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逡巡 前編(後編に娘視点あり)
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認知症の夫の歩き方が、この頃大分おかしくなってきた。普通の歩き方から直ぐに赤ちゃんのようなヨチヨチ歩きになってしまうのだ。したがって転倒しやすくもなる。夜中の尿失禁も増えた。
どうやら“水頭症”によるものではないか、と診断された。手術をすれば、歩き方も尿失禁も認知症の度合も改善されるらしい。しかし水頭症では説明しきれない点もあるから手術しても変化はないかもしれない、とのこと。
でもこのままだと、もっと悪くなるのは目に見えている。
「おれは、手術は嫌だ。怖いし痛いし絶対受けたくない」
そう言い張る夫を
「ちゃんと歩けるようになれば、今まで通りに食事にも行けるし旅行にだって行けるから」と説得し、手術を受ける方向で進むことにした。
ところが……。
今は、コ●ナ渦である。
入院初日は、入院棟入り口で看護師さんと交代し、病棟への立ち入りや面会は一切ナシ、手術に立ち会うこともナシ。家族は自宅待機の形をとり、手術が終わったら病院から知らせる、という。そして手術後2週間ほどは拘束。その後はリハビリ専門病院に転院して、そこで三ヵ月。転院の時に会うだけで、こちらの病院も、面会は一切ナシ、とのこと。
う~ん、四ヵ月近く家族に会えないままで、自宅に戻ってきた時、果たして要介護3の認知症の夫の記憶はどうなっているのか?
「おれは、どんな事があっても、おまえのことだけは忘れないよ。だって面白い顔しているもんな」
そんな憎まれ口たたく夫には閉口しているが、私のこともすっかり忘れて、「おれの目の前の素敵な女性は誰?」なんて言われても嬉しくはない。
七十九歳の夫の年齢が手術の上限だとは思う。でも、面会ナシの四ヵ月近くの入院は、認知症にどんな影響を及ぼすのか。
一か八か、天国か地獄か、蓋を開けてみなければわからない。ならば、もう清水の舞台から飛び下りるつもりで……。
そうはいっても…と、また、二転三転し、結局手術は見送ることにした。覗いたカルテには、キーマンは妻、と書かれていた。
私の判断は間違っていたのだろうか?と
未だに迷い続けている。
どうやら“水頭症”によるものではないか、と診断された。手術をすれば、歩き方も尿失禁も認知症の度合も改善されるらしい。しかし水頭症では説明しきれない点もあるから手術しても変化はないかもしれない、とのこと。
でもこのままだと、もっと悪くなるのは目に見えている。
「おれは、手術は嫌だ。怖いし痛いし絶対受けたくない」
そう言い張る夫を
「ちゃんと歩けるようになれば、今まで通りに食事にも行けるし旅行にだって行けるから」と説得し、手術を受ける方向で進むことにした。
ところが……。
今は、コ●ナ渦である。
入院初日は、入院棟入り口で看護師さんと交代し、病棟への立ち入りや面会は一切ナシ、手術に立ち会うこともナシ。家族は自宅待機の形をとり、手術が終わったら病院から知らせる、という。そして手術後2週間ほどは拘束。その後はリハビリ専門病院に転院して、そこで三ヵ月。転院の時に会うだけで、こちらの病院も、面会は一切ナシ、とのこと。
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