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1学期編 ~期末試験~
第25話
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リビングでは先程解答用紙を回収した時と変わらずに勉強をしていた。時間も経っているので科目が変わっているところが多かったが、理系科目の試験対策をしているという点では変わらずだった。
「一通りの結果が出た。報告をしたいと思ったが、後にするか?」
「いや、ちょうどいいタイミングだから休憩にしよう。」
「そうね。根を詰めすぎてもよくないから休憩にしましょう。」
勉強を教えている組の中心にいる秀人と千春が休憩を提案してくれたおかげで、教えられている組にいた正悟や一、優里は安堵していた。彼らのように勉強がそこまで得意でないような人たちからすれば長時間の勉強は辛かったが、教えられている側から休憩を提案するのは申し訳なかったのだ。
「よし、じゃあ蒼、どうだったか教えてくれ!」
「…早乙女うるさい。…休憩だからってはしゃがないで。」
「さすがに疲れちまってるんだからいいだろ。」
「疲れているのなら騒がないで静かにおとなしくしていなさい。それとも、それだけ元気ならあなただけ数学の続きを解かせようかしら?」
「いや、それだけは勘弁!」
正悟は休憩になるということでテンションが上がってしまったようだが、舞依と千春に水を差され、結局大人しくしていなくてはならなかった。一や詩音もそんな正悟を見て苦笑していたが、ここでからかっては蒼雪の話が進まないと思い、集計したデータを持った蒼雪の方を向いた。
「とりあえず、結果から伝えるがいいか?」
「ああ、頼む。」
「まずはパターン1、提出までの授業範囲だと推定される方が難易度を高くし、以降の難易度を低くしたテストの結果から伝える。こちらの結果は平均で7割弱だった。今も授業で行っていない範囲もあるが、それを加味しても想定よりは低いな。」
「そっちを解いたのは誰だったんだ? 多分俺はそっちじゃないだろ?」
「ああ。響真はこっちじゃない。こちらを解いたのは千春、舞、里美、一、詩音だ。」
事前にどちらを解くのかは蒼雪は伝えておらず、問題用紙もまとめて付箋に名前を書いて張ってあるだけで配っていた千春もどちらの問題を配っていたのか知らなかった。蒼雪は千春から受け取った問題はそのまま提出用の試験問題に含めているので今回の案では用いていなかった。そのため、千春も問題作成を手伝ったとはいえ、その問題がここに含まれていなかったので難易度を判断する材料がなかったのだ。
「そうだったのね。平均点が7割弱ということは私の点数も8割前後なのかしら?」
「…この場で言ってもいいのか? 気になる人にはあとから個別に聞きに来てもらおうかと思ったのだが。ここで高得点者などを伝えるとほかの人のおおよその点数が推測できてしまうだろう?」
「……そうね。あとで教えてもらうわ。」
千春は蒼雪の指摘はもっともだと思い、また、この場で8割前後と言ったがそれよりも低ければ自己評価が高いと思われてもおかしくないので引き下がった。ここにいる人たちならば、そんな風に悪く思う人はいないが、何がきっかけで関係がこじれるのかわからないので余計なことは言わなかった。
「さて、パターン1の総評をすると、…難易度を上げすぎたのかもしれないな。後半を得点源にしたつもりだが、まだやっていない以上は得点源にすることができずそのまま伸びなかったという印象だ。ミスが多かったところはもう少し難易度を調整しなおす。ちなみにこれは歴史、国語、英語すべてを合わせた評価だ。1つ1つの科目を細かく言うことはできるが、それは後で個人的に聞いてくれ。」
蒼雪はパターン1について受けた印象をまとめて伝えた。細かく伝えても、関係ない人もいたので詳細を省いたのだ。また、蒼雪の正直な思いとしては、細かく1から10まで話すのは面倒だと思っていたりもする。
