クロスチャイルド

山田麻衣

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クロスチャイルド 第1章 ミラク編

クロスチャイルド 第1章 ミラク編 4 [2/3]

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ーやめて、殺さないで…!

それと同時に肩甲骨から火を吹く程の熱を感じ、皮膚が引き裂かれるほどの激しい痛みを感じた。

しかし、そんなことはまったく気にならなかった。

ほとんどの本能のまま、無我夢中で走り出しアーサーを捉えて地面を蹴った。
それと同時に銃声がなり、アーサーは確実に自分は死んだと思っていたが、「クロスチャイルド?報告にないぞ?!」という声がはるか下の方でするため、恐る恐る目を開けると、ミラクに抱きしめられて宙に浮いていた。

「ひっ…、ミ、ミラク…これは一体…」

ミラクは息を乱し、心臓はうるさいくらいに鳴っている。

口呼吸で、喉はからからに乾いていた。

自分の目で確認していないけれど、わかる。

自分の背中には翼が生え、空を飛んでいること。

そして、その翼をどう使えばいいのかも本能的な部分でわかっていた。

それでもどうして自分がこんなことができるのか、わからなかった。

頭は完全に冴え、まるで今までとは全く別物の自分がいるということだけはよくわかっていた。

矛盾と納得。理解と本能。そんなものたちがちぐはぐにミラクの目の前を通り過ぎていく。

浅い呼吸を繰り返す。

息が肺まで到達していないようで、とても苦しい。

ミラクの頭の中はぐちゃぐちゃで、顔は涙で濡れていた。

化け物、と叫ばれた。

すぐさま銃が構えられ、レーザーが下から湧き出るように襲ってくる。

ミラクは翼を力一杯動かし、その場を移動しながらそれらを交わしていく。

ミラクの髪と同じ孔雀緑色が上部分、生成り色が下部分に二色で上下に配色され、翼の付け根部分の内側には燃えるような鮮やかな赤が差してある。

芸術品のような美しい翼に、ミラクの長い髪がさらに伸び、伝説の火の鳥が空を舞った。

その姿は見るもの全てを魅了し、軍隊の攻撃がほんの少しだけ止まった。

(逃げるだけじゃだめ。…でも怖い。)

ユキのように、あんな風に自分も命に手をかけられるのだろうか。

想像するだけで恐ろしくなる。

(でも逃げ回っているだけじゃいつかは追いつかれてしまう。どうしたら…。)

「…こちらユキです。はい。レーガン邸に。…ええ。アーサーが腕を打たれている。…いえ、意識はありますが、出血が多い。…はい。はい。ではよろしく。」

ユキはイヤーカフから電話をかけた。

アーサーの今の状況を配信し、「まずは止血を」とウララが叫んでいる。それを遮るように通話を切ると、画面は元の小さなイヤーカフスに吸い込まれるように戻った。

「アーサーを守ってくれたんだね。」

ユキは全神経をまた集中させる。

その姿はまさに、狩をする前の獣だ。

あまりの殺気にミラクは肩を縮こませて空からユキを見ていた。

「船はすぐ近くで待機しているみたいだ。来たらすぐにアーサーを運んでくれる?」

ユキの周りに先ほどまでミラクに銃を向けていた武装集団が丸く円を描くように取り囲む。

「ユキさん、危ない!」

ミラクの叫びと共にユキを目掛けて銃を乱射する。

ユキはそれを大きく跳躍して交わし、戦闘部隊の一人の背後に周り、首に鋭い爪を当てる。

爪が少しでも食い込むと、血が滲み出し流れ出てきた。

切れ味はとても鋭い。

「そんなのじゃ殺せないよ。僕は人間じゃないからね。」にやりと笑っていた。
そう言って人質を盾に突き進み、その者が腰に下げていた小型爆弾に手をかけた。

どこに何があるかはにおいでわかる。

「さっき、これで何人もの君たちの仲間が死んだ。」

ユキが爆弾を手に取ると、蜘蛛の子を散らしたように戦闘員たちが腰が抜けたように逃げていく。

静止の声がそこらで聞こえ、ユキが人質として捕らえている男に関してはあまりの恐怖に意識を失いかけていた。

「…プラスチック爆弾だね。結構アナログなんだね。君たちを全員を殺すのには十分そうだけど…どうしようか。それとも団子になるまで丸めてあげようか。君たちを」

ユキが虚ろに微笑むと、恐怖に帯びた声が上がった。
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