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京極たちの会社に行った。受付は無人機で行うものだった。入館拒否されるかと思ったが、俺は顔認証登録はされているらしく問題なくゲートをパスできた。
エレベーターも問題なく使えた。どこまで無用心なんだか。京極の秘書室の前に行き、用件を述べると繋いでくれた。
ドアを開けた直後に京極が俺に抱きついてきた。番以外に触られてぞわりと鳥肌が立った。
陸陸陸と京極が俺の名前を繰り返す。
「ああ…イイ匂い…」
……………
さっさと用件を伝えてこの場を去らねば。ヒートが近い今、京極の俺に対する情欲がとても不快に感じる。
俺の番、その言葉に京極が反応する。
何を今更……
あの狂ったパーティーがあって以来、俺はずっと猪瀬の番だ。
ああ、そうか、猪瀬はマンションを出る前に、必ずシャワーを浴びて俺のフェロモンを落としていた。そのせいで、京極はあまり実感を持っていなかったのかもしれない。
けれど!
『イイ匂い』だと?ふざけるな!
襟元を広げて噛み跡を京極に見せつけてやった。
俺はお前のモノなんかじゃねぇんだよ!
「猪瀬ー!」
京極がカッとなって猪瀬に威圧をぶつけていた。猪瀬が血を吐いた。腹心の部下になんてことを!
なにより、猪瀬が全く抵抗をしない。京極の憎しみに合わせてそのまま逝こうとしている。
ふざけんな!お前だけこの地獄から逃げ出すのか?
「ついて逝くからな!」
猪瀬を引き戻すために俺のフェロモンでやつを包み込んだ。意識がこちらに向いてくるのを感じる。…戻ってきた。京極から猪瀬を守るように立ち塞がった。
「陸、何故?猪瀬は陸の事を想ってなどいない。陸のヒートが近いことすら気が付かなかったんだぞ!私の方が……」
そうだな。猪瀬は俺のヒートのサインに全く気がつかなかった。俺に対する興味が本当に薄いのだろう。だが、だから何だというのだろう。気がつかないことへの暴力。気がついたことで行った暴力?俺への負担が大きいのは京極の暴力だ。
「私はただ、陸がヒートを私以外と過ごすなんて耐えられなかっただけだ!なのに、なのに!酷いよ陸!私が君をどれだけ欲しているか知っているのにこうして宣言しにくるなんて!」
京極が泣きそうな顔で傷つけられたと主張する。何をトチ狂ったことを言っているのだ。
酷いだと?
番契約を済ませたΩが一人で過ごさなければならない状況をつくることの方がよほどむごい。
「俺は当然の権利を主張しに来ただけだ。 ヒートを俺の番と過ごす。それだけだ」
「違う違う!陸の番は猪瀬じゃない、私だ!陸は私の為にΩになったんだ!だから私の番だ!」
カッとなった。誰がお前なんかのために?とっさに口に出してしまった。
「Ωになったんじゃない!させられたんだ!お前にビッチングされてな!!」
人の顔色はここまで変わるものなのか?京極が一気に青ざめた。
「あ…………り、陸……そ、そんなのは都市伝説だ」
…こんな顔色で口に出されたその言葉を信じられるバカがどこに居ると言うのだろうか?
「青島。自分が変化したからといって人のせいにするな。そんな事が可能な訳が無いだろう」
俺のフェロモンから少し解放された猪瀬が言う
「京極ならば可能だ」
「エビデンスはあるのか」
…エビデンス?
そんなものはないけれど。いや、もしかしたら定期的に俺の血液を検査の為に受け取っていたコンこんちゃんならば、持っているかもしれない。けれど、そんなことを言うわけにもいかない。
「根拠も無く貴嗣様を攻めるな。言われない八つ当たりなど許されない。青島が後天性Ωだっただけだ」
ふざけたことを。人をビッチングしておきながらそんな風に言うのか?俺が悪いと、罪を俺になすりつけるのか?
「俺はお前らを許さない。取り敢えず、目的は達っした。猪瀬もこんな体調じゃ渡米など無理だろ。ヒート休暇がもぎ取れたな。大人しく……俺の竿にでもなってろ」
「青島!」
「陸!」
京極の顔が絶望に染まる。アルファの執着は強い。番と思っている俺がほかの男のペニスを受け入れたいと言っているのだ。
傷つきもするだろう。
いい気味だ。そう思うのにあまり心は晴れない。
京極が再び猪瀬を攻撃する。お前などいらない。その告知だけで猪瀬は自分の心臓を止めようとしている。
番同士の結びつきが強い場合、片方が死ねば生き残ったほうも不思議と心臓が止まる。猪瀬は京極の番などではない。だがそれに等しいくらい京極に心酔しているのだ。
俺のフェロモンで猪瀬を包み込む。何とか、猪瀬を留められた。そのまま腕を取り言う。
「歩け」
猪瀬がノロノロと足を動かした。
…俺がやっていることはこいつらとどう違うのだろう
十数年仕えた京極、要らないと言われただけで生命活動を終えようとする、それ程の歴史を踏みにじって無理矢理俺を取らせるこの行為。
けれど……
「……帰ろう、俺たちの巣に帰ろう。」
守るから。新しくお前の居場所を作るから。それで許してはくれないか。
エレベーターも問題なく使えた。どこまで無用心なんだか。京極の秘書室の前に行き、用件を述べると繋いでくれた。
ドアを開けた直後に京極が俺に抱きついてきた。番以外に触られてぞわりと鳥肌が立った。
陸陸陸と京極が俺の名前を繰り返す。
「ああ…イイ匂い…」
……………
さっさと用件を伝えてこの場を去らねば。ヒートが近い今、京極の俺に対する情欲がとても不快に感じる。
俺の番、その言葉に京極が反応する。
何を今更……
あの狂ったパーティーがあって以来、俺はずっと猪瀬の番だ。
ああ、そうか、猪瀬はマンションを出る前に、必ずシャワーを浴びて俺のフェロモンを落としていた。そのせいで、京極はあまり実感を持っていなかったのかもしれない。
けれど!
