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不機嫌なだっこちゃん。

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 私が両陛下のお茶会への参加の意を示すと、案の定、ディー様は目に見えて不機嫌になってしまい、私をぎゅーぎゅーに抱きつぶしながら嫌だいやだと駄々をこねた。
 それを何とか宥めすかし……というか4/5以上を聞き流しながら朝食を食べていると、何とその日の午後にお会いすることが即決まった。はやきこと風のごとく。心の準備どころかマナーを確認する時間すら与えてくれない容赦のなさだが、おそらく猶予を与えるとディー様の妨害に合うという懸念のせいだろう。今まさに私を抱えたまま動かざること山の如し状態なので、その心配もわかる気がする。

「でぃーさま、そんなにいやなら、わたしだけいってきましゅよ?」
「それは絶対ダメ。僕の居ないところでアイルに何かあったらどうするの?」
「なんにもないでしゅよ、たぶん」
「アイルのあまりの愛らしさに陛下たちが部屋に帰さないって言いだしたらどうするの。それにアイルの可愛さに目が眩んだ兵士達に誘拐されるかもしれないよ。侍女達もお人形さんみたいで可愛いって連れ去ろうとするかもしれないし、貴族達の目にとまって変な虫が寄ってくるかもしれないでしょ?僕の側以外はアイルにとって、とっても危険なんだよ」
「そんなかんがえをもつのは、めがふしあななでぃーさまだけでしゅよ」

 今のディー様は目も思考何もかも、節穴どころか、節すらないガバガバ具合だ。
 さながら自分のペットが他より可愛く見える親バカな飼い主か初孫を溺愛する祖父か、というディー様の目には100を超える美化フィルターがかかっているからこんな考えに至っているが、実際の私は特別可愛いわけでもないごくごく普通のモブ幼女Aだ。ディー様の心配が現実になるなんて絶対にあり得ない。
 第一、私を可愛いと言うディー様自身の方が人間離れした可愛さ麗しさ美しさだというのに、鏡見たことないんだろうか。可愛さに目が眩んで攫われるというなら対象は確実にディー様の方だし、ディー様で目が肥えた陛下方や城に勤める方々が私に目をつけるわけがないではないか。実際にこの人を攫ったとしたら、犯人は生きたまま地獄を見ることになりそうだけど。


「わたしだって、できればしんぞうにわりゅいのでえんりょしたいでしゅが、こうしておーきゅうにおいてもらっていりゅみでしゅから、ごあいさつくらいしにゃいと」
「アイルを王宮に留めているのは僕の我儘だから、アイルが気にすることなどないよ」
「そうはいかないでしゅ。おーきゅうにたいざいさせてもりゃうときめたのは、わたしじしんでしゅ。わたしだけじゃなくもろまでいっしょに、いしょくじゅう、これだけおせわになってりゅのに、さいしょにごあいさつしなかったれいぎしらじゅは、わたしのほうでしゅから。すでにておくれかんはありましゅが、せっかくおじかんをさいていただけりゅということなので、ぜったいいかないと」
「…でもアイルは初対面の人が苦手でしょう?無理しなくても、僕が守るから大丈夫だよ?」

 まさかディー様は、自分が囲い込むことで周りにいろいろ言われることは承知の上で、私がコミュ障だからと気を遣ってくれていたんだろうか。

 行き過ぎた過保護が玉に瑕だけど、やっぱり優しい人なんだよね。


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