8 / 8
蛇足2
しおりを挟む
陸の鳴き声が響く。
奥の奥に自ら私を受け入れて以降、トんでいる。Ωの本能に支配されてこの後の事など記憶に残らないだろう。私の背に自ら腕を回している事も……。
……その方がいいのだろう。
先程の絶望に染まった顔。
全てのものを投げ出したい。逃げ出したい。いっそ狂ってしまえたら。
そう思っているのが伝わってきた。
けれど…残酷にも陸の精神は強い。当人が望んでも壊れる事はない。力を失ったこの瞳も明日には戻る。……私への憎しみを湛えて
私も狂ってきていたのだろう。
発情期以外で陸を抱く事はしなかった。お互いで抜き合うことはしても、陸に配慮をして挿入は避けてきた。それでも、三月に一度の発情期で何とかなっていた。
だが、陸も40後半になり発情期の回数が減った。
番の中に楔を打込みたい、中で果てたい、オスとして求められたい、αのその欲が満たされない時間は気が付かないうち私を狂わせていたようだ。
欲を陸に吐き出して理知が戻ってきた今なら、先程自分の行いが悪手だったと分かる。陸から私を求めてもらう為に、二十年近くかけて築き上げてきた陸の信頼を失ったのだから。
けれど、陸が私の元を去ろうとした事実。いつか戻って来るつもりだったとしても猪瀬と逃げようとしたこと。初めて自ら受け入れたオスと。
許せる訳がない。
猪瀬が上位Ωの器を忘れられない?
そんな訳があるか
猪瀬にはセフレがたんまりいる。その中には、陸ほどではないが上位Ωもいた。無理矢理ラットにさせられてヤった感覚が、他の上位Ωとのセックスよりイイはずがない。
自己評価が低い陸には猪瀬の心情がわからないのだ。番って、ともにいる時間が増えた事で猪瀬は陸に惹かれたのだ。
番契約済みのΩだから、猪瀬と二人で逃げてもセックスしようがないから安心してなくれ?
確かに猪瀬は陸の体を求めたりはしないだろう。ただ人間の欲は限りが無い。そばにいる事が当然になれば次は肉欲だ。
共に暮らしているうちに陸は猪瀬の想いが陸のΩの器に対するものだけではない事に気がつくだろう。二十年もの間、陸の内面に惹かれ続けた。そして、私への忠義の間で苦しむ猪瀬にお人好しの陸は流されるかもしれない。地獄の苦痛を味わうといわれる番契約消滅手術を乗り越えた陸だ。番以外とのセックスによる苦痛も猪瀬の為に耐え抜くかもしれない。
唇を噛む。
思いのたけを乗せた私の抽挿にΩ性に支配された陸が貪欲に応える。
私を搾り取り、干からびるまで吸い取ろうとする。
私だけだ、こうして受け入れられるのは。番以外の精液など、Ωは受け付けないのだから。
猪瀬とのセックスなど拷問のようなものだ。それでも、陸は、絆されてしまったら陸は……
殺してしまおうか、猪瀬を。
快楽に溺れた陸が私に縋り付いてくる。
駄目だ。
こうして自ら身を差し出したのに、その約束すら私が破棄したのであれば、二度と陸は…
そして、架向。今の段階で猪瀬を殺せば架向がどう出るのか。架向まで失えば陸は、私を最も傷つける方法で復讐をしてくる。
架向が猪瀬に惹かれるなど、誤算だった。
それがなければ、陸に対する人質として完璧だったのだが。
陸の生きるよすがとしての架向
陸を殺す役目の猪瀬。
その両輪が私の意図とは別の所へと向おうとしている。
ぐぽ
ここまで奥を陸自ら受け入れたのは私だけ。
涎まみれになりひたすらオスを求める陸をみるのも私だけ
陸……
正気に戻った君は私をどんな目で見るのだろうか。
猪瀬が、性的な期待をせずに陸を求めていたと知ったらどうなるのだろうか。
けれど……陸。猪瀬は君が最も欲しいものを与えられない。私だけが陸に与えられるから、だから、諦念に近いとはいえ私と番ってくれたのだろう?
