばされ、城の入り口まで飛ばされてしまいました。
「先に行くと良いです。私は強くなるためにここにいます。お見せできないのが残念ですがこのエディータ・レオノーラ・ディ・ジバジデオの心配は不要です」
エディータの猛攻が始まり、私達を追ってくるものはほとんどおらず、数名程度はお兄様とお義姉様の次期ベッケンシュタイン夫婦コンビが瞬殺。
これはお父様がいなくてもベッケンシュタイン家は安泰ですね。
今回の件で、我がベッケンシュタイン家の爵位が剥奪されなければですけど。
グレイ様がどうお考えになられているかですね。まさか公爵家が二つも取り潰しになんてなりましたら大問題ですし、大事にならないように片付けられるはず。
そうあるべきではないと考えているのはきっと私だけでしょうね。この戦いが終わったら、私はもう公爵令嬢でいられない。
でも、培った人生は変わらない。私は公爵令嬢として育てられたルクレシア。この事実に違いなんてない。
私が決めたこの道を、ただ突き進むだけ。大切な人たちとのかけがえのない時間を護る為。
先に進みますとまた数人の兵士たち。これ以上私の周りから戦力を裂くわけにはいかないと判断したのかエミリアさんが私のすぐ前に立ち、お兄様とお義姉様が更にその前に立ちました。
「待っててルクレシア。僕たちがすぐに道を開くよ」
「いえ、お兄様、お義姉様。三秒後に耳を塞いでください」
お兄様とお義姉様だけに聞こえるようにそう言いますと、すぐに三秒経過しました。私はエミリアさんの背中に背負わせていたヴァイオリンを手に取りました。
「さて、今日も恥をかかせて頂きます」
私がヴァイオリンの演奏を始めますと、両耳の痛みに大喜びするエミリアさんと、耳を抑え苦しみ隙だらけになる兵士たち。
「今です!」
私の掛け声とともになぜかパワーアップしたエミリアさんとお兄様、お義姉様がとびかかりました。ドMってすごい。
エミリアさんのロープ縛り。お兄様の柄殴り。お義姉様の掌打が次々と敵兵を戦闘不能にしていってます。お兄様、地味。
剣技を使わないで気絶させようとしている辺り、さり気無い優しさだと解釈することにしました。
兵たちを圧倒し、前に進んでいきます。デークルーガ城内部へと進んでいきました。
私やお兄様は、幼い頃からデークルーガ城に訪れていたため、一直線にユリエの部屋に向かうことができましたが、おそらくそのことくらいユリエも見越していることでしょう。
もし、部屋にいらっしゃいましたらおそらく私たちが部屋に訪れても問題ないと判断していることになります。
「着きましたね」
城の外が見えると、まだ庭園では騒がしく、エディータが一騎当千しているようです。
あれだけの兵の海。彼女がいなければ先に進むことはできなかったでしょう。ですが、いきなり投げ飛ばしたこと。まだ許していませんよ?
そして彼女《ユリエ》の部屋の扉を勢いよく開きますと、数名の護衛とその中心で優雅に紅茶を飲むユリエ。
そして四つの空席には、紅茶が湯気を立てながら用意されていました。
「天啓通りですね。ルーちゃん。そして天啓通り仮にも外交なのに現れない王子。プッ、やはりあのような男はルーちゃんに相応しくありません」
用意された席にはそれぞれネームプレートまで用意されており、左からお義姉様、お兄様、私、エミリアさんの名前がありました。
ここに潜入するメンバーにはエディータもいらっしゃいましたが、最初から用意されていなかったのか、急遽隠したのか。
「うちの王子は私が選抜から外しただけです」
「そうですか。神子《みこ》にはどうでもいいことですが、まあいいでしょう」
「この紅茶、何か入ってたりはしていませんでしょうね?」
私の質問に対し、ユリエは澄ました表情で何も入っていませんと答えました。彼女の雰囲気からでは、判断が難しい。
「ではこのような質問はどうでしょうか? 天啓通りになるとしたら、私達四人の中で、最初に眠るのは誰かしら?」
「以前も言いましたが、天啓は自由には使えません。必要な時に降りてくるのです」
「今がその時ですよ。何せ、私に天啓を信じさせるチャンスなのに、まさか使えないなんてことはありませんよね?」
「……今はその時では」
ユリエは一向に天啓を見せようとせずに、苦い顔をしています。やはり予想通り、天啓で情報を得るには、リアルタイムである必要がある。
未来を見ることができない。リアルタイムで起きていることならいくらでも把握できる。そういうことですね。
きっと城に潜入するメンバーのことも、エディータが庭園で暴れていることも、常に把握し続けている。
だけど、未来予知はしない。未来のわからない天啓なんてだめよユリエ。私の勝ちは貰ったわ。
「わかりました。明日、あなたの奇跡をお見せください。そしたら私も信じましょう。ただし、本当に奇跡でしたらですけど」
「良いでしょう。ついにつがいになる決意を固めてくださりましたか。安心してください。神子《みこ》はいつでも大歓迎ですから」
大歓迎はこちらです。説得しようと考えてきましたが、やはり彼女の天啓は瓦解させた方が早そうです。
今頃外にいる方々はもろもろの準備を整えてくださっているでしょう。
さあ、舞台《しょけいだい》に上がりなさい。
ですので私以外は数名で潜入し、それ以外は待機することになりました。
エミリアさん、エディータ、ヨハンネスの三人も合流し、潜入ルートも確保。当然作戦は夜決行。ですのであと数刻で潜入開始となります。
身軽で潜入になれたメンバーが選抜されるのですが。
「エミリアさんにお義姉様にエディータの三人は確定よね」
何このメンツ嫌。令嬢《エミリア》、令嬢《オルガ》、姫殿下《エディータ》に令嬢《わたし》フー!
