114 / 221
112
しおりを挟む
目が覚めると病院にいた
兄が俺の手を握っていた
「陸、目が覚めたのか。良かった…」
むしろ兄の方が……兄の目は腫れ上がっていて多分たくさん心配をかけた
無意識に首に手が伸びて、硬さで気が付いた。大丈夫、首輪はついている
「俺はそんなに頼りないか」
兄が責めるように俺を見た
ピッチングされたあの日、大学までついてきてほしいと言わなかったことを言っているのだろう、今回の事、予想がついていたなら何故頼らなかった、と。
けれど、兄がいたところで大して事態は変わらなかったと思う。むしろ蓮兄さんが大変なことになっていたはずだ。京極はそれだけの力を持っている。俺はできる範囲で最善を尽くしたはずだ
「兄さんは力になってくれたよ。この首輪をちゃんと俺に届けてくれた。だから俺は まだ未契約のΩがいれている。京極と番っていたら、 こんな風に過ごしたりはできなかったよ」
「……その首輪、随分ととお前にぴったりだな」
「うん、コンちゃんが俺の為に選んでくれたんだ。本当は 俺がこんちゃんに首輪をプレゼントしたかったのにな……」
「ソレが用意されたのはだいぶ前だ!こんな事になると分かっていたなら、こんなの送るよりももっと他の対応が出来たはずだろう!コンちゃんとやらは何を考えてるだ!」
『陸、これあげる。ロックを設定したら、おにいさんの所に預けておいてね!』
帝都大合格祝い会の時に渡された首輪。しかも二つ。
『いやいやコンちゃん!俺α。君に贈る立場!』
2つとも有名メーカーのだ。けれど……
『コンちゃん、コレ…』
賛否両論あった……いや、発売当初から非難が集中した首輪を持ち上げると、
『安心感やつけ心地は悪く無いんだけどね。ウケ狙いだよ。本命はこっちだから。』
そう言ってもう一つの方を指指した。
…………でも、曖昧な笑顔。コンちゃんがしているネックガードは俺が手に持ってるコレなのだろう。
β達がひいた首輪、他の者の番になるくらいなら死んでしまえ、そんなαの妄執を体現したような機能の首輪に嫌悪感を抱く。
思わず顔をしかめた俺に コンちゃんがふふっと笑った
『陸らしいね。でもね、意外に思うかもしれないけれどΩ受けはいいのよ。コイツとだけは死んでも番いたくないってΩが、自ら買うこともあるんだから』
『いや、でも、番契約の解除だって大変だけど出来るじゃないか!こんな選択は間違っている!』
『そうだね。でも世の中はそんなにΩに優しくない。だったら破れかぶれでも一矢報いたいじゃん?』
納得できなかった。こんなネックガードをコンちゃんがつけなきゃならない社会にも、コンちゃんがコレで安心を得ていることも。
『ねぇ、俺にネックガードプレゼントさせて?』
最高級品を送ろう、最大の防犯機能がついたネックガードを。分かってる、コンちゃんは裕福だ。俺が贈りたいと思ったネックガードなんて簡単に買える、だから、このネックガードはソレを越える価値がコンちゃんにとってあるのだ。
でも、納得なんてできない。
最高級品を贈ろう。
ちょっと、いや、かなり嫌だけど蓮兄さんにマーキングもお願いして。本当は俺がニオイづけしたネックガードを渡したいけれど底辺αのマーキングなんて上位には無意味だから。俺の想いよりもコンちゃんの安寧が大事だから。
だから、コンちゃん。
こんなネックガードに価値なんて見出さないで……。
その頃の俺は、傲慢だったんだ。下位とはいえαだったからΩの恐怖を分かって無かった。
Ωになって京極に狙われて初めてコンちゃんの恐怖が、このネックガードを頼ってしまう気持ちが分かった。
Ωにはこんな方法しか残ってないのだ…
「コンちゃんは最大限の事をしてくれたよ。俺が……愚かだっただけで。」
兄さんが口を開きかけて、そしてやめた。
「…………」
兄が俺の手を握っていた
