上 下
54 / 57

メイド服……1ー徹

しおりを挟む
「有賀~。駅前のメイドカフェ行こうぜ。すげ~んだよ」
友達が、両手を胸の前でばい~んとする。
「これだから、男ってヤダ」
下駄箱でタイミングが重なった女子がいう。
「なんだよ~。女子だってメイド服興味ないの?可愛くね?」
「…………まぁ、カワイイとは思うけど。……文化祭の出し物、カフェにするし私達も行ってみようか?」
「うんうん」

と言うわけで、男2女2でメイドカフェに行く運びになったのだが……
何故ここに翔がいる!!
「おい…有賀……」
「うん、わかってる。わかってるんだが……」
男友達がジト目で俺を見る。いや、俺だって文句言いたいよ!
「きゃ~。可愛い!」
アニメやエロゲーにでてきそうな、ばい~んで、ぼい~んなメイドさんが翔の天使度にメロメロになっているのだ。
ゆ、許せん。

事のおこりは校門を出たら翔がいて、4人でメイドカフェに行くから遊ぶのはまた今度な、と言ったら
「徹のスケベ、変態!ヤリチン!不潔!」
などと大声で叫んだのだ!子供の声は通る。慌てて翔の口を押さえたが、周り中の視線を集めてる。
「単なるカフェだよ、カフェ!そうだ、翔も行ってみよう、そんなに怪しい所じゃないってわかるから!!」

…で、今にいたる。
「翔君、お姉さんが食べさせてあげる~」
ソファに、絶対領域メイドさんが腰掛けて、むっちり太ももをポンポンする。
膝の上に乗れと!?
いや、羨ましすぎるっ!
「有賀!」
おう!
のそのそ移動する翔を止めねば。翔にムチムチ太腿は10年早い!
「翔、食べさせてあげるから、こっちおいで」
「ありがとう徹!」
満面の笑顔でぴょんと俺の膝の上に乗る翔。取り敢えず、俺らの絶対領域観察権は守ったぞ!
…………、いや、こっちに来いとは言ったが何故膝の上に乗る。
翔君、君の座り方はお兄さんのお兄さんにぶつかるのだよ。可愛いお姉さんを前に緊張しているのかもしれないが貧乏ゆすりはやめてくれ。
「徹?」
まだ幼い瞳が俺を捉える。
俺はなんて汚れているのか!
散らす事に集中せねば。メイドさんを見る余裕も無くなった。ひたすらオムライスを翔の口に運ぶ。
散れ散れ散れ!
息子よおさまれ!
翔がふふっと嬉しそうに笑った。
「ああ、早く大人になりたいな」
「??」
か、翔くん。動かないで。俺ジュニアと背中が擦れる。
散れ散れ散れ!


…………俺はなんの為にメイドカフェに行ったのだろう。高いオムライスを食べに行った、それだけだ。
「じゃあな、有賀!」
鼻の下が伸び切った男友達と別れて翔を家までおくる。
くそう、ヤツばっかり愉しみやがって。
ぜってーリベンジしてやる。

「徹?」
「なんでもないよ。」
うう
澄んだ瞳で見つめないでくれ。


翔を爺さん家に送ると、晩ごはんを食べて行けと言われた。
お言葉に甘える事にする。

翔と遊んでいると爺さんが帰ってきた。挨拶もそこそこにジロリと翔をみて言った。
「聞いたぞ、お前はどうしてそんなにも浅慮なのだ」
センリョ、千両?良く分からないけど、翔が叱られている
「僕は敵を味方につけました!二兎を得ました」
翔がジジイに言い返した。にと?
「そうだな、だが、対処療法だ。次に同じ事がお前の知らない所で起きたらどうするつもりだ?まだまだ幼いな」
翔が悔しそうに唇を噛んだ。
イヤイヤジジイ、翔はまだ小一、幼いに決まってんだろ。なんだよその言い方。
「徹君、この子の未来はキツイものになる。それが分かっているからこそ、私は翔に厳しくするのですよ。」
睨みつけた俺にジジイが言う。
「でも、翔はまだ小さくて」
未来だって色々な未来がある。キツイものになるなんて確定してない。夢だって見れるのになんて言い草だ。
「そう、まだ今ならジュンボクだし間に合う。その間に翔は大人にならなければならない。物事の本質を見極め、根本を叩き潰さねばならない」
ジュンボク??
「本質なんて決まってる!徹が…!」
へ?オレ?
何かを言いかけて翔が押し黙る。薄っすら潤んだ瞳、かわいそうで思わず抱き寄せた。そのままに、爺さんを睨む
「翔、叩き潰せ。方法が思い浮かばないか?つくづく想像力がない。それでもαか」
爺さんの言葉に婆ちゃんが抗議する。
「あなた……。翔はまだ幼いのよ。もう少し優しく諭してあげて」
「…………分かった。翔。こういう方法もあるのだと、学びなさい。私が手本をみせてあげるからな」
「え……。あなた、私はそんなつもりじゃなくて……」
婆ちゃんが青ざめるながら爺さんをとめようとするとするが、それを俺がとめた。
「お婆さん、お願いしましょうよ」
外野なら何だっていえる。幼い翔をここまで追い詰めたのだから、責任とってお手本を見せてもらおうじゃねぇか。……けど、なんの事を言ってんのか分かって無いんだけどさ。
「…………御祖父様、自分が情けないです。でも、今の僕では……プライドなんかで失うよりも実利をとります。よろしくお願いします」
翔が俺の腕の中から出てきて、ジジイに頭を下げた。
「ああ。まかせなさい。けれど翔、敵を敵のままにしては成長はないし、何より勿体ない。敵の良い所は自分にとってプラスにならないのか、その想像力はお前の今後の人生を豊かにするぞ」
ジジイが急に優しくなる。
ジジイは婆ちゃんに弱いからな……

その婆ちゃんはさめざめと泣いている。
「ごめんなさい、ごめんなさい徹君、そんなつもりは無くて…………。」
「はい、お祖父様!」
翔はキラキラした目でジジイを見上げる。

…………
この家ってホント、時々カオスだと思う。












~~~~~~~~~~~~~~~~~~

読者様より、メイドネタを提供していただきました。
ありがとうございます。













    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

町内性奉仕当番 ~美人すぎる町内会長の淫靡な町興し~

歌音
大衆娯楽
寂れた田舎の町、奥佐間町。 これといった名物があるわけでもなく、ちょっとした会社はあるが、シャッター街と化している商店街…徐々に寂れていき、町を脱出できない住人達は負債を抱えていく。 そんな田舎に帰郷し、そのまま誰もやりたくない『町内会長』に就任した『山内美代子』。 彼女はこんな寂れた田舎町の割りに美人が多い事に目をつけ、ある『町興し』を計画する。

メンヘラ君の飼い犬

雫@更新再開
BL
メンヘラ君がただたんに人間の犬を飼うだけの物語。SM、尿道、排泄管理、射精管理、コスプレなどなど色々やります多分。人間君はMです。やられて喜んじゃいます。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

処理中です...