どう考えても失敗。潜入作戦やめたい。私含めて四人。これでメンバーの約半分。あと一人くらい呼ぶべきでしょう。
残っているのはグレイ様、エリオットお兄様、ヨハンネス、メルヒオール様。マリア。ここで誰か一人選んだら贔屓しているように見えるかしら?
私は一番問題なさそうなお兄様に同行をお願いし、四名には待機して頂くことにしました。
「それでは残りの皆様。一つお耳に入れて欲しいことがありまして。実は天啓についてお義姉様と議論しあった結果。もしかしたら答えがでたかもしれません。それである準備をお願いします」
私がそう言いますと、三人はやれやれと言った雰囲気で頷いてくださりました。マリアも、その間に独身男性探してきますとか何言っているのかしらあなたは司祭様の家で待機よ。今決めました。
マリアはおいといて、やはり皆さま頼りになる方々です。
「お願いしますね、皆様の準備。万が一ユリエを鎮圧してもなお、帝国民がユリエ教を支持した時の為に役立ちます」
さあ、今度は私達がユリエを引っ張り下ろす番です。
日が沈み、月の光が大地に届く。私達はなるべく光の届かない影を通りながら城壁付近まで到達しました。
「ここですね。エミリアさん。壁」
「え? 確かに私の胸は壁ですけど、触るのですか?」
「登りなさい」
エミリアさんは、無視、気持ちいと鳴き声を上げた後にせっせと壁を登る準備を始めました。
「あの令嬢はおかしいですよ」
誰もが口にすることを諦めていたことをつぶやくエディータ。でもね、あなたも十分おかしいですよ。
しばらくして城壁の上から縄梯子が吊るされました。これいつも用意しているのかしら。私の家に侵入する為に努力しすぎよ変態。
縄梯子をスルスル登っていくお兄様とお義姉様。そして私を背に乗せて楽々登るエディータ。やっぱり猛獣の称号は彼女にあげましょう。
城壁の上に立ちますと、下を見たことに後悔しました。突然クラっとした感覚に襲われます。何ここ怖い。
「ルクレシア……もしかして高いところ」
今日やっと口を開いた兄。心配になってやっと喋ってくださったことは嬉しいのですが、もっとお義姉様と仲良くなれるようにちゃんと喋れるようになってください。
「こっここここここわ怖くないわよ! これくらい、ダンスだってできるわ!」
「地上でもできない」「そうだね、僕もそう思う」「私がつき落として先回りしてクッションになりましょう!」「ええ、ルクレシアさん信用なさすぎじゃないですか? ……え? 最後? え? は? ん?」
エディータ、あなたここにくるまでずっと一緒にいた珍獣の本性に気付き始めたようですね。
事実を理解できないエディータがは、ひとまず私を抱え安全な場所まで移動してから城壁内に侵入。
場内には数名の兵がいらっしゃいますが、まだバレていないと考えていたことが甘かった。
ユリエの天啓の方が一枚上手だったようです。
「囲まれてしまいましたね」
「僕とエリオットが道を切り開くよ」
お義姉様が前に出ようとした時でした。私、エミリアさん、お兄様、お義姉様は思いっきり投げ飛ばされ、城の入り口まで飛ばされてしまいました。
「先に行くと良いです。私は強くなるためにここにいます。お見せできないのが残念ですがこのエディータ・レオノーラ・ディ・ジバジデオの心配は不要です」
エディータの猛攻が始まり、私達を追ってくるものはほとんどおらず、数名程度はお兄様とお義姉様の次期ベッケンシュタイン夫婦コンビが瞬殺。
これはお父様がいなくてもベッケンシュタイン家は安泰ですね。
今回の件で、我がベッケンシュタイン家の爵位が剥奪されなければですけど。
グレイ様がどうお考えになられているかですね。まさか公爵家が二つも取り潰しになんてなりましたら大問題ですし、大事にならないように片付けられるはず。
そうあるべきではないと考えているのはきっと私だけでしょうね。この戦いが終わったら、私はもう公爵令嬢でいられない。
でも、培った人生は変わらない。私は公爵令嬢として育てられたルクレシア。この事実に違いなんてない。
私が決めたこの道を、ただ突き進むだけ。大切な人たちとのかけがえのない時間を護る為。
