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 が、今度は又兵衛に向けて銀光が殺到する。
 逃げる間もなく、又兵衛は大刀を合わせた。一際派手な火花が散る。二合、三合と打ち合うが、それは防戦の色をおびていた。圧倒的な斬撃を前に、又兵衛は防いでも受け流しても隙を生じさせられ反撃をくり出す間がない。
 銀光一閃、今度は喜平次が仲間を救う。
 この時代、あくまで個人対個人の剣技を会得しているのがふつうだが、徳兵衛たちは隠密のつとめをともにくぐり抜けるなどして連携しての太刀捌きを習得していた。群れた歴戦の狼が敵と戦うように、その動きは連帯がとれている。
 それで、なんとか次々と現われては遅いくる藩士たちに対抗できていた。
 だが、体力を考えればそれも永延にはつづけられない。
 そして、限界はもうそう遠くなかった。
 徳兵衛は己の体の動きがにぶりつつあることを自覚しながら、倒れる相手の体を徳兵衛は障害物代わりに体当たりで残る敵のほうへ押しやった。徳兵衛たちの道筋は地面に伏している藩士が跡となって残っており、勇猛さで知られる島津家の屋敷の敷地をそれだけの距離生きて移動できることは驚嘆すべきことだが、代わりに徳兵衛たちもまた満身創痍だ。衣装のあちこちに裂け目が生じ、傷口がのぞいていた。
 閃、躱しきれず、また裂傷が徳兵衛の身に刻まれる。全身が茨にしめつけられているかのごとく痛い、それほどの数の傷を負っていた。
 紫電一閃、足を止めて相手の脇腹へ刺突。戦果を確認することなく、敵の動きが止まったのを認めた時点で動いた。仲間たちも同様の挙動を見せていた。
 やがて、死の追跡劇に終焉がおとずれる。
 表門がすぐそこにまで迫っていた。そこで徳兵衛たちは急に足を止める。
 清蔵がふところに手を入れて目的の品をとりだす間、ほかの三人がそのまわりを囲み追跡者にそなえた。
 ほぼ間を置かず、藩士たちが追いつく。目をつりあげ、肩を怒らせすさまじい形相。
 もっとも、徳兵衛たちも似たような面持ちだが。
 戦場というのはそういう場所だ。善だ悪だと唱えようが、みながみな等しく悪鬼に堕(お)ちる。
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