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しおりを挟む僕は神様に招かれた薄気味悪い世界のことを思い出した。空は曇って薄暗くたちこめるもやのせいで見通しがきかない上に着ている服まで湿っぽくなってとても寒かったんだ。焚き火にあたっておやつを食べてようやく落ち着けたんだけど僕が食べたのは携帯食料パワーバー。棒状の携帯食で一箱が一食分かなと全部食べちゃったんだけど。今思えばアルミパックが二つ入っていたから一箱は二食分だったかもしれない。
だけど今、僕のお腹はぺこぺこで、リュックサックの中にはパワーバーがあと二箱だけ。食べ物はそれだけ。あとは水しかない。
心の中でorz
パワーバーは四食分あるけれどこれ、全部食べても満腹はしないだろうなぁ。
僕以外はみんなお母さんと来ているので、どこに混ざろうかと思う間もなく悟君に腕を引っ張られる。
「一緒に座って。早く食べよう。何だか凄く、お腹が空いてるんだ」
次郎君もどうぞと聡子さんも勧めてくれるのはカゴに詰められた小ぶりの
サンドウィッチ。チーズやハム、レタスにトマトと具もバラエティに富んでるけど量がおかしい。悟君の食は細めなのにカゴが四つもある。見た目からして四人前。いったい、誰がたいらげるの。この弁当。その隣には向かいに座った里紗ねぇと美紗さんが広げたお弁当を勧めるのだが。大量の唐揚げにミートボールにフライドポテト。ミニトマトが散らばるレタスのサラダ。添えられた卵焼きからは甘い匂いが漂ってくる。そしておにぎり。三角形と俵形があるのは脇に置くとして、電気釜で炊いた米を全部握ったくらいの量がある。コレ何食分になるのやら。
「今朝は早起きしてお母さんを手伝ったんだ。どれが、とは言わないけれど私が作った分は残さず食べてね」
目をキラキラさせながらフライドポテトにケチャップを、サラダにドレッシングかける里紗ねぇ。
うん、一片たりとも残しちゃいけないパターンだ、これ。
援軍の必要を感じて隣のテーブルに目をやった僕が見たものは勇吾にぃと雫ちゃんの母、桐崎静さんが並べる白米だけが敷き詰められた折り詰めの箱箱箱。
赤、黄、緑の粉を雫ちゃんが楽し気に振りまいている。
「なかなかに豪快なお弁当だね、勇吾にぃ」
「そうか?まあ食べる直前に仕上げたほうがふりかけの食感が残ってて好きだけどな。あっ、緑のやつはわさびだからな。付け過ぎると涙目になるぞ。あと具は全部梅干しだから」
え?
種を抜いた梅干しを細かく刻む工程を手伝わされたらしい。慣れた様子で折りに箸を突っ込むとほどよくふりかけが塗されたおにぎりを口に放り込む。
ぱっと見ただけじゃ分からなかったけど、折りの中身はおにぎりらしい。
あやうく、失礼な発言をするところだった。
「携帯食の出番は一番最後ね」
満面の笑みで宣言する里紗ねぇに何事と尋ねる美紗さん。
それは個人情報じゃないのと思いつつ、おにぎりに手を伸ばす。別にお母さんがいないと何処にも行けないというわけじゃない。ただ周りに気を使わせるのがイヤなだけだ。
結局、思いっきりみんなに気遣ってもらってるんだけど。
やばっ、ありがたいやら申し訳ないやらで涙目になってきた。
「?・・・どしたの。なんで、涙目?」
あわてる里紗ねぇに笑顔で答える。
「もちろん!おいしいから!!」
顔を真っ赤にして喜ぶ里紗ねぇに気付かないふりをして僕はお弁当の完食を目指す。
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