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架向28
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「架向……」
ドアがノックされた。
………。
まだ、まだ無理だ。
父さんの顔を見れない
ベッドに潜り込んだ。
「入るよ」
同時にドアが開いて父さんが入ってきた気配がした。
「架向」
布団の上から抱きしめられた。俺にそんな価値無い。
「架向、頭のいいお前なら分かるはずだよ。俺と貴嗣が冷戦状態にあるように見えるか。俺がアイツを嫌っている様にみえるか?俺がお前を愛していない様にみえるか?俺が不幸に見えるか?」
見えないよ。いつも楽しそうにしている。
あんな目にあったのに?
番契約とはそこまで恐ろしいモノなのか。
自分をあんな風に扱ったαの子供を愛おしいと思わされる。父さんは、憎いαと共に過ごさなければならない現実から心を守る為に、無理矢理セロトニンが出されてるのだろう。
そうだ、あの娼館にいたΩも言っていたじゃないか
『いい子にしていれば番が大事にしてくれるの』
そう、ここで、腐ることもせずにニコニコしていれば指名が入って番のαの懐は潤う。そしてその分番のαは優しくなる。
苦しみしか伴わない行為、その為には……幸せだと己に言い聞かせるしか無いのだ。そして、そのうち、それが真実になり淡い笑みを浮かべて『今日は私とどう?』なんて言うようになる。
ルカは……まだ日が浅かった。だから、ストックホルム症候群になってなくてあんな風に俺に突っかかってきたのだろう。
いづれ、あそこにいた他のΩの様に、父さんの様になっていくのか。
「父さん、ルカはどうなったの?」
布団の上からポンポンと慰めるように俺を叩く父さんの手が止まる。
しまった
今じゃない、尋ねるのは今じゃなかった。
無関心だった俺が突然ルカについて質問すれば、父さんとルカを重ねている事位明確だ。
俺なんかが、父さんを傷つけるなんて…
「…コンちゃんの所で、療養中だよ。安心して」
父さんが、再びトントンと叩く
「コンちゃんの所で番解除の新薬がでたから、その治験に参加するって名目で保護しているんだ」
菫さんの…
『か~~~な』
会うたびにニコニコ笑いながら俺の髪の毛をぐしゃぐしゃに混ぜる菫さん。
『陸みたいにイイ男になれよ!陸みたいなダメ男になるなよ!』
会うたびにそんなことを言う菫さん。
『どっち?、父さんはいい男なの?ダメ男なの?』
『陸はね~、いい男だけど…』
あの後、なんて続けてたっけ…
どちらにしろ…ルカのあの状態を見られている。菫さんは俺にもう笑ってくれないかもしれない……。
『架向は上位だろうけど、陸の血を引いているから安心だよ!アレの息子でも傲慢なα様になったりはしない』
ごめん、ごめん、菫さん…
俺は、親父と同じだ。
貴方が嫌ったクズα同様に、猪瀬さんにビッチングを仕掛けていた
『か~~~な』
千葉さんから、もう聞いているよね。
『か~~~な』
もう、俺の髪をぐしゃぐしゃにすることもなくなるのだろうか
「……コンちゃんの所に行ったのは体調がある程度戻ってからだよ。でも…ちゃんと反省できたから、架向はえらい。さすが、俺の息子だ」
父さんが嬉しそうに言った
『こんな事をしでかして、架向、反省はないのか!同じような目に合わないと分からないのか!』
ううん。同じ目に合わなくてもわかったよ。どれだけ酷い事をしてしまったのか。どれだけ傲慢だったのか。
自分じゃなくて…同じような目に合っていた父さんの悲鳴を聞いて。
「……そのうち、謝罪に行きたい」
父さんが鼻をすすった。
「お、大きくなったなぁ、架向……」
「……寝るから、出ていって」
「わかったわかった」
父さんが再び俺を布団ごと抱きしめた。
「大好きだよ、架向」
「…うん」
俺も大好きだよ、こうして抱きしめて、俺が一番大事と言ってくれている父さんが。
俺も大好きだよ、例えその言葉がストックホルム症候群から出てきている物でも。
ドアがノックされた。
………。
まだ、まだ無理だ。
父さんの顔を見れない
ベッドに潜り込んだ。
「入るよ」
同時にドアが開いて父さんが入ってきた気配がした。
「架向」
布団の上から抱きしめられた。俺にそんな価値無い。
「架向、頭のいいお前なら分かるはずだよ。俺と貴嗣が冷戦状態にあるように見えるか。俺がアイツを嫌っている様にみえるか?俺がお前を愛していない様にみえるか?俺が不幸に見えるか?」
見えないよ。いつも楽しそうにしている。
あんな目にあったのに?
