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 江戸の初期と違い、以降となると武士にも血腥いことを忌避する感情、習慣が生まれている。助之進もそのご多分に漏れず、あくまで寸止めで済ませて相手を五体満足で帰らせるつもりだったのだ。しかし、ほぼ無意識の行動の結果、道場破りの手首を砕いてしまった。
 集中の末に恐怖や怯懦を打ち消しても、やはり冷静ではいられなかった。
 まだまだ未熟、そのことを助之進は思い知らされる。
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