「陸、目が覚めたのか。良かった…」
むしろ兄の方が……兄の目は腫れ上がっていて多分たくさん心配をかけた
無意識に首に手が伸びて、硬さで気が付いた。大丈夫、首輪はついている
「俺はそんなに頼りないか」
兄が責めるように俺を見た
ピッチングされたあの日、大学までついてきてほしいと言わなかったことを言っているのだろう、今回の事、予想がついていたなら何故頼らなかった、と。
けれど、兄がいたところで大して事態は変わらなかったと思う。むしろ蓮兄さんが大変なことになっていたはずだ。京極はそれだけの力を持っている。俺はできる範囲で最善を尽くしたはずだ
「兄さんは力になってくれたよ。この首輪をちゃんと俺に届けてくれた。だから俺は まだ未契約のΩがいれている。京極と番っていたら、 こんな風に過ごしたりはできなかったよ」
「……その首輪、随分ととお前にぴったりだな」
「うん、コンちゃんが俺の為に選んでくれたんだ。本当は 俺がこんちゃんに首輪をプレゼントしたかったのにな……」
「ソレが用意されたのはだいぶ前だ!こんな事になると分かっていたなら、こんなの送るよりももっと他の対応が出来たはずだろう!コンちゃんとやらは何を考えてるだ!」
『陸、これあげる。ロックを設定したら、おにいさんの所に預けておいてね!』
帝都大合格祝い会の時に渡された首輪。しかも二つ。
『いやいやコンちゃん!俺α。君に贈る立場!』
2つとも有名メーカーのだ。けれど……
『コンちゃん、コレ…』
賛否両論あった……いや、発売当初から非難が集中した首輪を持ち上げると、
『安心感やつけ心地は悪く無いんだけどね。ウケ狙いだよ。本命はこっちだから。』
そう言ってもう一つの方を指指した。
…………でも、曖昧な笑顔。コンちゃんがしているネックガードは俺が手に持ってるコレなのだろう。
β達がひいた首輪、他の者の番になるくらいなら死んでしまえ、そんなαの妄執を体現したような機能の首輪に嫌悪感を抱く。
思わず顔をしかめた俺に コンちゃんがふふっと笑った
『陸らしいね。でもね、意外に思うかもしれないけれどΩ受けはいいのよ。コイツとだけは死んでも番いたくないってΩが、自ら買うこともあるんだから』
『いや、でも、番契約の解除だって大変だけど出来るじゃないか!こんな選択は間違っている!』
『そうだね。でも世の中はそんなにΩに優しくない。だったら破れかぶれでも一矢報いたいじゃん?』
納得できなかった。こんなネックガードをコンちゃんがつけなきゃならない社会にも、コンちゃんがコレで安心を得ていることも。
『ねぇ、俺にネックガードプレゼントさせて?』
最高級品を送ろう、最大の防犯機能がついたネックガードを。分かってる、コンちゃんは裕福だ。俺が贈りたいと思ったネックガードなんて簡単に買える、だから、このネックガードはソレを越える価値がコンちゃんにとってあるのだ。
でも、納得なんてできない。
最高級品を贈ろう。
ちょっと、いや、かなり嫌だけど蓮兄さんにマーキングもお願いして。本当は俺がニオイづけしたネックガードを渡したいけれど底辺αのマーキングなんて上位には無意味だから。俺の想いよりもコンちゃんの安寧が大事だから。
だから、コンちゃん。
こんなネックガードに価値なんて見出さないで……。
その頃の俺は、傲慢だったんだ。下位とはいえαだったからΩの恐怖を分かって無かった。
Ωになって京極に狙われて初めてコンちゃんの恐怖が、このネックガードを頼ってしまう気持ちが分かった。
Ωにはこんな方法しか残ってないのだ…
「コンちゃんは最大限の事をしてくれたよ。俺が……愚かだっただけで。」
兄さんが口を開きかけて、そしてやめた。
「…………」
81
お気に入りに追加
1,481
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる