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僕はマルクート・マキナ。マルクと呼んでいただけると嬉しいです。
先日14の誕生日を迎えたばかりの一応女の子です。一応というのは、実は僕には前世の記憶というか異世界の記憶があります。その記憶の中ではどうも僕は男の人だったみたいです。もうとにかく曖昧でよく分からなくなっているんですけどね。
7歳くらいまではもっといろいろとあちら側の仕組みなんかも口に出来ていたんですけど、今はもう向こうで使っていた言葉を多少覚えている位になってしまいました。こういうのを七つまでは神の子というんでしたっけ? 生憎とこの世界『ルーベンス』では神の存在は証明されていないのですけれども。
つまり所謂TS転生者ってことになるんでしょうね。
手早く身支度して部屋を出ます。料理場でワゴンを受け取りゆるく弧を描いた廊下を急ぐとやがて昇降床の待機場へ着きます。なんて言えばいいんでしょうね。畳一枚分くらいの丈夫な板が決まった軌道を斜めに上下するのですが想像できるでしょうか。ちょっと違いますけど、床だけのエレベーターでもいいかもしれません。
飛び乗ると髪が風でなびく位の速度でどんどん上がっていきます。僕の部屋が2階にあって、向かっている部屋は100階にあります。図ったことはないですが、50も数える間には到着するので結構な速度だと思います。
加えて傍を同じような速度で大量の本を載せた床がすれ違っていくので、慣れないうちは怖いかもしれませんね。
この建物はかつては『最果てのエデン』と呼ばれていました。昔々それこそ神話になってしまう位の昔、世界を一つにした偉い王様が世界中の知識という知識をかき集めて世界の果てに建築した巨大な塔に収められました。辿り着くことは難しく、けれど辿り着けばいかなる願いもかなえる手段が手に入る。そんな風にも言われたそうです。
ですがやがて王様が亡くなると一つだった世界は散り散りのバラバラになり、塔も崩れ落ちるかに思われました。それを救ったのは王の血を引くただ一人の姫だったと言います。姫は『知識を求めるならば、知識を差し出せ』と宣言しました。従わないならばすべてを破棄する、と。
世界に対する脅迫でした。
その後様々な思惑が交錯したと言います。
力ずくで塔を手に入れようとするもの、それを阻止したいもの、姫に賛同するもの、静観を決め込むもの。
結果として塔を中心に緩衝地域が出来上がりました。今の独立自治区フェルノの前身です。
そうなるまでに多くの英雄と呼ばれ得る人々の活躍があり、それらは書物として多く残されています。特に灰燼のアルバと呼ばれた剣士の物語は劇場の人気演目の一つです。
いつか機会があればお話ししますね。
もうすぐ到着しますし、僕も大好きなお話ですからどうせならゆっくりと解説させていただきたいなと。
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