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今日はフライボートだそうだ。明日はシャワークライミング、毎日遊んでばっかりだな。

フライボート、猪瀬さん達もやったことがないらしい。たまにはしくじる所も見てみたいな……。
そんな事を考えていたのが駄目だったのか……俺以外、皆乗りこなしているんだけど!?
上位αのポテンシャルをほんとに見せつけられる。
スタートは皆同じだったんだけどなぁ…
足に固定するブーツを履いただけで皆はしゃいでさ。水中に飛び込む感じも爽快で皆で笑って。ブーツから水を吹き出して、足から力が発生するんだけど、それがすごい感覚で
水の中から飛び上がるときにバランスを崩して水に落ちちゃうこともあって、皆でケタケタ笑ってたのに……
何故…俺だけ立てないのだろうか…

猪瀬さん達の水上を滑るように進みながら思い通りの方向に移動していく姿は、まるで水上スケートを楽しんでいるようだった。
俺だけがべしゃんべしゃんと水面に叩きつけられる。明日には痣だらけになっていそうだ。水面って意外と硬いのだ
「陸、ブーツから噴出される水の勢いに合わせて、バランスを取れ。下手に逆らうな。自分の体の感覚をより鋭く保って微調整すればできるはずだ。」
いや、それができていたら 1人 水中に浮かんでいません。
「俺、ちょっとだけ休憩してもいいですか?」
「では私も休憩しよう」
いやいや、高度を競い合おうとか言ってるのに京極様が抜けるのは駄目でしょう
「でも、皆さんが技術を競い合う所も見てみたいんですよね。戦隊ヒーローみたいでかっこよさそう。京極様がいないと千葉さんが断トツかな。凄く高く飛べそう……」

「……待ってろ。誰よりも高く飛んでやる」

あ、いや、高く飛んで下さいとお願いしたわけでは……

けど、競い合う姿は本当に圧巻だった!すごいスピードで水上を飛び跳ねていて、まるで空中を舞っているようだった。自由自在にフライボードを操っている京極様の姿に、驚きと尊敬と……コレが俺の恋敵なのかと打ちのめされた。
コンちゃん……。

急に京極様がバランスを崩して海面に落下する。勝負がついたようだった。
千葉さん、僅差で京極様、猪瀬さん……と続きラストが宮下だった。うん、安定の宮下。

「陸!」
大声で呼びかけられた。
珍しい、京極様が苛ついている。ゲームで負けたくらいで不機嫌になる方ではないと思ってたんだけどな。

「休憩は終わりだ!こい!」
「あ、いや、俺はフライボートはむかないみたいなので……バックフリップとか見ている方が楽しいので。」
出来る人なら楽しいんだろうけど。

「…………ブーツはかないでいいからそのままこっちに来なさい」
「………………」
仕方なく、泳いで暴君京極様の所へ行くと、そのまま姫抱っこされた。
え?ええ?
いやいやいや、俺を抱えてホバリング出来ちゃうってどんな体幹してんの!?
「しっかり捕まっていろ」
空気を切り裂くように進み、高く跳び上がる瞬間は、まるで超人にでもなったような気分だった。同時に落とされたら無傷では済まないということも分かってるので京極様の首にしがみつく。いつの間にか、京極様の機嫌も直っていた。……こんな親切なのに暴君とかいってすみませんでした。一人楽しめていなかった味噌っかすを見捨てず、体感させてくれる優しいさ。風を切って上昇するワクワク感……
数分もすると京極様もタンデムのコツを掴まれたのか更に安定性がました。俺にも周りを見る余裕がうまれてきた。
「…………千葉さん、凄すぎ、かっこよすぎ」
ドルフィンからのバックフリップってどんな神業だよ。
「……陸、やってあげるから足を私の腰に回しなさい。降り落ちるぞ」
遠慮しようとしたけど既に動き始めているので慌てて言われたようにする。まるで赤ん坊の抱っこだな……

ドルフィンは、その名の通りイルカのように水中に潜ったり、水面に飛び上がったりを繰り返す技だ。人を抱えてやることではない!なにせ水中に入るタイミングも京極様任せ、つまりは息継ぎのタイミングが人任せにされるって事。海水を飲んじゃったりと、もはや拷問。からのバク宙。マジに振り落とされたらヤバイ。とにかくしがみついた。
俺には出来ない神業を体験できはしたけど……
京極様……
あなたのホスピタリティは、拷問と紙一重です……
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