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1学期編 ~期末試験~

第38話

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 国語科の研究室に行くと扉は空いており、ちょうど月宮先生だけがこの部屋にいた。おそらくまだ来ていない人と、職員室に行っている先生がいるのだろう。目当ての先生は教室にいたので、開いているものの、部屋に入るならばノックをしないわけにはいかないので開いている扉をノックして、

コンコンッ

「失礼します、1年の新庄です。月宮先生に用があって参りました。」
「おはよう、新庄。朝早くからご苦労だったな。まだテスト期間ではないから入っていいぞ。」

 月宮先生に入室を許可されたので、荷物を降ろさずにそのまま部屋に入った。

「それで、こんな朝早くから用件は何だ?」
「問題の提出です。こちらをご確認ください。」

 蒼雪はそういうと、荷物の中から封筒を取り出して月宮先生に手渡した。月宮先生は封筒を受け取ると中身の確認を行った。あくまでこの場では問題の内容まで確認するのではなく、しっかりと学園側が要求したものをそろえて提出できているか、ということだけを確認している。この場で何か不足しているものがあれば期限までにそれを追加で提出すれば問題ないとされている。


「……確かに、必要なものは一通りそろっているな。クリップで留めてくれているから確認がしやすかった。」
「いえ、必要だと思ってしたことですので。」
「そういうことが考えられないやつもいるということだ。よし、それじゃあ、教室に戻っていていいぞ。問題作成ご苦労だった。」


 月宮先生は蒼雪が問題の提出を終えたので教室に戻ると思い、退出の許可を出したが蒼雪にはまだ用事があったので、


「いえ、教室に戻る前に先生に質問がしたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「試験に関することなら前回も話したが、まだ何か疑問点があったのか?」
「今回は試験の話ではなく相棒についてです。」


 蒼雪が相棒について話があると切り出したために、月宮先生は神妙な面持ちになり、


「…白崎と何か問題が発生したのか?」

どうやら蒼雪の言い方が誤解を生んでしまったようで、月宮先生は相棒を解消したいという話を切り出すのかと思ってしまったようだ。

「いえ、彼女との関係は良好ですので先生が心配するようなことはありません。」


 蒼雪がそのような月宮先生の変化に気が付くと、すぐさまフォローしたので月宮先生も安心したようだった。


「そうか。話を遮ってすまないな。白崎についてでなければどんな質問だ? 生憎と私が知っていることで答えられる範囲での回答になるが、それで構わないか? 相棒については学務課の方がよく知っているからな。」
「そうですか。では、先生の回答次第でそちらにも聞きに行きたいと思います。」


 蒼雪はそういうと、一先ずこの場で聞きたいことを質問した。

 質問の内容は他クラスの人とも相棒の申請をすることにしたのだが、それは可能であるか。また、その申請は今でもできるのか。試験の際はどのようにしなくてはならないのか。以上の点について蒼雪は質問をした。


「…なるほどな。しかし意外だったな。新庄が他の女にも手を出しているとは。お前はもう少し他人と関わり合う人間ではないと思っていた。今までの生活を見てきて友人関係はそれなりに構築できているとは思っていたが、友人だけではなく恋人まで増やすとは。」


 月宮先生はきつい言い方をしてくることが多い教師ではあるがそれでも女性だ。このような話をするのは嫌いではないようで、多少面白がっているようにも聞こえた。


「さて、その質問に対する回答だが、申請自体はできるからそれについては学務課で詳しい説明を聞いてくれ。試験に関することだが、基本的に今年の間はそこまで大きな変化はないだろう。そういったことにも配慮をした試験を行う予定だからな。そして、相棒との評価を下す試験では3人で組むことになる。これは、前回の中間試験のようなときには問題を3分の1ずつ解く、という感じになる。
 
 来年以降についてはまた追って話すことになる。この学園は新設校と言っていいレベルでまだ改革を進めようとしている節もあるからどのような変化をしているかは私にもわからない。だが、基本的には相棒を組むことは伴侶を選んでいるようなものだから、離れさせるようなこともほとんどないだろう。
 
 そして、申請についてだが、今も受け付けはしているはずだ。しかし、時期が悪いため邪推をされることは否めないだろうな。」


 月宮先生は蒼雪に理解しやすいように説明をしてくれたが、やはり今の時期に申請することは可能だが、他クラスの人となら推奨しないという雰囲気を出した。


「やはりそうですよね。一応私たちでも話し合いはしたのですが、この時期では問題を漏洩させた、という可能性が発生することは否めないですし、今回は漏洩させることにもペナルティが発生している。そして、学園側も私生活までは監視しないという立場は示しているので、私たちはやっていないことを証明するという不可能な照明を強いられてしまうことになりかねない。」

 蒼雪は自分たちで考えていたことをそのまま話した。月宮先生は蒼雪たちが自分たちの手でそれに気が付いていることに感心していた。


「私も1人の人間としては、組みたいならば好きにしていいと思っている。しかし、これに試験が絡んでくると我々もシビアに見なくてはいけない。先程新庄が自身で説明してくれたように、私たちの監視網の中において漏洩させた可能性のある生徒、させる可能性を臭わせている生徒は監視を強めてある。

 どういう手段を用いているは説明できないがな。しかしそれでも四六時中ではない。家の中を監視するようではプライベートもなくなってしまうからな。
 私個人の考えとしても試験が終わるまでは申請を見送ることをお勧めする。あとは3人で話し合ってくれ。」


 月宮先生としても余計な仕事は増やしてほしくないと思っているので、見送ることを推奨してきた。それでも、蒼雪たちのことも考えていないわけでもないのでしない方がいいというだけで禁止はしなかった。あくまで3人で話し合ってベストな方法を選び取ってほしいという考えのようだった。


「わかりました。ありがとうございました。」
「また何かあったら相談に来るといい。」
「はい。それでは、失礼します。」


 蒼雪は長い時間とってしまったが、月宮先生からも聞きたい情報は得られたのでしっかりと礼を言って研究室を後にした。



 蒼雪が教室に行くと、正悟たちから戻ってくるのが遅かったので何かあったのかと心配をされたが、少し話をしていたのと寄り道をしていたと適当にごまかした。

 寄り道と言ったのは教室にまっすぐに向かうのではなく、そのまま自動販売機で飲み物を買って、飲み終えるまでそこで一息ついていたということにした。


「ふ~ん、そっか。何事もなかったならいいけど、何かあったら俺たちに言えよな。」
「…うん。…私も協力できることはするから。」
「ありがとうな。」

 蒼雪はそういうと千春に目線を送り、

「少し千春と話してくる。」

 そういって彼女を連れだして教室を出た。

 正悟たちはこの場では何か話せないことがあるということはわかったので、そのまま創設と千春が教室を出ていくのを見ていただけだった。


 廊下に出ると、まだ登校してくる生徒はあちこちにいてゆっくり話せそうではなかったが、適当に教室から離れた場所に行き、千春に月宮先生との話を伝えた。


 千春も話の内容がそれであることはわかっていたので蒼雪の話から必要な情報だけを頭の中で整理をした。



「つまり瑞希とも組むことには問題はないということでいいのね?」
「そうなるな。細かい説明は3人で学務課に行ったときに聞くことになるだろうな。」
「そうね。それにしてもやはり時期は試験後が無難なのね。」
「さすがに今の時期は難しいだろう。学園側も今の時期ならまだクラス内だと思っていたようだしな。」
「それでも、滝君や浅香君のような例をあるでしょうし、これからも増えるんじゃないかしら?」
「彼らはまだ何も行動を起こしていないがな。」


 蒼雪と千春は彼らもおそらく4組の人たちと相棒を組むだろうと予測しており、彼らの話を引き合いに出していた。


 蒼雪と千春はひとまずこの話はここで終わりして持ち帰り、瑞希も交えて3人で時間を作って話し合おうということにして教室に戻った。
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