『イイ匂い』だと?ふざけるな!
襟元を広げて噛み跡を京極に見せつけてやった。
俺はお前のモノなんかじゃねぇんだよ!
「猪瀬ー!」
京極がカッとなって猪瀬に威圧をぶつけていた。猪瀬が血を吐いた。腹心の部下になんてことを!
なにより、猪瀬が全く抵抗をしない。京極の憎しみに合わせてそのまま逝こうとしている。
ふざけんな!お前だけこの地獄から逃げ出すのか?
「ついて逝くからな!」
猪瀬を引き戻すために俺のフェロモンでやつを包み込んだ。意識がこちらに向いてくるのを感じる。…戻ってきた。京極から猪瀬を守るように立ち塞がった。
「陸、何故?猪瀬は陸の事を想ってなどいない。陸のヒートが近いことすら気が付かなかったんだぞ!私の方が……」
そうだな。猪瀬は俺のヒートのサインに全く気がつかなかった。俺に対する興味が本当に薄いのだろう。だが、だから何だというのだろう。気がつかないことへの暴力。気がついたことで行った暴力?俺への負担が大きいのは京極の暴力だ。
「私はただ、陸がヒートを私以外と過ごすなんて耐えられなかっただけだ!なのに、なのに!酷いよ陸!私が君をどれだけ欲しているか知っているのにこうして宣言しにくるなんて!」
京極が泣きそうな顔で傷つけられたと主張する。何をトチ狂ったことを言っているのだ。
酷いだと?
番契約を済ませたΩが一人で過ごさなければならない状況をつくることの方がよほどむごい。
「俺は当然の権利を主張しに来ただけだ。 ヒートを俺の番と過ごす。それだけだ」
「違う違う!陸の番は猪瀬じゃない、私だ!陸は私の為にΩになったんだ!だから私の番だ!」
カッとなった。誰がお前なんかのために?とっさに口に出してしまった。
「Ωになったんじゃない!させられたんだ!お前にビッチングされてな!!」
人の顔色はここまで変わるものなのか?京極が一気に青ざめた。
「あ…………り、陸……そ、そんなのは都市伝説だ」
…こんな顔色で口に出されたその言葉を信じられるバカがどこに居ると言うのだろうか?
「青島。自分が変化したからといって人のせいにするな。そんな事が可能な訳が無いだろう」
俺のフェロモンから少し解放された猪瀬が言う
「京極ならば可能だ」
「エビデンスはあるのか」
…エビデンス?
そんなものはないけれど。いや、もしかしたら定期的に俺の血液を検査の為に受け取っていたコンこんちゃんならば、持っているかもしれない。けれど、そんなことを言うわけにもいかない。
「根拠も無く貴嗣様を攻めるな。言われない八つ当たりなど許されない。青島が後天性Ωだっただけだ」
ふざけたことを。人をビッチングしておきながらそんな風に言うのか?俺が悪いと、罪を俺になすりつけるのか?
「俺はお前らを許さない。取り敢えず、目的は達っした。猪瀬もこんな体調じゃ渡米など無理だろ。ヒート休暇がもぎ取れたな。大人しく……俺の竿にでもなってろ」
「青島!」
「陸!」
京極の顔が絶望に染まる。アルファの執着は強い。番と思っている俺がほかの男のペニスを受け入れたいと言っているのだ。
傷つきもするだろう。
いい気味だ。そう思うのにあまり心は晴れない。
京極が再び猪瀬を攻撃する。お前などいらない。その告知だけで猪瀬は自分の心臓を止めようとしている。
番同士の結びつきが強い場合、片方が死ねば生き残ったほうも不思議と心臓が止まる。猪瀬は京極の番などではない。だがそれに等しいくらい京極に心酔しているのだ。
俺のフェロモンで猪瀬を包み込む。何とか、猪瀬を留められた。そのまま腕を取り言う。
「歩け」
猪瀬がノロノロと足を動かした。
…俺がやっていることはこいつらとどう違うのだろう
十数年仕えた京極、要らないと言われただけで生命活動を終えようとする、それ程の歴史を踏みにじって無理矢理俺を取らせるこの行為。
けれど……
「……帰ろう、俺たちの巣に帰ろう。」
守るから。新しくお前の居場所を作るから。それで許してはくれないか。
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