60 / 78
不機嫌なだっこちゃん。
しおりを挟む
私が両陛下のお茶会への参加の意を示すと、案の定、ディー様は目に見えて不機嫌になってしまい、私をぎゅーぎゅーに抱きつぶしながら嫌だいやだと駄々をこねた。
それを何とか宥めすかし……というか4/5以上を聞き流しながら朝食を食べていると、何とその日の午後にお会いすることが即決まった。疾きこと風の如く。心の準備どころかマナーを確認する時間すら与えてくれない容赦のなさだが、おそらく猶予を与えるとディー様の妨害に合うという懸念のせいだろう。今まさに私を抱えたまま動かざること山の如し状態なので、その心配もわかる気がする。
「でぃーさま、そんなにいやなら、わたしだけいってきましゅよ?」
「それは絶対ダメ。僕の居ないところでアイルに何かあったらどうするの?」
「なんにもないでしゅよ、たぶん」
「アイルのあまりの愛らしさに陛下たちが部屋に帰さないって言いだしたらどうするの。それにアイルの可愛さに目が眩んだ兵士達に誘拐されるかもしれないよ。侍女達もお人形さんみたいで可愛いって連れ去ろうとするかもしれないし、貴族達の目にとまって変な虫が寄ってくるかもしれないでしょ?僕の側以外はアイルにとって、とっても危険なんだよ」
「そんなかんがえをもつのは、めがふしあななでぃーさまだけでしゅよ」
今のディー様は目も思考何もかも、節穴どころか、節すらないガバガバ具合だ。
さながら自分のペットが他より可愛く見える親バカな飼い主か初孫を溺愛する祖父か、というディー様の目には100を超える美化フィルターがかかっているからこんな考えに至っているが、実際の私は特別可愛いわけでもないごくごく普通のモブ幼女Aだ。ディー様の心配が現実になるなんて絶対にあり得ない。
第一、私を可愛いと言うディー様自身の方が人間離れした可愛さ麗しさ美しさだというのに、鏡見たことないんだろうか。可愛さに目が眩んで攫われるというなら対象は確実にディー様の方だし、ディー様で目が肥えた陛下方や城に勤める方々が私に目をつけるわけがないではないか。実際にこの人を攫ったとしたら、犯人は生きたまま地獄を見ることになりそうだけど。
「わたしだって、できればしんぞうにわりゅいのでえんりょしたいでしゅが、こうしておーきゅうにおいてもらっていりゅみでしゅから、ごあいさつくらいしにゃいと」
「アイルを王宮に留めているのは僕の我儘だから、アイルが気にすることなどないよ」
「そうはいかないでしゅ。おーきゅうにたいざいさせてもりゃうときめたのは、わたしじしんでしゅ。わたしだけじゃなくもろまでいっしょに、いしょくじゅう、これだけおせわになってりゅのに、さいしょにごあいさつしなかったれいぎしらじゅは、わたしのほうでしゅから。すでにておくれかんはありましゅが、せっかくおじかんをさいていただけりゅということなので、ぜったいいかないと」
「…でもアイルは初対面の人が苦手でしょう?無理しなくても、僕が守るから大丈夫だよ?」
まさかディー様は、自分が囲い込むことで周りにいろいろ言われることは承知の上で、私がコミュ障だからと気を遣ってくれていたんだろうか。
行き過ぎた過保護が玉に瑕だけど、やっぱり優しい人なんだよね。
それを何とか宥めすかし……というか4/5以上を聞き流しながら朝食を食べていると、何とその日の午後にお会いすることが即決まった。疾きこと風の如く。心の準備どころかマナーを確認する時間すら与えてくれない容赦のなさだが、おそらく猶予を与えるとディー様の妨害に合うという懸念のせいだろう。今まさに私を抱えたまま動かざること山の如し状態なので、その心配もわかる気がする。
「でぃーさま、そんなにいやなら、わたしだけいってきましゅよ?」
「それは絶対ダメ。僕の居ないところでアイルに何かあったらどうするの?」
「なんにもないでしゅよ、たぶん」
「アイルのあまりの愛らしさに陛下たちが部屋に帰さないって言いだしたらどうするの。それにアイルの可愛さに目が眩んだ兵士達に誘拐されるかもしれないよ。侍女達もお人形さんみたいで可愛いって連れ去ろうとするかもしれないし、貴族達の目にとまって変な虫が寄ってくるかもしれないでしょ?僕の側以外はアイルにとって、とっても危険なんだよ」
「そんなかんがえをもつのは、めがふしあななでぃーさまだけでしゅよ」
今のディー様は目も思考何もかも、節穴どころか、節すらないガバガバ具合だ。
さながら自分のペットが他より可愛く見える親バカな飼い主か初孫を溺愛する祖父か、というディー様の目には100を超える美化フィルターがかかっているからこんな考えに至っているが、実際の私は特別可愛いわけでもないごくごく普通のモブ幼女Aだ。ディー様の心配が現実になるなんて絶対にあり得ない。
第一、私を可愛いと言うディー様自身の方が人間離れした可愛さ麗しさ美しさだというのに、鏡見たことないんだろうか。可愛さに目が眩んで攫われるというなら対象は確実にディー様の方だし、ディー様で目が肥えた陛下方や城に勤める方々が私に目をつけるわけがないではないか。実際にこの人を攫ったとしたら、犯人は生きたまま地獄を見ることになりそうだけど。
「わたしだって、できればしんぞうにわりゅいのでえんりょしたいでしゅが、こうしておーきゅうにおいてもらっていりゅみでしゅから、ごあいさつくらいしにゃいと」
「アイルを王宮に留めているのは僕の我儘だから、アイルが気にすることなどないよ」
「そうはいかないでしゅ。おーきゅうにたいざいさせてもりゃうときめたのは、わたしじしんでしゅ。わたしだけじゃなくもろまでいっしょに、いしょくじゅう、これだけおせわになってりゅのに、さいしょにごあいさつしなかったれいぎしらじゅは、わたしのほうでしゅから。すでにておくれかんはありましゅが、せっかくおじかんをさいていただけりゅということなので、ぜったいいかないと」
「…でもアイルは初対面の人が苦手でしょう?無理しなくても、僕が守るから大丈夫だよ?」
まさかディー様は、自分が囲い込むことで周りにいろいろ言われることは承知の上で、私がコミュ障だからと気を遣ってくれていたんだろうか。
行き過ぎた過保護が玉に瑕だけど、やっぱり優しい人なんだよね。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる