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「したが、村上が大友に合力するのは確かなので。村上はこの頃は毛利に与しているはずだが」
「もうしわけないが、手前は通詞として同道しただけのこと。仔細についてはアルメイダ様にたずねてくだされ」
 ロレンソの返答に金介はやや不満げに、さようか、と首肯する。
 そしてなにか思いついたようすで口をふたたび開いた。
「貴殿は透波であろう、どこの家中に仕えておられる」
「さにあらず。手前は神に仕えておりもうす」
 金介の問いにロレンソはやや語気を強めて応じる。
 そう、神に仕えておるのだ――彼は胸のうちで自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
 こちらのやや威圧的な態度に金介は鼻白んだようすを見せ宴会へともどっていく。
 それを見送りロレンソは再度、月を見上げた。

   幕間

 武士でいうなら元服を迎える齢になっていない頃、毛利に仕える座頭衆の忍びとなるべく小七郎はすでに厳しい鍛練を課されていた。
 ひとつ年上の兄、孫六と彼は棍棒を手に向かい合っている。兄の顔は緊張で血の気がやや引いているように見えた。
 気息をととのえ、互いの機を読み合って電光の速度で得物をふるった。両者は攻撃を避けず、防がない。棍棒が当たった瞬間、独特の呼吸法をおこなう。打たれてもひるまない強靭な体を作るための修行『骨固(こつがた)め』をこころみているのだ。
 打撃は一度では済まない。二度、三度、四度……とひたすらくり返す。
 呼吸法をしくじれば息が止まり体が硬直した。すると、さらに次の棍棒の殴打をもろに受けてしまうことになる。そうなれば、後はひたすら無防備なところを殴られることになる。
 そうなりたくなくば呼吸法をしくじらず、しくじってもすぐに強固な意志で呼吸をととのえねばならない。
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