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90ー猪瀬

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狂王が二人……
迷う俺を千葉は自宅に誘った。
そこで見たのは舌を切り取られ、耳半分を落とされたコンちゃんに似ているという立ちんぼだった。
何故?
『目は彼女だ。だが声は違う。』
コンちゃんとやらに会った事もないのに、そんな事をいう。本能的にわかるといった。抱いている時の不協和音が不快だから切り落としたと言った。
『身長も違う。コイツの方が高ければその分を切り落としたんだかな』
その言葉に彼女がカタカタと震えた。声が違うといって舌を切り落とすような狂人だ。説得力がありすぎる。

青島が似てると言ったのは身長とか、全体的な雰囲気かも知れないじゃないか。千葉が欲するのがコンちゃんと確定した訳ではないだろう。
『いいや。京極の依頼でコンちゃんを探している時、痕跡を辿れない事に焦燥感があった。意外にも、俺は京極の力になりたいと本気で思っていたんだなと、筋違な事を考えていたが、この女の目を見て分かった。』

千葉が貴嗣様に忠誠を誓っているわけではない事くらい知っている。貴嗣様の下で働く方が有益だから仕えている。本能を、上位αの本能を暴き出す程の運命と貴嗣様とでは番をとるであろう。歴史上のあのαのように。

貴嗣様は千葉にも依頼しつつも、他の者にも調べさせている。小柄でショートカットでアーモンドアイの知能指数の高い未婚Ωを。

『何故、カツラなんだ?』
『髪質が違うからな。スキンヘッドにさせようかとも思ったが、後頭部の形状が違うのが明確だ』
悍ましい、悍ましい嗤い。背中までのウィッグをつけた立ちんぼは意味が分からずへらりと笑う。
『身長もさ、時間がかかるだろう?』
美容整形で身長を伸ばす方法ぐらいは知っている。骨を折り、機械を入れて固定しながら骨を修復、延長する。何度も繰り返すことで10センチ程度は半年程度でのびる。だが、その必要はないと、そこまで時間かけるつもりはないと千葉は言っているのだ。だから、待てと。

現状での最善の方法は分かっている。
コンちゃんが見つかる前に貴嗣様が青島を番にする。精神が安定した貴嗣様であれば、千葉と番契約済みのコンちゃんを赦さざるえないと判断するだろう

千葉は、何が最善か分かっているなら黙認しろと言っているのだ。
ヤツとて、貴嗣様を敵にするのは厳しいとわかっている。本来のヤツであれば、俺の前で執着を見せるという実態は犯さない。運命への糸口を見つけたという歓喜が理性を凌駕した。

千葉や貴嗣様といった上等なαですら失態を誘われる番という存在…
この女の状態を俺に見せて、自分がどれだけ狂っているかを千葉は俺に見せつけたのだ。
貴嗣様に伝わっている誤情報に目を瞑れと。千葉がこのたちんぼを囲っているという話を貴嗣様の耳に入る前に握り潰せと言っているのだ。時間はかけないからと。


ああ、もう!
青島!
さっさとΩになってくれ!







~~~~~~~~~~~~~~~~
いや~身長を伸ばす整形手術のことを初めて知ったときはビックリしました。激痛ですよ、激痛。
骨折った状態で足を引っ張り続けるの。マジ?痛みに弱い作者、注射さえ怖い作者としては悲鳴もんです。
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