僕たちは正義の味方

八洲博士

文字の大きさ
上 下
13 / 144

13

しおりを挟む
                     
                          
 僕は神様に招かれた薄気味悪い世界のことを思い出した。空は曇って薄暗くたちこめるもやのせいで見通しがきかない上に着ている服まで湿っぽくなってとても寒かったんだ。焚き火にあたっておやつを食べてようやく落ち着けたんだけど僕が食べたのは携帯食料パワーバー。棒状の携帯食で一箱が一食分かなと全部食べちゃったんだけど。今思えばアルミパックが二つ入っていたから一箱は二食分だったかもしれない。
 だけど今、僕のお腹はぺこぺこで、リュックサックの中にはパワーバーがあと二箱だけ。食べ物はそれだけ。あとは水しかない。
心の中でorz 
パワーバーは四食分あるけれどこれ、全部食べても満腹はしないだろうなぁ。
 僕以外はみんなお母さんと来ているので、どこに混ざろうかと思う間もなく悟君に腕を引っ張られる。
「一緒に座って。早く食べよう。何だか凄く、お腹が空いてるんだ」
 次郎君もどうぞと聡子さんも勧めてくれるのはカゴに詰められた小ぶりの
サンドウィッチ。チーズやハム、レタスにトマトと具もバラエティに富んでるけど量がおかしい。悟君の食は細めなのにカゴが四つもある。見た目からして四人前。いったい、誰がたいらげるの。この弁当。その隣には向かいに座った里紗ねぇと美紗さんが広げたお弁当を勧めるのだが。大量の唐揚げにミートボールにフライドポテト。ミニトマトが散らばるレタスのサラダ。添えられた卵焼きからは甘い匂いが漂ってくる。そしておにぎり。三角形と俵形があるのは脇に置くとして、電気釜で炊いた米を全部握ったくらいの量がある。コレ何食分になるのやら。
 「今朝は早起きしてお母さんを手伝ったんだ。どれが、とは言わないけれど私が作った分は残さず食べてね」
 目をキラキラさせながらフライドポテトにケチャップを、サラダにドレッシングかける里紗ねぇ。
 うん、一片たりとも残しちゃいけないパターンだ、これ。
 援軍の必要を感じて隣のテーブルに目をやった僕が見たものは勇吾にぃと雫ちゃんの母、桐崎静さんが並べる白米だけが敷き詰められた折り詰めの箱箱箱。
赤、黄、緑の粉を雫ちゃんが楽し気に振りまいている。
「なかなかに豪快なお弁当だね、勇吾にぃ」
 「そうか?まあ食べる直前に仕上げたほうがふりかけの食感が残ってて好きだけどな。あっ、緑のやつはわさびだからな。付け過ぎると涙目になるぞ。あと具は全部梅干しだから」
 え?
 種を抜いた梅干しを細かく刻む工程を手伝わされたらしい。慣れた様子で折りに箸を突っ込むとほどよくふりかけが塗されたおにぎりを口に放り込む。
ぱっと見ただけじゃ分からなかったけど、折りの中身はおにぎりらしい。
あやうく、失礼な発言をするところだった。
 「携帯食の出番は一番最後ね」
 満面の笑みで宣言する里紗ねぇに何事と尋ねる美紗さん。
 それは個人情報じゃないのと思いつつ、おにぎりに手を伸ばす。別にお母さんがいないと何処にも行けないというわけじゃない。ただ周りに気を使わせるのがイヤなだけだ。
 結局、思いっきりみんなに気遣ってもらってるんだけど。
やばっ、ありがたいやら申し訳ないやらで涙目になってきた。
 「?・・・どしたの。なんで、涙目?」
 あわてる里紗ねぇに笑顔で答える。
 「もちろん!おいしいから!!」
 顔を真っ赤にして喜ぶ里紗ねぇに気付かないふりをして僕はお弁当の完食を目指す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

処理中です...