俺たちの共同学園生活

雪風 セツナ

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1学期編 ~期末試験~

第46話

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「…試験終了だ。」


 国語の試験を終えると、クラス内では一気に脱力をしたような雰囲気になった。蒼雪でもいやらしいと思ったような問題が多かったのだ。授業をまともに聞いていない人や教科書の本文しか読んできていない人には難しかったのだろう。

 昼休みの時間になったので生徒たちは仲のいい人や、勉強ができる人のところに集まって先ほどの試験のことや次の英語の試験についてのことを集まって話しながら昼ご飯を食べていた。


「蒼、昼飯一緒に食おうぜ!」
「ああ、いいだろう。この席で構わないか?」
「おう!」

 正悟は蒼雪が昼食の用意を始めるのを待って声をかけてきた。幸いにして蒼雪の周囲の席は空いていたので正悟も適当に座り、千春と舞依もやってきて4人で話しながら昼食を食べていた。


「正悟は今のところ試験の調子はどうだ?」
「ん? ん~、俺は最初のはできたけど、後のは微妙かもしれないな。でも世界史の方が難しいけどわかるって感じだったぜ。国語のはよく考えてもわからねえ問題あったし。」
「そうか。国語に関しては俺も解けたが、そんなところを聞いてくるのかと思ったよ。」
「私もそう感じたわ…。さっき確認をしてみたら教科書の隅の方に書いてあることだったわ。」
「………性格悪い問題。…解かせたくない、点数を上げたくないって感じだった。」

 蒼雪だけではなく、正悟も千春も舞依も国語の問題に対してはモノ申したいという感じだった。そして、この傾向は他の試験問題でも有り得ることなので蒼雪は、


「他の試験、例えば生物や化学でも本文ではなく横に書いてある補足説明のようなことを聞いてくるかもしれないから教科書を読みなおすべきかもしれないな。」

 そう告げた。数学や英語であれば教科書の隅に書かれているようなことを聞かれても大したことはないが、生物と化学ならば話は別だ。
 
 確かに教科書は読みながら授業や勉強を進めているが、本文以外のところは重視しないことが多く発展的な内容の教科書のページは飛ばしてさえもいる。そんなところを出されては文句を言いたくもなるが、出される可能性がある以上は勉強するしかないのだ。


「やれることをやりつくしておかないといけないのね。」
「今からやるのはちょっとな~…。」
「………私も今回は早乙女に同意…。」
「ふむ…。まぁ、それは次の英語を終えてから対策をしよう。」
「そうね。今回の試験問題で多くても3つの傾向を見ることはできたのだし、対策を考えることはできるわ。」

 千春はそういうと意味ありげな目線で蒼雪を見てきた。千春はそうせつの問題作成を手伝っており、一部の問題は自分が作成したことも覚えている。そのため、世界史の試験については自分たちのクラスの問題だったのではないかと確信をしているようだった。


 さすがにこの場でそれを言ってしまうと他の人にも聞かれて、クラス内で解かせていた問題とほとんど違うことについて言及されてしまうのではないかと蒼雪を気遣ってのことだった。まら、それについて千春が言ってしまうと蒼雪が彼女を優遇していると言われる可能性が高いのでそれを控えていた。


 残りの時間は英語の試験で出そうな文章や単語の確認をして適当なタイミングで解散をした。

 そして、席について試験の準備をしてから廊下に出たのだが昼休みだったからか、10分前に行ったのだが、既にほかのクラスの人は来ていた。蒼雪が最後に来たことで、先生は全員そろったため封筒を選ばせて配った。

 蒼雪は今回最後に来たので余った封筒を受け取り、そのまま教室に戻った。教室にはすでに試験監督の先生も来ており、全員が席について試験問題を持ってくるのを待っていた。

 蒼雪は封筒を渡し席について解答用紙と問題用紙を配った。ここまでくると半数以上のクラスの問題を解いているので重複する可能性は大いに有り得たのだが、解答用紙を見るにこれも蒼雪の作成した問題ではなかった。

「それでは試験を開始してください。」


 先生の合図とともに問題用紙をひっくり返すと、今までの傾向とは違ってまっとうな問題で難易度もちょうどいいと思える問題だった。文章の作りが丁寧な分で高校生の作った文章という感じもしていたが、それでも文章の内容が現在の社会に関する考察だったりして、大学入試を意識させるような問題だった。


(おそらくこの作りは4組だろうな。丁寧に作られているから予測がしやすい。これで解いていないのは1組の問題だろうな。有栖院…、彼女が問題作成に携わるならもう少し難易度が高くなっていてもおかしくないと思える。)

 蒼雪は問題を解きながらこの日の解いた試験問題の傾向からどのクラスがどのような問題を作成しているのか考察もしていった。

 英語の試験は50分近くかけて解き終えることができ、見直しも含めてほぼ時間ちょうどに解き終えた。


「それではこれで試験終了です。」

 英語の答案用紙の回収を終えて、試験監督の先生と入れ替わりに月宮先生が教室に入り帰りのホームルームをしてそのままこの日は放課後を迎えた。


「蒼はどうするんだ?」
「俺は家に帰って勉強を、教科書を読みなおそうと思っている。」

 蒼雪は勉強と言おうとしたのだが、これからやろうとしていることは教科書の内容を見直して細かいところを記憶するだけなのでそれを勉強と言ってよかったのかわからず途中で言い換えたのだ。

「そうか…。できれば、蒼がやろうとしているやつ俺にも教えてくれないか? 教科書の読みなおそうとしているところって端っこに書いてあるところだろ?」
「少しなら時間を割いてもいいが、そんなに長時間は難しいぞ? 俺も覚える時間は必要だからな。」
「大丈夫だ、ポイントさえ教えてもらえれば頑張って覚えるから。」


 正悟も蒼雪の勉強の邪魔はするつもりはないので、少しでも時間をもらえるならありがたいと言って蒼雪に教えてもらうことになった。

 千春と舞依も教科書の読み合わせをすることにしたようで4人でこの日は帰ることになった。


 4人で帰り、一度それぞれの家に帰宅を済ませると、翌日の試験で使う教科書の類を持って舞依と正悟は蒼雪たちの家にやってきた。


「お邪魔します。」
「おう、入ってくれ。今回は来ることを想定していなかったから何も用意はできていないが…。」
「いや、今回のは急なことだからそんなことは気にしなくていいぜ。」
「……うん。お構いなく。」


 蒼雪はリビングに正悟と舞依を案内して、蒼雪と正悟、千春と舞依という2人組に分かれて教科書の読み合わせをしながらもし出題するとしたら、という視点でポイントを絞って覚えていった。


 教科書の読み合わせを始めて数時間後、一通り範囲の読み合わせを終えると、

「よし、サンキュー! これでたぶんまた変な問題を出されても何とかなるはずだ!」
「そうか。それなら明日の成果に期待しているぞ。」
「お、おう!」

 正悟とはそう話してから勉強を終えたのだが、正悟がこのまま帰ろうかと思ったが舞依と千春はまだ勉強を続けていたので正悟も少し残って一緒に勉強をすることになった。

 その間の蒼雪は、すでに一人で自室に戻り翌日の試験に出る可能性のある内容を復習していった。

(おそらく1組の試験問題は解いていないが、俺が作った問題のような感じだろう。これで違かったら、その時はその時に対応をしよう。数学ならばどのクラスの問題だとしてもそこまで差は出ないだろうな。)

 蒼雪はそのようなことを考えながら数学の復習も行っていた。
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