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1学期編 ~期末試験~

第34話

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 蒼雪と瑞希は互いのこの後のことを話し合った。蒼雪はすでに千春と相棒を組んでおり、解消する予定などない。つまりこの関係に瑞希を加えるか、千春が拒絶すれば瑞希の相棒の誘いはなかったことにする。取れる選択肢はこの2択になるのだ。

 話し合った結果として、瑞希も2人きりでいられる時間を大事にしたいということで昼食を食べるまでは一緒にいて、午後になったら一緒に蒼雪の家に行き、千春も交えて3人で話し合うことにした。この場で通話をかけることで決めることもできるかもしれないが、こういった大事な話は直接話す方がいいと蒼雪と瑞希の意見は一致したのでこうすることにした。

 お昼は前回とは違うものを選んで食べたが、とてもおいしかった。このお店はこういった秘密の話をするサービスもしているが、表向きにやっている喫茶店も人気があってもいいのではないかと話していた。


「こういったサービスをしている以上は人気が出てはいけないかもしれないがな。」
「確かにそうかもね…。2人でとか、少数で密会しているのに人気があったらばれちゃうよね。でも勿体ないよね、これだけおいしいのに知っている人が少ないのは。」

 瑞希は手元にあるピザを切り分けながらそう言った。本格的なピザなのか焼き立てでとても香ばしい香りがしているピザで蒼雪も一切れもらったほどだ。

「それを承知で経営をしているはずだ。それにこの店がどれだけもうけを出しているのかは予測もできないな。」

 蒼雪は自身で注文をしたハンバーグを切り分けながらそう言い返した。ハンバーグも熱々のものが運ばれてきて、切り分けると中から肉汁があふれ出してきてとてもおいしかった。ソースも自家製のようでハンバーグととても合っていてごはんが進んだ。

「確かにこれだけおいしいお店なのに、人が少ないんじゃすぐになくなっちゃいそうだよね。」
「それは俺たちが心配することじゃないのかもしれないけどな。気になるなら後で聞いてもいいかもしれないな。」
「そうだね。」

 蒼雪と瑞希はその後もいろいろなことを話しながら昼食を食べ終えて、この時間を満喫していた。行為を直接伝えてからは瑞希はそのことを隠そうともせずに素直に伝えているが、根が真面目なので2人きりだからと言って暴走することなく適度な距離感で接していた。




「さて、そろそろ店を出るか。」
「そうだね。今日もおいしかったし、ここに来れてよかった。」

 2人は会計をするために、ディスプレイを操作してから1階の受付へと向かった。


「お会計ですかな。」
「よろしくお願いします。」
「かしこまりました。」

 そういって男性が会計を担当してくれたので瑞希が、先程話題に上がった疑問を尋ねていた。

「すいません、1つしてもよろしいですか?」
「はい、どうしましたか?」
「このお店のメニューはどれもおいしくて、前回来た時もおいしくてよかったんですけど、これだけの料理なのに、その、お客さんが少なくて経営は大丈夫なのかなって。」
「ほほう、そのことですか。お客様にもご心配されてしまうようではまだまだですな。ですが、ご安心ください。収入は別にもありますし、このお店は私の趣味ですので通常の収入でこのお店ぐらい十分に補えますよ。すみません、こちらに。」

 男性は瑞希の質問に答えながらも会計は操作してくれたので、蒼雪は端末を当て会計を済ませた。

「ありがとうございます。こちらのお店が気に入ったのでしたらまた来ていただけると幸いです。」
「はい、ありがとうございます!また来ますね!」
「ごちそうさまでした。」

 瑞希と蒼雪は男性に感謝を伝えて店を出た。蒼雪は収入が他にあると言っていたのだが、いったい何をやっているのか予測もつかなかったが、いずれその本職も知る機会があるだろうと思っていた。

「千春にも連絡をしておく。瑞希も一緒に行くことを伝えておくが、いいか?」
「うん、ありがとう。伝えておいてくれると助かるかな。きっといきなりだと千春も動揺しちゃうと思うし。」