他に何もいらない、陸さえいれば。
陸が何をしようと、陸が壊れようとも陸を求め続ける。
ここまで陸至上主義の人間など他にいない。
だから、私と番ってくれたのだろう?
どんな私でも、陸にとって私は……
回された番の腕に今だけ救われる。
陸が私を求めている。
明日の事はまた、明日考えよう。
今はただ、久しぶりの番の歓迎をただただ受け入れたい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最後までお読みいただきありがとうございました
救いが全くないなぁ・・・
陸、ほんとに不憫…
あらすじにも書きましたが、こちらの作品は『底辺α…』という作品の続編に近い感じになります。
『底辺α…』に載せようかとも思いましたが、そちらは今、息子編(架向編)を書いている最中でして、同時進行すると、栞の位置がややこしい事になるため、別作品にしました。
元々は架向編にいれる予定でしたので、『底辺α…』の方に、さらりとこのエピソードが載る予定です。作者の実力不足によりうまくいかないかもしれませんが…その中ではここまでバットエンドではない予定です
気がむかれましたら、そちらも読んでいただければ幸いです
とりあえず、一旦は完結で。
失ってしまった陸の信頼を京極はどう取り戻していくか…は悩み中です
感想、エール、栞の移動、イイネ、ありがとうございました!
お陰様で、継続という努力が苦手な私でも完結までいけました
最後までお読みいただきありがとうございました。
奥の奥に自ら私を受け入れて以降、トんでいる。Ωの本能に支配されてこの後の事など記憶に残らないだろう。私の背に自ら腕を回している事も……。
……その方がいいのだろう。
先程の絶望に染まった顔。
全てのものを投げ出したい。逃げ出したい。いっそ狂ってしまえたら。
そう思っているのが伝わってきた。
けれど…残酷にも陸の精神は強い。当人が望んでも壊れる事はない。力を失ったこの瞳も明日には戻る。……私への憎しみを湛えて
私も狂ってきていたのだろう。
発情期以外で陸を抱く事はしなかった。お互いで抜き合うことはしても、陸に配慮をして挿入は避けてきた。それでも、三月に一度の発情期で何とかなっていた。
だが、陸も40後半になり発情期の回数が減った。
番の中に楔を打込みたい、中で果てたい、オスとして求められたい、αのその欲が満たされない時間は気が付かないうち私を狂わせていたようだ。
欲を陸に吐き出して理知が戻ってきた今なら、先程自分の行いが悪手だったと分かる。陸から私を求めてもらう為に、二十年近くかけて築き上げてきた陸の信頼を失ったのだから。
けれど、陸が私の元を去ろうとした事実。いつか戻って来るつもりだったとしても猪瀬と逃げようとしたこと。初めて自ら受け入れたオスと。
許せる訳がない。
猪瀬が上位Ωの器を忘れられない?
そんな訳があるか
猪瀬にはセフレがたんまりいる。その中には、陸ほどではないが上位Ωもいた。無理矢理ラットにさせられてヤった感覚が、他の上位Ωとのセックスよりイイはずがない。
自己評価が低い陸には猪瀬の心情がわからないのだ。番って、ともにいる時間が増えた事で猪瀬は陸に惹かれたのだ。
番契約済みのΩだから、猪瀬と二人で逃げてもセックスしようがないから安心してなくれ?
