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「よし、わかった。酒を与えたわしにも責任がある。代わってやろう」
「まことか、それは助かる」
 了斎の提案に願ってもないとばかりに酔っ払った足軽が応じる。
 わしこそ助かる――了斎は声に出さずにつぶやいた。
 したが、あくまで第一の関門を越えただけのことだ、と言葉をかさねる。居場所を把握できる、というよろこびに気がゆるみそうになる己を諌めた。

 そして、夜。了斎は、例の酔っ払った足軽の紹介で同じく寝ずの番に立つ者に連れられて集落の百姓の屋敷へと向かった。
 しかし、その途上で了斎はすでに、できぬ、と判じている。
 周囲の闇にかすかにだが人の気配がひそんでいた。それも無数に。
 だが姿は見えない。切支丹の軍師、という大友家にとって失いがたい人間をのがさぬために腕利きをそろえているのだろう。
 されど、とにもかくにも正確な居場所がつかめる――。それでよしとしよう、と了斎は考えた。
 機会は、まだある。そして、“手”もすでに考えてあった。
 逃げなければ機はまだめぐってくるはずだ。
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