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結果は 前編

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夫が”介護認定度”の見直しを受けることになり、二月に市の福祉協会から、年配の女性が審査をしに来た。夫は認知症で”要介護2”の現状なのだが、政策で介護認定度を下げる方向になってきているらしい。

夫には、まず、名前、生年月日、年齢、今の季節などの質問をすることから始まった。
順調に答えていたが、「今の季節は?」に即座に「夏!」
う~ん、確かに彼の位置から見える温度計の表示は29度。温度だけなら夏かもしれないが、エアコンにホットカーペット、厚手のセーターまで着こんでいるのだ。吹き出しそうになって、慌てて私は下を向いた。

日常生活での様子を質問する段階になって
「お風呂には一人で?」
「もちろん、僕一人で入ります。背中を洗うときは、タオルの両端を持って斜めにこうして」
「夜中のトイレは?」
「一人で二三度は行きます。寝る部屋が別々で、トイレが女房の部屋に近いので起こさないように気を付けてます」
(模範解答の連発!)。
「お薬は?」
「僕が用意して、全部済むまで女房が監視しています」
「爪切りは?」
「指の爪は僕が切りますが、足は腹が邪魔して苦しいので切ってもらってます」
「歩くのは?」
「毎朝一緒に歩いているんですが、よく転ぶようになりました。でも女房は側でボーっと突っ立ているだけで、何の手助けもしないんですよ。こんなに冷たい奴だったのかって」
「無理だって。70キロの米俵を転がすことはできても、起こすことはできないもの。もう少し体重が減ったら、ズボンのベルトを持って何とか起こせるかもしれないけど」
「いえいえ、奥さんが腰を痛めますから。そういう時はやはりご主人に何とか一人で立ち上がるようにしてもらわないと。今ちょっとここで歩いてみてください」
夫は部屋の中を軽快に歩いた。そして、なんと片足立ちまでやって見せたのだ。片足立ちができるとは思ってもいなかったので、私は、「すごい!そんなことまでできるんだ!」と叫んでしまい、その後のフォローができなった。

そうか、こういうことで認定度は軽くなるんだ、と思った。
夫のケアマネージャーが、「下がっても要介護1ならいいのですが、”要支援”になると大変ですので同席しましょうか?」と言ってくれたのに、わざわざ手数をかけるのも申し訳なく思い断ったことを、後悔した。

「一人で家には帰ってこれますか?」
「いやあ、ついこないだ戻れなくなって散々でした。女房がソファでうたたねしていたので、わざわざ声をかけるのもと思って。それに、昼ご飯前にちょっと歩いて雇用ぐらいの気持ちだったし……。それが、家に戻ろうとして歩いているのに歩くほどわからなくなって。財布も持ってなかったし、暗くなってきたしで……。」
「そう、私も真っ暗になる前に市役所に電話して行方不明の放送をしてもらおうと思ったのよね。ちょっと居眠りしてたら居なくなっちゃうんだもの、全く。でも、よく戻ってこれたわ」
「うん、野生の感。お前一人残したら心配だから」
「そうね、二人でやっと半人前だものね、私たち」

「いつまでも、お二人で仲良く」
と言って、担当者は帰っていった

そして要介護認定度の結果が届いた。
”要介護3”だった



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