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閑話*オーディン視点

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 精神は大人でも体がまだ幼いアイルは、まだ呂律が怪しいようだ。そんな舌足らずな話し方も、てちてちという効果音が付きそうな頭が左右に揺れてしまう歩き方も、非常に可愛いだけだ。
 ただ転がって怪我をしてしまっては可哀そうなので、しっかり手を握っておかないと。……このぷにぷにの小さな手も可愛い。全身が隙なく可愛いで構成されている。


 すっかり和んでいたところに、アイルが身分を気にして僕を『殿下』なんて他人行儀な呼び方で呼ぼうとする暴挙にでた。
 全力で拒否した。
 誰に何と言われようと、そんな呼び方を許す気はない。
 アイルは冗談だと思ったかもしれないけど、僕本当に全身全霊をかけて泣くよ?

 押し負けついに諦めたアイルだったけど、呂律の問題で『オーディン』と呼ぶのは無理だというので、『ディー』と呼んでもらうことにした。アイルだけの呼び方だと思っただけで、なんだか胸のあたりがムズムズする。どうやら僕は非常に嬉しいようだ。態度には見せないよ、アイルは絶対にドン引きするタイプだからね。



 芝生に寝転んでいたアイルは、せっかく着飾っていたのに、草があちこちに付いて髪も乱れてしまっている。
 このままではお茶会には行けないので、まずは侍女にアイルの身繕いを頼むため、僕の私室に向かう。

 途中宰相に遭遇してしまうというアクシデントはあったけど、怯えて僕の後ろで震えるアイルは小動物のような愛くるしさだった。大丈夫だよ、もしアイルに触ろうとしたら僕が血の一滴まで消し炭にかえてあげるからね。
 宰相がアイルをじっと値踏みするように見ていたことと、僕から引き離そうとしたことに関しての報復は、アイルにばれないところでキッチリしておこうと脳内にしっかり刻み込んだ。



 部屋に戻るとちょうどいいことに侍女長のマーサがいた。
 マーサは厳しいところもあるが、誠実で忠実な人柄だ。僕の大事な子だと示しておけば、決して理由わけなく害するようなことはしないだろうから安心して任せられる。ついでにアイルに合いそうな侍女を見繕ってもらうためにもいい機会だろう。人慣れしていないアイルが心配なので付き添おうとしたのに、部屋から追い出されたのは納得いかないけどね。



 
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