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 周囲の老若男女は興奮した面持ちで、
「おいおい、お武家とはいえ子供が護摩の灰を倒しちまったぞ」
「いやあ、感心な業前だ」
 などと言い交していた。
 それを意識して晴幸は表情を変える。このままここにいるのはうまくない。
 門弟が追いかけてきているかもしれないのだ、目立った上にその場にとどまるのは下策だ。
 晴幸はいまだにくっついているふたりに目を向け直す。
「お熱いおふたりさん、おれも危なかったんだけどなぁ」
 とわざとらしい声でぼやいてみせた。
 とたん、両者はあわてて距離を置く。志乃の目には残念がるような光が一瞬かすめた。
 いいさ、悪役ぐらい――晴幸は苦笑を浮かべながら告げる。
「胴巻をとりもどして、さっさとずらかろう」と。
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