24 / 34
私と車と普通の人
しおりを挟む
娘たちが私の高齢と下手な運転を心配している
。
次女からメールが届いた
「自動車の踏み間違い防止の件、受付開始は7月31日からとのこと。在庫と人手があれば、すぐできると思うので、問い合わせてから行ってみて」
連絡したら
「型式が古すぎて対応できない」
と申し訳なさそうに言われた。
私の車は、購入してから今年で20年。
走行距離は26000 km 。半年点検の度に「とにかく車を走らせてください」と言われ、10年目を過ぎた頃からは「せめて車庫でエンジンをかけたままにして下さい」そして今は「車検のたびにバッテリー交換するのは仕方ないと思ってください」になった。
そもそも、私は大の運動音痴。車の運転自体考えたこともなかった。それが……
もう44年も前になるが、夫がドイツに5ヶ月ほど出張した。
今振り返ると魔が差したとしか思えないが、その間に運転免許を取ろうとしたのだ。教習所に問い合わせたら
「普通の人なら4ヶ月もあれば十分取れますよ」
まさに渡りに船。
でも、ニンマリして通っていられたのは学科の時だけだった。
実地になると、先生から「まるで50過ぎの老婆並みの運動神経だ!!」と言われ続けると言う、燦々たる日々を送った。
当時は、今と違いマニュアルで、クラッチの踏み込みや戻しが上手くいかず、エンストばかり起こして走れなかったのだ。
普通に前に走れる仲間が神様のように思えたものだった。
月日の経過を恨めしく思っているうちに、夫が帰ってきてしまい、実地を見に来た。
よりによって、坂道発進の練習で悪戦苦闘の真っただ中。クラッチ、アクセル、サイドブレーキがうまく噛み合わず、何度やってもズルズル下がってしまう。
私が車から降りてやっと戻ってきた時、夫が担当の先生に「あれじゃあ、無理ですね。やめさせた方がいいですね」と、偉そうに言っているのが聞こえた
帰り道、先手必勝とばかり
「私、向いてないから車の運転やめるわ」
「ふーん。それで教習所の費用はどうしたの」
と夫。
「私のへそくりよ、すごいでしょ」
「うん。でもへそくりと言えども、元は俺の稼いだ金なんだから、途中で辞めるのなら全額きちんと返せ」
信じられなかった。
まさか、そんな言葉が返ってくるとは思ってもみなかったのだ。
なんともしみったれた了見の持ち主を好きになってしまっていたのか……と。
しかし、ほぞを噛んでも後の祭り。ならば、と奮起して5ヶ月と3週目で教習課程を修了。
私ほど、教習所に貢いだ者はいまい。全部のへそくりを注ぎ込んだのだから。
もっとも、普通の人の部類に入れなかっただけのことだが。
。
次女からメールが届いた
「自動車の踏み間違い防止の件、受付開始は7月31日からとのこと。在庫と人手があれば、すぐできると思うので、問い合わせてから行ってみて」
連絡したら
「型式が古すぎて対応できない」
と申し訳なさそうに言われた。
私の車は、購入してから今年で20年。
走行距離は26000 km 。半年点検の度に「とにかく車を走らせてください」と言われ、10年目を過ぎた頃からは「せめて車庫でエンジンをかけたままにして下さい」そして今は「車検のたびにバッテリー交換するのは仕方ないと思ってください」になった。
そもそも、私は大の運動音痴。車の運転自体考えたこともなかった。それが……
もう44年も前になるが、夫がドイツに5ヶ月ほど出張した。
今振り返ると魔が差したとしか思えないが、その間に運転免許を取ろうとしたのだ。教習所に問い合わせたら
「普通の人なら4ヶ月もあれば十分取れますよ」
まさに渡りに船。
でも、ニンマリして通っていられたのは学科の時だけだった。
実地になると、先生から「まるで50過ぎの老婆並みの運動神経だ!!」と言われ続けると言う、燦々たる日々を送った。
当時は、今と違いマニュアルで、クラッチの踏み込みや戻しが上手くいかず、エンストばかり起こして走れなかったのだ。