番契約とはそこまで恐ろしいモノなのか。
自分をあんな風に扱ったαの子供を愛おしいと思わされる。父さんは、憎いαと共に過ごさなければならない現実から心を守る為に、無理矢理セロトニンが出されてるのだろう。
そうだ、あの娼館にいたΩも言っていたじゃないか
『いい子にしていれば番が大事にしてくれるの』
そう、ここで、腐ることもせずにニコニコしていれば指名が入って番のαの懐は潤う。そしてその分番のαは優しくなる。
苦しみしか伴わない行為、その為には……幸せだと己に言い聞かせるしか無いのだ。そして、そのうち、それが真実になり淡い笑みを浮かべて『今日は私とどう?』なんて言うようになる。
ルカは……まだ日が浅かった。だから、ストックホルム症候群になってなくてあんな風に俺に突っかかってきたのだろう。
いづれ、あそこにいた他のΩの様に、父さんの様になっていくのか。
「父さん、ルカはどうなったの?」
布団の上からポンポンと慰めるように俺を叩く父さんの手が止まる。
しまった
今じゃない、尋ねるのは今じゃなかった。
無関心だった俺が突然ルカについて質問すれば、父さんとルカを重ねている事位明確だ。
俺なんかが、父さんを傷つけるなんて…
「…コンちゃんの所で、療養中だよ。安心して」
父さんが、再びトントンと叩く
「コンちゃんの所で番解除の新薬がでたから、その治験に参加するって名目で保護しているんだ」
菫さんの…
『か~~~な』
会うたびにニコニコ笑いながら俺の髪の毛をぐしゃぐしゃに混ぜる菫さん。
『陸みたいにイイ男になれよ!陸みたいなダメ男になるなよ!』
会うたびにそんなことを言う菫さん。
『どっち?、父さんはいい男なの?ダメ男なの?』
『陸はね~、いい男だけど…』
あの後、なんて続けてたっけ…
どちらにしろ…ルカのあの状態を見られている。菫さんは俺にもう笑ってくれないかもしれない……。
『架向は上位だろうけど、陸の血を引いているから安心だよ!アレの息子でも傲慢なα様になったりはしない』
ごめん、ごめん、菫さん…
俺は、親父と同じだ。
貴方が嫌ったクズα同様に、猪瀬さんにビッチングを仕掛けていた
『か~~~な』
千葉さんから、もう聞いているよね。
『か~~~な』
もう、俺の髪をぐしゃぐしゃにすることもなくなるのだろうか
「……コンちゃんの所に行ったのは体調がある程度戻ってからだよ。でも…ちゃんと反省できたから、架向はえらい。さすが、俺の息子だ」
父さんが嬉しそうに言った
『こんな事をしでかして、架向、反省はないのか!同じような目に合わないと分からないのか!』
ううん。同じ目に合わなくてもわかったよ。どれだけ酷い事をしてしまったのか。どれだけ傲慢だったのか。
自分じゃなくて…同じような目に合っていた父さんの悲鳴を聞いて。
「……そのうち、謝罪に行きたい」
父さんが鼻をすすった。
「お、大きくなったなぁ、架向……」
「……寝るから、出ていって」
「わかったわかった」
父さんが再び俺を布団ごと抱きしめた。
「大好きだよ、架向」
「…うん」
俺も大好きだよ、こうして抱きしめて、俺が一番大事と言ってくれている父さんが。
俺も大好きだよ、例えその言葉がストックホルム症候群から出てきている物でも。
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