上 下
10 / 16

10話

しおりを挟む
 俺も幼馴染みも傘を忘れていて帰れない。幼馴染みはいつも折り畳み傘を常備しているはずだが、どうやら壊れているらしい。

「友達が余分に傘持ってきてないか聞いてくる」

 俺がそう言うと幼馴染みもついてこようとしたので止めた。幼馴染みと一緒にいるとうっかり触ってしまいそうになるからだ。まだ俺の気持ちも伝えていないのにベタベタ触りこんでは示しがつかない。あとさっきから心臓がバクバクいってて冷静になりたかったのもある。

「誰か傘二本持ってない?」

 校舎内で部活をしていたクラスメイト達を見つけて聞いた。誰も持ってないらしい。まあ、一本あったら十分だから二本なんてないよな。
 それからも知り合いを見つけては聞き、見つけては聞きを繰り返したが収穫はなし。ひとまず幼馴染みの元に帰る事にした。



「あれ、キノ……と副会長?」

 幼馴染みと副会長が話し合ってるのが見えて立ち止まる。距離があるから何を話しているかは分からない。
 しかし、何やら親しげに話してるのが幼馴染みの表情からわかり、心の中に黒いものが燻る。
 ドクドクと心臓が脈打って、二人を目に焼き付けるみたいに、俺の瞳が大きく開いた。

 キノが好きなのは俺じゃないのか?

 大きな声で幼馴染みを呼んで近付いた。副会長は幼馴染みに持っていた傘を渡し、頭をひとなでしてから帰っていった。
 キノが好きなのは俺な筈なのに、どうして頬を赤く染めて副会長を見るのか。どうして、俺には見せないような笑顔を副会長に見せるのか。
 カッとなった俺は思わず叫んでしまった。

「キノは俺のことが好きなんだろ!!」

 その一言に幼馴染みは真っ青になって、一歩後退る。

「いっちゃ………知って……なんで」

 幼馴染みが屋根のない所に出て濡れているのを見て少し冷静になった。

「ちょ、キノ濡れるよ」
「ぼくの……ぼくの気持ち知ってて、いっちゃんは、一緒にいたの?」

 慌てて腕を掴んで引き寄せようとしたが、幼馴染みはそれを拒んだ。
 僕の気持ち、とは何時からのことなのか分からないが、俺も同じ気持ちだと、そう言おうと思って口を開いたが、幼馴染みはそれすら拒むように声を張り上げた。


「僕のことずっと気持ち悪いって思ってたんなら放っておいてよ!中途半端に優しくして、僕のこと弄ばないでっ!」

 そう言うと俺に傘を押し付けて雨の中走って去っていってしまった。俺は幼馴染みの言うことが信じられなくて呆然としてしまう。
 気持ち悪いなんて思ったことない。だってずっと好きだったんだから。
 もしかして、昨日の告白はそういう意図じゃなかった?俺に伝えるつもりじゃなかった?
 一人で考えたって馬鹿な俺じゃ真実に辿り着けるわけがない。それならこのまま猪突猛進で幼馴染みにアタックするしかない。
 せっかく両想いになれたんだ。放課後に言うって決めていたし、幼馴染みを引っ張りだして俺の気持ちを伝えるんだ。

 そして副会長との関係も聞き出す……!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

俺が勝手に好きな幼なじみに好きって十回言うゲームやらされて抱えてたクソでか感情が暴発した挙げ句、十一回目の好きが不発したクソな件。

かたらぎヨシノリ
BL
幼なじみにクソでか感情を抱く三人のアオハル劇場。 ──────────────── ──────────────── 幼なじみ、美形×平凡、年上×年下、兄の親友×弟←兄、近親相姦、創作BL、オリジナルBL、複数攻3P、三角関係、愛撫 ※以上の要素と軽度の性描写があります。 受 門脇かのん。もうすぐ16歳。高校生。黒髪平凡顔。ちびなのが気になる。短気で口悪い。最近情緒が乱高下気味ですぐ泣く。兄の親友の三好礼二に激重感情拗らせ10年。 攻 三好礼二。17歳。高校生。かのん弄りたのしい俺様王様三好様。顔がいい。目が死んでる。幼なじみ、しのぶの親友。 門脇しのぶ。17歳。高校生。かのん兄。チャラいイケメン。ブラコン。三好の親友。

【完結】終わりとはじまりの間

ビーバー父さん
BL
ノンフィクションとは言えない、フィクションです。 プロローグ的なお話として完結しました。 一生のパートナーと思っていた亮介に、子供がいると分かって別れることになった桂。 別れる理由も奇想天外なことながら、その行動も考えもおかしい亮介に心身ともに疲れるころ、 桂のクライアントである若狭に、亮介がおかしいということを同意してもらえたところから、始まりそうな関係に戸惑う桂。 この先があるのか、それとも……。 こんな思考回路と関係の奴らが実在するんですよ。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

雪は静かに降りつもる

レエ
BL
満は小学生の時、同じクラスの純に恋した。あまり接点がなかったうえに、純の転校で会えなくなったが、高校で戻ってきてくれた。純は同じ小学校の誰かを探しているようだった。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

真冬の痛悔

白鳩 唯斗
BL
 闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。  ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。  主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。  むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

処理中です...