確かに猪瀬は陸の体を求めたりはしないだろう。ただ人間の欲は限りが無い。そばにいる事が当然になれば次は肉欲だ。
共に暮らしているうちに陸は猪瀬の想いが陸のΩの器に対するものだけではない事に気がつくだろう。二十年もの間、陸の内面に惹かれ続けた。そして、私への忠義の間で苦しむ猪瀬にお人好しの陸は流されるかもしれない。地獄の苦痛を味わうといわれる番契約消滅手術を乗り越えた陸だ。番以外とのセックスによる苦痛も猪瀬の為に耐え抜くかもしれない。
唇を噛む。
思いのたけを乗せた私の抽挿にΩ性に支配された陸が貪欲に応える。
私を搾り取り、干からびるまで吸い取ろうとする。
私だけだ、こうして受け入れられるのは。番以外の精液など、Ωは受け付けないのだから。
猪瀬とのセックスなど拷問のようなものだ。それでも、陸は、絆されてしまったら陸は……
殺してしまおうか、猪瀬を。
快楽に溺れた陸が私に縋り付いてくる。
駄目だ。
こうして自ら身を差し出したのに、その約束すら私が破棄したのであれば、二度と陸は…
そして、架向。今の段階で猪瀬を殺せば架向がどう出るのか。架向まで失えば陸は、私を最も傷つける方法で復讐をしてくる。
架向が猪瀬に惹かれるなど、誤算だった。
それがなければ、陸に対する人質として完璧だったのだが。
陸の生きるよすがとしての架向
陸を殺す役目の猪瀬。
その両輪が私の意図とは別の所へと向おうとしている。
ぐぽ
ここまで奥を陸自ら受け入れたのは私だけ。
涎まみれになりひたすらオスを求める陸をみるのも私だけ
陸……
正気に戻った君は私をどんな目で見るのだろうか。
猪瀬が、性的な期待をせずに陸を求めていたと知ったらどうなるのだろうか。
けれど……陸。猪瀬は君が最も欲しいものを与えられない。私だけが陸に与えられるから、だから、諦念に近いとはいえ私と番ってくれたのだろう?
他に何もいらない、陸さえいれば。
陸が何をしようと、陸が壊れようとも陸を求め続ける。
ここまで陸至上主義の人間など他にいない。
だから、私と番ってくれたのだろう?
どんな私でも、陸にとって私は……
回された番の腕に今だけ救われる。
陸が私を求めている。
明日の事はまた、明日考えよう。
今はただ、久しぶりの番の歓迎をただただ受け入れたい。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最後までお読みいただきありがとうございました
救いが全くないなぁ・・・
陸、ほんとに不憫…
あらすじにも書きましたが、こちらの作品は『底辺α…』という作品の続編に近い感じになります。
『底辺α…』に載せようかとも思いましたが、そちらは今、息子編(架向編)を書いている最中でして、同時進行すると、栞の位置がややこしい事になるため、別作品にしました。
元々は架向編にいれる予定でしたので、『底辺α…』の方に、さらりとこのエピソードが載る予定です。作者の実力不足によりうまくいかないかもしれませんが…その中ではここまでバットエンドではない予定です
気がむかれましたら、そちらも読んでいただければ幸いです
とりあえず、一旦は完結で。
失ってしまった陸の信頼を京極はどう取り戻していくか…は悩み中です
感想、エール、栞の移動、イイネ、ありがとうございました!
お陰様で、継続という努力が苦手な私でも完結までいけました
最後までお読みいただきありがとうございました。
286
お気に入りに追加
152
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
ミルクの出ない牛獣人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「はぁ……」
リュートスは胸に手をおきながら溜息を吐く。服装を変えてなんとか隠してきたものの、五年も片思いを続けていれば膨らみも隠せぬほどになってきた。
最近では同僚に「牛獣人ってベータでもこんなに胸でかいのか?」と聞かれてしまうほど。周りに比較対象がいないのをいいことに「ああ大変なんだ」と流したが、年中胸が張っている牛獣人などほとんどいないだろう。そもそもリュートスのように成体になってもベータでいる者自体が稀だ。
通常、牛獣人は群れで生活するため、単独で王都に出てくることはほぼない。あっても買い出し程度で棲み着くことはない。そんな種族である牛獣人のリュートスが王都にいる理由はベータであることと関係していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
パラレルワールドの陸でしたか、パラレルワールドの陸、なんでそんな事しちゃったのよー!やっぱり陸は陸?本編の陸の方が京極様の扱いが上手なんですね
と言っても本編の陸もまあまあかわいそうですけど🤭
完結おめでとうございます🎉
ねこ三毛様
いつもありがとうございます。
皆様のお力でなんとか完結までもっていけました!
