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父が、兄が、母が、重臣が、大内家を盛り立てるためにどれだけ奔走したのか知っている。無数の人間がそのために汗と血を流し、それでもなお無念の思いを抱いて散っていったのだ。
だのに、それらの事実を忘れて生きることができるのか。
己に課せられた“意味”から目をそらして後ろ暗さに耐えながらこれからの生をかさねるのか。せめて、せめて一糸報いねば――。
アルメイダという司祭(パードレ)、切支丹の軍師を救出することは大友家を助けることになる。大友家を助けることは毛利の動きを制することになる。毛利の動きを制することにつながるのならそれは一糸報いたことになる、大内輝弘はそう考えた。
残念ながら運に見放されている。織田信長が今川義元を討ったように毛利元就の首級を挙げることは自分には叶わないと彼は見ていた。
ならば、身共にできるせめてもの一事をなして生を終えたい――。己に言い聞かせるうちに物見の士卒数人がすぐ側に迫る。
刹那、麾下の武者のひとりが猛然と飛び出した。
まだ指示はくだしていない。抜駆けだ。
とたん、大内輝弘は思わず苦笑を浮かべる。最後の最後まで大内家を継ぐ地位にある者としてのふるまいをまっとうすることはできなかった。
したが、文句をつける筋合いでもあるまい――。
主の我が儘に付き合ってくれた者たちだ。むしろ、感謝すべきだろう。
「者共かかれ」せめてものけじめとして、すでに動き出している士卒たちに大内輝弘は張りのある声で指示と飛ばした。
だのに、それらの事実を忘れて生きることができるのか。
己に課せられた“意味”から目をそらして後ろ暗さに耐えながらこれからの生をかさねるのか。せめて、せめて一糸報いねば――。
アルメイダという司祭(パードレ)、切支丹の軍師を救出することは大友家を助けることになる。大友家を助けることは毛利の動きを制することになる。毛利の動きを制することにつながるのならそれは一糸報いたことになる、大内輝弘はそう考えた。
残念ながら運に見放されている。織田信長が今川義元を討ったように毛利元就の首級を挙げることは自分には叶わないと彼は見ていた。
ならば、身共にできるせめてもの一事をなして生を終えたい――。己に言い聞かせるうちに物見の士卒数人がすぐ側に迫る。
刹那、麾下の武者のひとりが猛然と飛び出した。
まだ指示はくだしていない。抜駆けだ。
とたん、大内輝弘は思わず苦笑を浮かべる。最後の最後まで大内家を継ぐ地位にある者としてのふるまいをまっとうすることはできなかった。
したが、文句をつける筋合いでもあるまい――。
主の我が儘に付き合ってくれた者たちだ。むしろ、感謝すべきだろう。
「者共かかれ」せめてものけじめとして、すでに動き出している士卒たちに大内輝弘は張りのある声で指示と飛ばした。
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