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京極に、熱があるのがバレたかもしれない。
……腹がズクリとうずいた。
もう、時間が無い。

俺のΩ化は止まらない。ヤツを避けていた頃ですら、試験紙のパラメーターは変化していた。
ならば………
ヤツに俺の全てをヤル必要はない。
今度こそ、ヤツがこだわるモノを捨ててやる。

「陸……」
兄さんの寝顔に、涙の跡。
いつもいつも心配をかける弟でごめん。
酔い潰れた兄を起こさないように部屋を出た。
この後の馬鹿げた行い、酒の力でも借りないと難しかった。一人で呑んだくれていると兄が参入してくれた。
明日、兄は二日酔いで会社すら休むだろう。この後の事を考えると、それくらいのアリバイがあったほうがいい。

監視者に見つからないように変装して家を出る。ずっと兄の家と大学の往復のみだったから、監視者も気が緩んでいるようで、見つからずにすんだ。熱が京極にバレた以上、数日以内に監視はより厳重になるだろう。今日がラストチャンスだ。
そのまま目的地へ移動する。

いた。
目的の男。
メン地下の男。アーモンドアイのあの娘にたちんぼをさせているあの男。
この男なら地獄に落ちようと俺の良心は傷まない、俺は目的を敢行できる。

本当は誰でも良かった。貞操を失わせてくれる相手なんて誰でもよかった。
あの日、新大久保に行ったあの日、俺は犠牲者を、生け贄を探しにいったのだ。
誰でも良かった。
京極が俺を狙っているのならば、俺がコンちゃんを想った時の京極のあの冷たい瞳は俺ではなくコンちゃんへ向けられていたのだ。敵、と見ているのだ。そして、それがどれだけ苛烈かは……宮下が今、帝都大にいない事で証明している。彼は転学した。
コンちゃんにそんな嫌な想いをさせたくない。コンちゃんは俺を守ろうとしてくれた。その結果、京極からの非道な仕打ちに合うなんて駄目だ。
京極は俺のお初を奪った女を許しはしないだろうから。プラトニックを貫いたコンちゃんへの憎みよりもその女への憎悪の方が大きくなるから、そうしてコンちゃんを守るつもりだった。
けれど……
俺が声をかけるたちんぼを横取りしていく監視者の必死さに不安になった。京極の憎悪が桁外れな可能性に。コンちゃんを守りたい。けれど、無関係な彼女達を利用してもいいのか。こんな所に立っている位だ。ある程度の危険は覚悟の上だろう?けれど……新大久保の居場所を奪う程度では済まされないのかもしれない。
躊躇っていると、他のコに声をかけられた。曖昧に返事をしてる間に何故かホテルに入ってしまった。
話していると、凄く優しいコだと分かった。本心から俺を慰めてくれようとしている。
あのαがどんな行いをするのか想像もつかないのに、こんなコを利用していいのか。
迷いながら話をしていると火災報知器の音が鳴り響いた。
そこまでして、そこまでしてでも、俺を止めなければならない位な事らしい。
ヤツの執着は異常だ。このコとやったらこの優しいコは無事ではいられない。分かってて動ける程、利己主義にはなれなかった。だから、ホテルを出た。
けれど……。


『鼻が腐り落ちそうな位に臭い。ヒートになってもαにはヤられんだろう。だが、ヒートにつられるのはαだけじゃない。寧ろそのマーキングが伝わらないβにこそ注意をしろよ』

『陸がね、今まで努力してきた事を捨ててでも、カフェを経営したいというならソレはソレで良いの。陸が選んだなら良いの。小さなカフェでケーキを作るが好きなら、そんな人生も有りだと思う。けれど、ソレがバースによる判断なら別!αであってもΩであってもとった選択を陸にはしてほしいの!』
コンちゃん、君らしい言葉だ。でも、人はバースに引きずられる。君みたいに強くありたいけれど、あれないんだ。
せめて君だけは、君らしくあってほしい。

『陸、陸は…………私が好き、か?』
躊躇いながら尋ねてきた京極。あの頃…あの頃は尊敬してましたよ。学生でありながら京極グループで働いていて。
『行かないで……』図書館で合った時、夢のなかですら腕を伸ばそうとして伸ばさなかった貴方の人を思う優しさに。俺は無邪気に兄を傷つけたけれど、諦めるほうを選んだ貴方を、尊敬していましたよ。

けれど……。










~~~~~~~~~~~~~~~~~

作者は、受けの処女性とか貞操とかにこだわりはありません。
両思いになるまでは、受けも攻めも肉体的に身綺麗である必要はないと思ってます。(両思いになってからのはNG)
ただ、執着攻めが、両思いになる前に精神的に他の人を見るのは浮気認定とし、NGです。

……何が言いたいかと言うと。
次話から、陸が京極様以外とえちえちします。


苦手な方は、話の冒頭に注意書きするので、その話は飛ばしていただければと思います
(でも、戻ってきて下さいね、読者様~~)
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