書きながら思ったのは、やっぱり作者は受け視点が描きやすいんだなぁと。本編もこっちも陸視点はサクサク描けたのに、京極視点はかなり苦戦しました…
最終話までお待ちいただきありがとうございました!
京極…凄いね😅陸の何もかも知り尽くしている!
もう…あれだね!?京極に惚れられた瞬間から陸の運命はバッドエンドなんだ💧必死に抵抗したけど。バッドエンドってタグもあるから頭の中では理解していても…ついつい『あ"ー!陸!もう諦めて惚れちゃえ!!』って思ってしまう😅のです。京極が一応、常に陸のこと慮って行動?してるので……そう思ってしまうですね💦
京極の様にめちゃ一途な奴って全人口の数パーセントなんじゃないʕʘ‿ʘʔって思うぐらい…なかなか巡り会えない人種かなぁ😅と、感じるので京極を贔屓目で見てしまう٩( ᐛ )و
nyathu30様
すみません、返信が漏れていました。申し訳ございません!
αポリスさんを開いたときに『N』マークついていないと寂しいですよね。
すみませんでした!!
『京極に惚れられた瞬間から陸の運命はバッドエンド』
いいえ、コンちゃんの忠告を守らず図書館に行ってしまった時点で、陸にとってはバットエンド…かなぁ??
疑問形なのは私もnyathu30さん同様に、めちゃ一途な人ってなかなか巡り会えないと思うのです
そして陸は自分のことを、何にもおいて自分を一番に思ってくれる人を求めていました。残念ながらコンちゃんは陸を大事にしたけれど、優先順位は2番目。京極は自分の命よりも陸を優先する人です。なので、なのでコンちゃんと陸がうまくいったとしても幸せではあるけれど、どこかしらに満たされないものがあったのでは??とも思います
京極は陸の夢の生活の為に身を粉にして働いていますが、コンちゃんだったら陸に妥協をさせていたでしょう。
その辺、京極はホントに一途、なんですけどね…
蛇足、お付き合いいただきありがとうございます!
ギャ〜〜!!なぬ!なぬ!!終わっちゃうのʕʘ‿ʘʔ蛇足、楽しみにしてます♪♪
うーむ🤔陸は幸せにはなれないのね🥲でも…浮気症のバカと番うよりはマシだと、何処かで諦めて非道の京極の少しは?欠片ぐらい?の良さを見つけて…また、一から頑張って欲しいな٩( 'ω' )وだが!しかし、頑張った結果がコレだから慰めの言葉が浮かばないです💦現実に近い世界観だと思ってます😅
そうですね。ヘテロである陸にとって無理矢理なんだもんね💧京極の罪は重いね。でも…彼は罪意識が無い気がするけど😅気のせいよねʕʘ‿ʘʔ
nyathu30様。
感想ありがとうございます。
はい。蛇足で終わります。そして蛇足もバットエンド……。
陸は、京極をそれなりに好きで、一緒にいる理由も京極が陸に一途だからです。どんな事が起きようともぶっちぎりで陸を取る。幼いころ、家族に大切にされなかった陸にとって、何をしても自分に執着し続ける京極は特別です。
……歪んだ関係だなぁ。
陸がもう少し男に組み敷かれる事への嫌悪(プライド?)がなければもう少し単純な話になるんですけどね……。どうしても、友達とか家族要素というか性的な意味がない好きと尊敬なんですよね……
因みに、京極は陸が手に入るなら何でもやるαです。そこには良心の呵責などはありません。ひたすら陸陸陸の世界です。
では、あと少し、お付き合いいただければ幸いです。