「なるほど。パターン1は想定よりは低いということはわかった。逆に俺たちが解いたパターン2とされる方はどうだった?」
「そう慌てるな。何も質問がなければ次の総評に移るがいいか?」
蒼雪は話を聞いていた彼らに目をやったが特に全体に対する質問事項はなかったようで、質問は上がってこなかった。
「よし、じゃあ次にパターン2の総評をしよう。こちらの平均は8割前後、こちらの希望通りに近いな。これは授業でやった範囲を復習できている人が多く、そちらの難易度が低いから高得点につながった人が多いのだろう。だが、…」
蒼雪は彼らの平均点が高かったことを認めたが、今回ランダムに振り分けたから起こってしまったのか、後から言いにくそうにしながら
「平均点はよかったといえるが、科目ごとの平均点で見るとパターン1の得点が高い科目が2つあった。こちらを解いた秀人、響真、正悟、優里は共通して得意でない科目があるのだろうな。」
蒼雪はそう評価を下した。苦手科目が何であるかということで振り分けをしておらず、同程度の学力の2人ないしは3人を適当に振り分けたためにこういう結果になったが、それでも、こういった結果になるとは思っていなかったのだ。
「ふむ…。こちらでの苦手科目の対策が必要か…?」
「もしかしたらそうかもしれねえな…。」
「俺が足を引っ張ち待ったからかもしれねえ。」
「う~ん、私もそんなに勉強できるわけじゃないし…。」
総合的な平均点が高かったといわれて安心していたのだが、平均点で10点近く差が出ているにもかかわらず、科目別に見たときに平均点が下回っていたものがあると知って何が悪かったのかそれぞれ考え込んでしまった
「非難しているわけではないからそこまで思いつめなくてもいいと思うが、苦手科目の底上げは必要かもしれないな。」
蒼雪もフォローと言えるか微妙なことしか言えなかったが、そこまで悲観することではないとも思っていた。現段階においてはこの結果だったというだけで試験の時もこうなるとは限らないのだ。まだ時間もあるので総評を終えてからは個別の質問タイムとした。
個別の質問は順番に蒼雪のところに行くということにして、それ以外の人で各自の勉強を教え合いながら進めるという形になった。
最初に蒼雪のもとへとやってきたのは千春だった。
「私から来させてもらったわ。」
「そうだろうと思ったよ。得点とどこが課題なのか、でいいのか?」
「ええ、それで構わないわ。」
「そうか。」
蒼雪は短く返事をするとパソコンを操作して千春の解けた問題の傾向及び得点だけを表示した。千春は表示された画面を見せられながら蒼雪の話を聞くことになった。
「まず、あの場で得点を発表しなかったのは千春の得点が低かったからではない。逆に高得点だったからだ。」
蒼雪は画面を見せながらそう言った。千春のほとんどの科目の平均点は9割ほどだった。つまり千春と同じ試験問題を解いた人の中には7割かそれより下になる人がいたのだ。
千春はそれを聞いて察してしまった。ほかの人の中には7割の人が残り全員だとは思えないので5割前後の人がいたのかそれよりも酷い人がいてそれを察する人を少なくしたのだということを。解いた人間もパターン1とはいえ5人しかいなく、あの場で1人でも点数がわかってしまえばほかの人も自分の得点からほかの人の点数も推測できてしまうのでそれを避けるためにあのような言い回しをしたのだ。それにより低くなってしまった1人または2人の名誉を守ってくれたのだ。
「あなたも大変ね…。」
「そう言ってくれるな。さすがにあそこで落ち込ませない方がいいと思っただけだ。」
蒼雪も千春の言葉から自分がしたことの意味を分かってもらえたと思い素直に話した。
「さて、千春の課題と言いたいのだが…。予習をすればカバーできるとしか言えないな。」
蒼雪はそう評価を下した。千春が間違えたのはまだ授業で行っていない範囲しかないということで、今までの範囲の復習はちゃんとできていたのだ。そのため、今できるアドバイスはたいしてなかったので蒼雪から改めて言うことはないのだ。
「そう。それなら私もよかったわ。けれど、本当に大丈夫かしら?」
