マリスセイバー ー精神の行き着く先にー

ジャミアの試練２

　「（そうだよ。町長の屋敷に進入して、ただですむわけないんだ…）」

　「こりゃ！たまげたな！！こんな、緊急発令なんて！！始めてだろ！？」

　[看守にも告ぐ！！只今『不審者二人組』が町長の屋敷に潜入中！！　腕に自信のある受刑者にも、この『二人』を粛清した者には、町長より恩赦の特権を与えるとの事！！希望する受刑者を屋敷に連れて来る際は、いつもの特注の拘束着を着せて来る事！！また、遅れてきた兵士には減給との事、以上！！！]

 「…お、い、おいおい『二人』って…まさか、今言っていたその逃げた二人の事じゃ？ど、どういう事ですか！！ジャミア様！！」看守は憤る。近くにいた兵士達も騒ぎ始める。

　「ちっ、やばい事になった（ターケン、ここ、で…こいつらを行かせたら完全にターケン達は終わりだ…おい！！お前ら！！」　ジャミアは声を荒げる。

　「はっはい！？」驚く兵士と看守達。

　「行くな。ここでお前らみんな、待機してろ。　私一人で行く」　

　「はぁ！？どういう事ですか？ジャミア様。今の緊急発令を聞きましたよね？行かないと減給、処罰ですよ！？」

　「い、いや。私が…逃してしまった責任だから…町長に謝罪の意味も含めて、私一人でカタをつける。処罰は、私一人の問題だ」

　「しっ、しかし！！屋敷を包囲しろ！との事ですよ！！ジャミア様一人で包囲できませんよ！我々も行きます！　おい！皆んな、準備しろ！！」

　「（ち、やばい事になった。くそ、私にできる事…いや、私は、この街の副兵士長。だが、明らかに間違っているという事に対しても、私は…声を出さないつもりか？ターケン達は、それをやろうとしている。だったら私にできる事を）」

　バシュッッッ！！！

　「ぐ、ぐわ、痛てぇ！！ジャミア様、何を！！」

　ジャミアは、ジャミアの美しさをより一層引き立てるかとも言わんばかりの教鞭を叩き打ちつけた。

　「行くな。と、言ったろ。どうしても行きたかったら私を倒してからにしな！！」

　　[町長の館　四階]
　
　バターッン！！…　目の前には、邪悪の巨頭、町長が唖然としてソファに座り踏ん反り返りながらこちらを見ている。周りは貴金属だらけ。動物の毛皮、シャンデリア、料理長と家政婦らしき人もいる。

　「な、何だ！貴様達は！！？」　町長は、上から目線で、聞いてくる。

　「いよー、いよいよ対面だ。なぁ、町長。待ってたぜ。この瞬間を！！」

　怒りにまみれた表情で町長を睨み付ける、カーオル。

「ああ、全くだ。今こそ、今までの呪縛を解く」

　私自身も、はやる気持ちを押さえ付けまずは、冷静に町長と対峙してみようと思った。なんせ、かなり久々に見る顔だ。ふっくらと私腹を肥した図体、そして不快極まりないオーラを発している。私は、間違っていなかった。決してこの男を許してはいけなかった…今、倒そうと思っている私に正義がある。確信できた。

　「何だ！？下から上がって来たのか！？　どうやって！？執事に、兵士長もいたはずだが！！　ん、お前、見た事ある顔だな。そうか、お前か！？例の脱走男は！？ん、いや、結局あれは、あの件は…」　

「？ああ！？なっ、何わけのわからねえ事を！そうだよ！半年前にこんな腐れた町から脱走したのは俺だ！！だが、ずっと心残りだった…この腐った町をそのままにしておくのは…野放しにしておくのはよぉ！！　命よりプライドの方が大事だ！」　カーオルの熱き想いがほとばしる。料理長と家政婦も驚いている。

　「お初に、町長さん。正確には８歳くらいまでいたから初めましてでは、ないが。忘れたとは言わせませんよ」