普通に前に走れる仲間が神様のように思えたものだった。
月日の経過を恨めしく思っているうちに、夫が帰ってきてしまい、実地を見に来た。
よりによって、坂道発進の練習で悪戦苦闘の真っただ中。クラッチ、アクセル、サイドブレーキがうまく噛み合わず、何度やってもズルズル下がってしまう。
私が車から降りてやっと戻ってきた時、夫が担当の先生に「あれじゃあ、無理ですね。やめさせた方がいいですね」と、偉そうに言っているのが聞こえた
帰り道、先手必勝とばかり
「私、向いてないから車の運転やめるわ」
「ふーん。それで教習所の費用はどうしたの」
と夫。
「私のへそくりよ、すごいでしょ」
「うん。でもへそくりと言えども、元は俺の稼いだ金なんだから、途中で辞めるのなら全額きちんと返せ」
信じられなかった。
まさか、そんな言葉が返ってくるとは思ってもみなかったのだ。
なんともしみったれた了見の持ち主を好きになってしまっていたのか……と。
しかし、ほぞを噛んでも後の祭り。ならば、と奮起して5ヶ月と3週目で教習課程を修了。
私ほど、教習所に貢いだ者はいまい。全部のへそくりを注ぎ込んだのだから。
もっとも、普通の人の部類に入れなかっただけのことだが。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
天空からのメッセージ vol.75 ~魂の旅路~
天空の愛
エッセイ・ノンフィクション
そのために、シナリオを描き
そのために、親を選び
そのために、命をいただき
そのために、助けられて
そのために、生かされ
そのために、すべてに感謝し
そのためを、全うする
そのためは、すべて内側にある
子宮頸がんになりまして
☆よこやん☆
エッセイ・ノンフィクション
がんが見つかったのは30歳。さあこれから結婚、出産を本格的に考え始めた矢先の出来事でした。
今若い世代から増えている子宮頸がん。
当時の闘病、心情などを描いていきます。
馬鹿がどれだけ馬鹿なことを考えているかを晒す試み
クロサワ
エッセイ・ノンフィクション
日々、素朴に疑問に思ったことや思いついたことを書き留めます。
私にはなんの知識も経験もないので、答えに至ることはまずないと思います。
公の場に書き留めておけばいずれ誰かが答えを教えてくれるかもしれないという淡い期待があります。
それと、後で自分で読み返したら馬鹿が馬鹿なことを考えているなぁと、そのプロセスを見下して楽しめる気もしています。
答えもなにも、そもそもイシューすらはっきりしない文章になることが多いでしょうから、
基本的には後者の楽しみ方が主になるかもしれません。
皆々様方もそんな目で、馬鹿を見下すことを楽しんでいただければと思っています。
そんな試みです。
うちのダンナはぽっちゃり男子
つづれ しういち
エッセイ・ノンフィクション
ダンナからのお許しが出たので、書いてみることにしました。
「ぽっちゃり男子」であるうちのダンナの生態と、我が家の日常をのんびりと書いてゆく所存です。
難しい言葉なし。
関西弁。
おやつやすきま時間のお供に、のんびりお楽しみいただければ。
たまに挿絵が入ります。
※カクヨム・小説家になろう にても同時公開しています。
普通に生きられなかった私への鎮魂歌
植田伊織
エッセイ・ノンフィクション
統合失調症の母にアスペ父
そんな私はadhd
不登校、適応障害、癌化する腫瘍を摘出した先には障害児育児が待っていました。
人生、山少な目 谷多めの作者が、自己肯定感を取り戻すために文章を書くことにしました。
日常の事、乗り越えたい事、昔のことなどなど、雑多に書いてゆくことで、無念が昇華できたらいいなぁと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる