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転生した私と、弟。
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普段なら、とっくに夢の中にいる時間。
前世ならいわゆる丑三つ時と呼ばれる時間ではありますが、今日は眠い目こすって必死に起きています。
というのも、
「旦那様、お嬢様!産まれました…!元気な男の子です!」
私に弟が産まれました。なう。
「可愛いなぁ~。わかるか、お父様だぞ~」
「おとうしゃま、わたしもみりゅ」
「おおアイル、すまなかったね、ずいぶんお父様が独り占めしていたようだ。ほら、アイルの弟だよ」
「おとーと」
すでに産まれたばかりの息子にデレデレになっている、テンション爆上がり中のお父様。
待望の嫡男だし、それでなくても大好きなお母様との間に生まれた可愛い子供だ。
部屋に入ってから30分間、私が弟の顔を見せてもらえなくても仕方ないと思おう。
私は精神年齢大人なのだ。
(お父様はそれ以上に実年齢だけは大人のはずだが)
「アイルちゃん、ここに座ってちょうだい。膝にのせるわね?首をしっかり支えてあげて」
「あい、おかあしゃま」
疲れ切った顔をしながらも晴れやかな、やり遂げたという笑顔のお母様。
私が女の子だったから、後継ぎを産んで安心したのもあるのだろう。
それを抜きにしても、我が子の誕生がただただ嬉しいのかな。
私は子供を産んだことがないから、よくわからない。
けど大好きな両親や使用人たちが嬉しそうなのは、私も嬉しい。
すっと近付いてきたリサに、お母様が横になっているベッドに乗せてもらい、端に座る。
するとお父様が、ゆっくり私の膝の上に弟をのせてくれて、やっと顔を見ることができた。
想像していたよりもしっかりとしている顔立ち。
むにむにと動く小さな口元。
ぷわぷわな髪は、お父様と同じ色。
小さな手はきゅっと握られていたが、そーっと指を近づけると、きゅっと握りこまれた。
ついでに私の心臓もきゅっと握られた。
「かわいい…」
「アイルちゃんの弟よ、可愛がってあげてね?」
「あい」
まだ私の腕には重い弟という存在。
今はその頭を支える腕を、さらにお父様に支えてもらわなければならないが、これから先、どんな時でもしっかり支えてあげられるように頑張ろう。
私はあなたのおねぇちゃんだから。
「あぁ、天使が天使を抱いて微笑んでるわ…」
「我が子たちが可愛い、尊い…」
後ろで両親と、片付けに追われていたはずの使用人たちが、動きを止めて恍惚の顔で私たちを見つめていたことには気付かず。
私の腕が震えて限界をむかえるまで、すやすや眠ったままの弟の顔を眺め続けた。
前世ならいわゆる丑三つ時と呼ばれる時間ではありますが、今日は眠い目こすって必死に起きています。
というのも、
「旦那様、お嬢様!産まれました…!元気な男の子です!」
私に弟が産まれました。なう。
「可愛いなぁ~。わかるか、お父様だぞ~」
「おとうしゃま、わたしもみりゅ」
「おおアイル、すまなかったね、ずいぶんお父様が独り占めしていたようだ。ほら、アイルの弟だよ」
「おとーと」
すでに産まれたばかりの息子にデレデレになっている、テンション爆上がり中のお父様。
待望の嫡男だし、それでなくても大好きなお母様との間に生まれた可愛い子供だ。
部屋に入ってから30分間、私が弟の顔を見せてもらえなくても仕方ないと思おう。
私は精神年齢大人なのだ。
(お父様はそれ以上に実年齢だけは大人のはずだが)
「アイルちゃん、ここに座ってちょうだい。膝にのせるわね?首をしっかり支えてあげて」
「あい、おかあしゃま」
疲れ切った顔をしながらも晴れやかな、やり遂げたという笑顔のお母様。
私が女の子だったから、後継ぎを産んで安心したのもあるのだろう。
それを抜きにしても、我が子の誕生がただただ嬉しいのかな。
私は子供を産んだことがないから、よくわからない。
けど大好きな両親や使用人たちが嬉しそうなのは、私も嬉しい。
すっと近付いてきたリサに、お母様が横になっているベッドに乗せてもらい、端に座る。
するとお父様が、ゆっくり私の膝の上に弟をのせてくれて、やっと顔を見ることができた。
想像していたよりもしっかりとしている顔立ち。
むにむにと動く小さな口元。
ぷわぷわな髪は、お父様と同じ色。
小さな手はきゅっと握られていたが、そーっと指を近づけると、きゅっと握りこまれた。
ついでに私の心臓もきゅっと握られた。
「かわいい…」
「アイルちゃんの弟よ、可愛がってあげてね?」
「あい」
まだ私の腕には重い弟という存在。
今はその頭を支える腕を、さらにお父様に支えてもらわなければならないが、これから先、どんな時でもしっかり支えてあげられるように頑張ろう。
私はあなたのおねぇちゃんだから。
「あぁ、天使が天使を抱いて微笑んでるわ…」
「我が子たちが可愛い、尊い…」
後ろで両親と、片付けに追われていたはずの使用人たちが、動きを止めて恍惚の顔で私たちを見つめていたことには気付かず。
私の腕が震えて限界をむかえるまで、すやすや眠ったままの弟の顔を眺め続けた。
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