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(他人の)家族紹介です。

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 かれこれ7年が経ちました。
 相変わらず王宮に居候させてもらっています。アイル・ウェヌス9歳です。
 急に飛び過ぎだって?いろいろあったけど、あり過ぎて細かく語るのは無理だったよ。


 この7年の間にディー様に新しく2人の家族が加わったので、今日はそのお話をしたいと思います。





 まず、ディー様の下に、弟と妹が産まれた。
 
 ディー様が2歳の時に第2皇子殿下のエイデン様が、3歳の時に皇女殿下のシャーロット様が誕生し、ディー様は3兄弟の長男になった。
 が、血の繋がった可愛い兄弟よりも何故か私にべったりなのは今も変わらず。それでもだいぶん別行動を許してもらえるようにはなった。頑張った。


 エイデン様はディー様が苦手なようで、5歳頃まではディー様を見かけると人や柱の影にすぐに隠れていた。
 原因はおそらく私。

 あれはエイデン殿下が2歳半の頃。ディー様が両陛下と共に公務おしごとをしている間、私は庭園でモロと一緒にお気に入りの薔薇の花の手入れをしていたのだが、驚かせようとしたのか、後ろからやってきた殿下が私のことを勢いよくホールドしたのだ。
 その時の私は少し高いところの花に手が届くように台に乗っていて、身長差と台の高さの分、殿下が抱き着いたのは私の膝あたりだった。後ろから急に両膝をホールドされた私はそのまま顔から突っ込むように薔薇に向かって倒れこみ、大怪我はしなかったものの、薔薇の棘で顔や手などに多数の擦り傷や切り傷を負った。モロが風魔法で勢いを減らしてくれた上に、落下地点でクッションになってくれたから軽傷だったんだと思う。もふっとしていて、まるで雲に飛び乗ったような幸せな瞬間だった。
 だけど同時に、私が落ちた瞬間のエイデン殿下の護衛の方々の声なき悲鳴は見なくてもビリビリと伝わってきた。私は護衛対象じゃないのでそんなに気にしなくても…と思ったけど、そういえば私、一応王宮で預かってもらってる貴族令嬢だったわ。傷モノにしたら大変だったね。

 エイデン殿下は予想外の出来事にひどく驚いていたので、絶対に態とではなかった。が、私を害されたと判断したモロが断食後のグリズリーみたいな凶暴な顔で殿下を威嚇。その迫力に怯えた殿下が尻もちをついて後退りするのを追撃しようとするので必死に宥めていると、呼んでいないのに私の前に急にディー様セコムが現れた。

 ディー様は珍しく真顔・無言で私の傷を上から下までざっと眺めて確認し、すぐに回復魔法で治してくれた。(ちなみに7年も経つとさすがにディー様も力加減というものを覚えてくれ、目潰しによる被害は基本なくなった)
 私としてはそれで充分だったのだ。小さな子供のやったことだし、傷も治ったんだし。薔薇はぐちゃぐちゃなので、あとでエイデン殿下と一緒に庭師さんに謝りにいかないとなー、程度だった。

 が、何故かディー様はガチ切れ。あんなに怒ったディー様を見たのは初めてだった。瞳孔開ききってた。しばらく夢に見たよ。モロも尻尾を巻き込んで私にくっつき震えてたくらいの大迫力。R-18G指定どころか、R-100G指定レベル。顔整いすぎてるから余計に怒った顔怖いんだよね。
 そんなディー様に正面から詰め寄られ、胸倉掴まれて視線が合う高さまで持ち上げられ、真顔で静かに「………死ぬ?」と囁かれたエイデン殿下は、あまりの恐怖に失禁し気を失った。その後ろでディー様の顔を見てしまった護衛達も気を失った。あなた達は己の職務を全うしてー⁉

 私がすぐにディー様からエイデン殿下を奪い取り『めっ!』と叱ると、ディー様はすごく不服そうだったが兄弟を手にかけるのだけは思いとどまってくれた。ただ、それからしばらくの間は、エイデン殿下を見かけると瞳孔が開き、問いかける様に声無く首をゆったり傾げるので、エイデン殿下は完全にディー様がトラウマになってしまった。あと、モロもエイデン殿下を見かけるたびに歯を剝き出しにして唸るようになってしまったので、動物も苦手になってしまったようだった。
 
 私が薔薇に突っ込んだりしなければ……ごめんね殿下……。
 
 あの後も私に対しては時々遊んでほしそうにじっとこちらを窺がっていた。
 でも最近は目が合うとすぐにプイっと顔を背けて走って行ってしまうので、嫌われたんだろうなぁ。それを見てディー様は非常に満足そうにしてるけど。鬼か。


 7歳になった現在は、トラウマディー様の居ないところではちょっと自尊心高めな生意気盛り我儘放題で手を焼いているという話は聞いているが、ディー様が視界に入ると途端に挙動不審になり目が合うと硬直してしまう。私はこの反応のエイデン殿下しか見かけないので、強く生きろ…と密かにエールを送り続けている。エールがエイデン殿下に届いたことは一度もないけど、なぜか必ずディー様に届いて拗ねられる。なんでだ。



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