 蒼雪は瑞希にも伝えてからメッセージを送っておいた。彼女もたまたま端末を操作していたのかすぐに返事があり、瑞希がなぜ一緒になのかと聞かれたが、彼女から伝えたいことがあるからだと伝えておいた。

 蒼雪自身は2人から話があると伝えるべきではないかと瑞希に言ったのだが、

「それだと誤解を生むかもしれないから私から話したいことがあるって伝えて。」

と、頼まれていたのでそう伝えた。千春にそう伝えると彼女もわかったと言ってそれ以上追及してくることもなく家に招く用意をしておくと言っていた。

「さて、それじゃあバス停に向かうか。」
「そうだね。でもバス停まで一緒に行ったら気づかれないかな?」
「気づかれるかもしれないが、同じバスに乗って同じところで降りる以上は気づかれても仕方ないだろう。むしろ堂々としていればそこまで怪しまれないだろう。今日は思ったよりも人が少ないしな。」

 蒼雪はそういうと歩き出した。瑞希も慌ててついてきたが、蒼雪の言う通り休みの日であるにもかかわらず人通りはそこまで多くなかった。いたとしてもこの島で生活をしている人だったりして生徒は極端に少なかった。最初に蒼雪が予想したように時期が時期だけに外出は控えている学生が多そうだった。
 
 
 バス停に着くまでには同じ学年と思われる人とはすれ違うことはなかった。確証はないが、話題が試験のことのように聞こえたのだが、2人は話していることの意味が分からなかったので自分たちが実施されているのとは違う試験についての話だということはすぐにわかった。
 
 バス停に着くとタイミングもよかったようで、すぐに乗ることができた。乗客も蒼雪と瑞希だけで他の人はいなかった。


 2人は静かなバスの中で試験についてのこと以外の話題で話しながら移動をしていた。


「さて、そろそろか。」
「そうだね。でも運がよかったのかな? こうして蒼雪君と2人だけだったから話すことができるし、変な疑いをかけられずに済むし。」
「確かにそれについては運がよかったのかもしれないな。」

 蒼雪と瑞希は蒼雪たちの家の最寄りのバス停に着いたのでそこで下車して、歩いて家に向かった。

 家に着くと、鍵を千春に開けてもらう形になった。千春が家にいるからと鍵を持ってきていなかったのでそろそろ着く、というメッセージだけ送っていたので開けてもらったのだ。

「おかえりなさい。瑞希もいらっしゃい。」
「ただいま。」
「おじゃまします。いきなりごめんね。しかもこんな時期に。」
「ええ、本当にそうね。でも、今日じゃなきゃいけない理由があるのね?」
「うん。でも、今日じゃなきゃってわけじゃないけど、先延ばしにする方が私には嫌だったから。」
「そう。まぁ話は中に入ってからゆっくりと聞かせてもらうわ。」

 千春はそういうと、リビングまで先に移動をした。蒼雪と瑞希もそれに続いて家の中に入っていった。


「それで話というのは何かしら?」

 千春は余計なことはいいから、と単刀直入に聞いてきた。

 蒼雪は瑞希が話し始める前に、

「少しだけ千春と先に話しておきたいことがあるんだがいいか?」
「あら?何かしら?」
「俺の過去についてだ。正しく言うなら俺が聞かされている過去についてと、それからの俺についてだな。」
「そう…。でも、どうして、いきなり、今?」

 千春は蒼雪がいつか話すとはぐらかしていた話をすると急に言い出したので動揺して言葉が単語で途切れ途切れになっていた。

「これから話すことと関係があるかわからないが、俺なりのけじめだな。千春にも伝えるべきだと判断した。」

 蒼雪のこの言葉で千春はすでに瑞希には何らかの理由があって話していることは伝わったようだ。

「そう、そういうことね。いいわ。聞かせてちょうだい。」

 千春にそう言われたので蒼雪は瑞希に話したことと同様のことを千春にも話し始めた。
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