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 彼の言う通り、目を見開いて倒れる男の姿はまさしく骸だった。
 一行は足を止めて死体を検分した。
「袈裟に斬った一撃、傷の深さからして定寸の刀による一撃でござろう」
 小次郎が己が意見を披露した。
「傷がほかに見当たらねえし、下手人はひとりだな」
 伊平治が小次郎の考えを補強する。
「街道で斬り合いになって、そのまま倒れたって有様だな」
 助左衛門もみずからの所見をのべた。
 唯一、栄助だけが意見を言えない。猟以外の知識にはとんと疎く確かなことを言えないのだ。
 だが、そこで栄助はハッと我に返る。
 人が死んでいたというのに、こんなふうに死因を冷静にやり取りするほうが本来は異常なのだと思い出した。
「栄助」と猪助が彼を呼んだ。
 彼を見やると、
「急に顔色が変わったな」
 と猪助は告げる。
「いいか、人はどんなことにも慣れちまうもんだ。人の死だって、そうだ。人の死を平然と受け入れられるようになっても、それはそいつが特別非情なんじゃねえ、人間はそういうもんなんだ」
 彼が重ねた言葉に栄助は得心がいった。
 先ほど、自分が人の死に何も感じなかったのは人間の死というものに慣れてしまったからなのだ。
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