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「どうやってそんなの見分けるんだ?」
「それはおまえの猟師の審美眼で」
「俺に分かるのは獣の動向だけだ、人の行動なぞ分かるか」
 愛想笑いの名主に、栄助は厳しい声を浴びせる。
「そんなことを言って、臆しているだけではないか」
 名主が痛いところを突いてくる。確かに栄助は臆病者だ。今や猟師だが、昔は虫一匹ですら怖がって触れなかった。今でも高いところや暗い場所は苦手だ。
「奴を捕まえないと次に頭を割られるのはみなのうちの誰かかもしれんのだぞ」
 名主が脅すように告げる。
「つまりは、奴を捕まえるんだな」
「いや、だから、それは」
 栄助の確認に、名主は顔を掻きながら応じた。
 栄助は思わずため息をついた。
 目の前の男は生き物の命を奪うということを分かっていない。それは真剣勝負なのだ。半端な気持ちで臨めば痛い目を見ることになる。
「簡単なことだ。村の衆の命と、向こうとどちらの命を大切にするかということだ」
 本来はこんなふうに陣頭に立つというのは好きではなかったが、仕方がなかった。曲りなりにも命を奪うことを生業にしている者として異見しておかなければ。
 ただ、栄助の発言は狡猾なものだった。命を秤にかけてどちらを大事にする、と問いかけたのだ、名主の立場上、殺人者より村人が大事だと言わざるをえまい。悪知恵も知恵のうちが猟師というものだ。
「わかった、村の衆の命を最優先に奴を追え」
 名主が口惜しげに告げた。
 実は逃げた男は名主の縁戚なのだ。捕まえた場合、発狂したとして閉じ込めてしまうつもりだったのかもしれない。
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