上 下
2 / 5

2話

しおりを挟む
今日から高校一年生になる。家のこともしたいということもあったし、これといってしたいことがあったわけではなかったのもあって、僕は家から歩いていける高校を選んだ。そして、今日は高校の入学式である




『希望おはよう』




『仁おはよう』




こいつは尾上仁という僕の幼馴染である。仁とは小学校から一緒で同じサッカー部に所属していた。僕の弱音を吐ける唯一の友達である。




『希望はやっぱり高校でサッカーはしないのか?』




『そうだね。家のこともしないといけないし、高校に入ったら今まで以上に勉強とかもしないといけないから部活まではやっている暇ないかな』




僕も小学校からサッカーをしていたが、仁とは友達である以上にサッカーをしているときは本当に信頼のできる仲間でもあった。しかし、お母さんが亡くなった後から家のことをするようになった僕は徐々にサッカーから遠ざかり、中総体を前にサッカーを辞めてしまった。その時の仁の顔は今も忘れることができないぐらい鮮明に残っている。




『仁はもちろんサッカー部に入るんだろう?』




『あっうん。今のところそのつもりかな~』




『そっかそっか、仁はサッカー上手だからすぐレギュラーとれるだろう』




『そんなことねーよ』




そうゆう仁は少し寂しそうに笑っていた。でも仁の気持ちをわかっているようで全然わかってはいなかった。そのことを知るのはもう少し先




『あ~俺たちも高校生か』




『いきなりおっさんみたいなこと言うなよ』




『美春と優人も2年生だもんな』




『そうだよ。今日も元気に二人で学校にいってきますしていったよ』




『希望のお母さん化が俺は心配だよ』




『どうゆうこと』




『このまま彼女も作らず、ずっと双子のお母さんをしていて、恋愛経験ゼロのまま大人になって、20歳過ぎてから初めて付き合った彼女に童貞ということがばれて笑われる未来が俺には見えるんだよ』




『おいっ。その生々しい本当に現実になりそうなことを言うんじゃねーよ』




『ははは。でも彼女とか作る気とかないだろうお前』




『作る気がないということはないけど、家のこととかしていたら彼女とデートとかする時間ないと思うから、そんな僕のことを受け入れてくれる心が太平洋ぐらい広い女の子がいたら付き合いたいかな』




『確かにそれはなかなか見つからねーかもな。でも一緒に家事を手伝ってくれるという女子力高め女子もありだよな』




『それは確かにすごく魅力的だな』




『まぁどんな子がいるかはわかりませんが、夢と希望をもって高校生活を始めますか』




『まぁそうだな』




僕たちは小学校から変わらない空気で今日から始まる高校の門をくぐった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。 辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。 やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。 アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。 風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。 しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。 ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。 ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。 ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。 果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか…… 他サイトでも公開しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACより転載しています。

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

処理中です...