先に進みますとまた数人の兵士たち。これ以上私の周りから戦力を裂くわけにはいかないと判断したのかエミリアさんが私のすぐ前に立ち、お兄様とお義姉様が更にその前に立ちました。
「待っててルクレシア。僕たちがすぐに道を開くよ」
「いえ、お兄様、お義姉様。三秒後に耳を塞いでください」
お兄様とお義姉様だけに聞こえるようにそう言いますと、すぐに三秒経過しました。私はエミリアさんの背中に背負わせていたヴァイオリンを手に取りました。
「さて、今日も恥をかかせて頂きます」
私がヴァイオリンの演奏を始めますと、両耳の痛みに大喜びするエミリアさんと、耳を抑え苦しみ隙だらけになる兵士たち。
「今です!」
私の掛け声とともになぜかパワーアップしたエミリアさんとお兄様、お義姉様がとびかかりました。ドMってすごい。
エミリアさんのロープ縛り。お兄様の柄殴り。お義姉様の掌打が次々と敵兵を戦闘不能にしていってます。お兄様、地味。
剣技を使わないで気絶させようとしている辺り、さり気無い優しさだと解釈することにしました。
兵たちを圧倒し、前に進んでいきます。デークルーガ城内部へと進んでいきました。
私やお兄様は、幼い頃からデークルーガ城に訪れていたため、一直線にユリエの部屋に向かうことができましたが、おそらくそのことくらいユリエも見越していることでしょう。
もし、部屋にいらっしゃいましたらおそらく私たちが部屋に訪れても問題ないと判断していることになります。
「着きましたね」
城の外が見えると、まだ庭園では騒がしく、エディータが一騎当千しているようです。
あれだけの兵の海。彼女がいなければ先に進むことはできなかったでしょう。ですが、いきなり投げ飛ばしたこと。まだ許していませんよ?
そして彼女《ユリエ》の部屋の扉を勢いよく開きますと、数名の護衛とその中心で優雅に紅茶を飲むユリエ。
そして四つの空席には、紅茶が湯気を立てながら用意されていました。
「天啓通りですね。ルーちゃん。そして天啓通り仮にも外交なのに現れない王子。プッ、やはりあのような男はルーちゃんに相応しくありません」
用意された席にはそれぞれネームプレートまで用意されており、左からお義姉様、お兄様、私、エミリアさんの名前がありました。
ここに潜入するメンバーにはエディータもいらっしゃいましたが、最初から用意されていなかったのか、急遽隠したのか。
「うちの王子は私が選抜から外しただけです」
「そうですか。神子《みこ》にはどうでもいいことですが、まあいいでしょう」
「この紅茶、何か入ってたりはしていませんでしょうね?」
私の質問に対し、ユリエは澄ました表情で何も入っていませんと答えました。彼女の雰囲気からでは、判断が難しい。
「ではこのような質問はどうでしょうか? 天啓通りになるとしたら、私達四人の中で、最初に眠るのは誰かしら?」
「以前も言いましたが、天啓は自由には使えません。必要な時に降りてくるのです」
「今がその時ですよ。何せ、私に天啓を信じさせるチャンスなのに、まさか使えないなんてことはありませんよね?」
「……今はその時では」
ユリエは一向に天啓を見せようとせずに、苦い顔をしています。やはり予想通り、天啓で情報を得るには、リアルタイムである必要がある。
未来を見ることができない。リアルタイムで起きていることならいくらでも把握できる。そういうことですね。
きっと城に潜入するメンバーのことも、エディータが庭園で暴れていることも、常に把握し続けている。
だけど、未来予知はしない。未来のわからない天啓なんてだめよユリエ。私の勝ちは貰ったわ。
「わかりました。明日、あなたの奇跡をお見せください。そしたら私も信じましょう。ただし、本当に奇跡でしたらですけど」
「良いでしょう。ついにつがいになる決意を固めてくださりましたか。安心してください。神子《みこ》はいつでも大歓迎ですから」
大歓迎はこちらです。説得しようと考えてきましたが、やはり彼女の天啓は瓦解させた方が早そうです。
今頃外にいる方々はもろもろの準備を整えてくださっているでしょう。
さあ、舞台《しょけいだい》に上がりなさい。
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