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 強い者にすがって生きる木偶どもが――むしろ、軽蔑の念が胸には満ちていた。まるで畜生のごとき生き様ではないか、と。そんな生き方をよしとする者の気が知れない。それに、
 大名に天下統一がなされてしまっては、我らが生き様は曲げられることとなる――。
 それをよしとする者もまた、無二にとっては敵だ。
 が、当面のところは彼の鉄砲の活躍は必要なくなったようだ、集落で動く影が襷をかけた識神ばかりになったことを確認する。
「したが、貴殿は何故に我らと手を組む?」
 無二は脇の“陰陽師”に声をかけた。最初から興味を惹かれていたのだが、手が空いたことで好奇心が高まったのだ。それに確固たる理由で戦うからこそ、他者の動機も気にかかる。
「織田右府は城将に降るよう説得させるために、切支丹を脅しよった。ために、右府、きゃつに与する者どもはみな一人残らず敵だ」
 刺々しい空気を常にまとった相手のこと、あるいは無視されるかと思ったが意外にも返事はあった。ただし、声音は軋るようなもので、精神の均衡をいちじるしく崩していることがうかがえるものだ。
「したが、本願寺の戦の折は織田右府は切支丹を必ずしも悪しゅう扱っておらなんだ」
「右府は朝廷を厚遇しておる。朝廷は切支丹を京から追い出そうとする輩に一味しおった奴輩、なれば右府を討つは朝廷を討つも同じ。デウスもまたそれをお望みになられている。」
「なれど、朝廷に与する者はいくらでも現れよう。凋落したといえど、その権威は未だ健在なればの」
「されば、ことごとくを滅ぼすまで」
「朝廷も、主上もか」
「むろん。神は我らがデウスのみ、偽りの神の裔を語る奸物を生かしておいていい道理はない」
 陰陽師の返答に、無二は寒気をおぼえた。剣の物打が鼻先をかすめるよりも恐怖を感じる。織田信長に敵する者、という共通点で行動しているが、根本的に目の前の相手が異質な存在であることを悟ったのだ。
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