「というと? 何か気がかりなことでもあるのか?」
「いえ。自分でも大丈夫だという自信はついてきているわ。けれどあなたの域には達していないわ。まだやらなくてはならないことがあるのではないかと思って…。」
「俺のようになる必要はないし、俺はイレギュラーだと思えばいい。千春の実力の伸びは俺がよく知っている。ここまでできているだけでもかなりの成長だ。」
「そう…。あなたにそう言ってもらえるならよかったわ。でも、慢心せずに勉強続けるわ。」
「ああ、頑張ってくれ。」
蒼雪と千春の話はこれで終わり、千春はそのまま部屋を出ていった。蒼雪も次に来る人が誰かはわからないのでパソコンの画面を戻してから次の人が来るのを待った。
「一通りの結果が出た。報告をしたいと思ったが、後にするか?」
「いや、ちょうどいいタイミングだから休憩にしよう。」
「そうね。根を詰めすぎてもよくないから休憩にしましょう。」
勉強を教えている組の中心にいる秀人と千春が休憩を提案してくれたおかげで、教えられている組にいた正悟や一、優里は安堵していた。彼らのように勉強がそこまで得意でないような人たちからすれば長時間の勉強は辛かったが、教えられている側から休憩を提案するのは申し訳なかったのだ。
「よし、じゃあ蒼、どうだったか教えてくれ!」
「…早乙女うるさい。…休憩だからってはしゃがないで。」
「さすがに疲れちまってるんだからいいだろ。」
「疲れているのなら騒がないで静かにおとなしくしていなさい。それとも、それだけ元気ならあなただけ数学の続きを解かせようかしら?」
「いや、それだけは勘弁!」
正悟は休憩になるということでテンションが上がってしまったようだが、舞依と千春に水を差され、結局大人しくしていなくてはならなかった。一や詩音もそんな正悟を見て苦笑していたが、ここでからかっては蒼雪の話が進まないと思い、集計したデータを持った蒼雪の方を向いた。
「とりあえず、結果から伝えるがいいか?」
「ああ、頼む。」
「まずはパターン1、提出までの授業範囲だと推定される方が難易度を高くし、以降の難易度を低くしたテストの結果から伝える。こちらの結果は平均で7割弱だった。今も授業で行っていない範囲もあるが、それを加味しても想定よりは低いな。」
「そっちを解いたのは誰だったんだ? 多分俺はそっちじゃないだろ?」
「ああ。響真はこっちじゃない。こちらを解いたのは千春、舞、里美、一、詩音だ。」
事前にどちらを解くのかは蒼雪は伝えておらず、問題用紙もまとめて付箋に名前を書いて張ってあるだけで配っていた千春もどちらの問題を配っていたのか知らなかった。蒼雪は千春から受け取った問題はそのまま提出用の試験問題に含めているので今回の案では用いていなかった。そのため、千春も問題作成を手伝ったとはいえ、その問題がここに含まれていなかったので難易度を判断する材料がなかったのだ。
「そうだったのね。平均点が7割弱ということは私の点数も8割前後なのかしら?」
「…この場で言ってもいいのか? 気になる人にはあとから個別に聞きに来てもらおうかと思ったのだが。ここで高得点者などを伝えるとほかの人のおおよその点数が推測できてしまうだろう?」
「……そうね。あとで教えてもらうわ。」
千春は蒼雪の指摘はもっともだと思い、また、この場で8割前後と言ったがそれよりも低ければ自己評価が高いと思われてもおかしくないので引き下がった。ここにいる人たちならば、そんな風に悪く思う人はいないが、何がきっかけで関係がこじれるのかわからないので余計なことは言わなかった。
「さて、パターン1の総評をすると、…難易度を上げすぎたのかもしれないな。後半を得点源にしたつもりだが、まだやっていない以上は得点源にすることができずそのまま伸びなかったという印象だ。ミスが多かったところはもう少し難易度を調整しなおす。ちなみにこれは歴史、国語、英語すべてを合わせた評価だ。1つ1つの科目を細かく言うことはできるが、それは後で個人的に聞いてくれ。」
蒼雪はパターン1について受けた印象をまとめて伝えた。細かく伝えても、関係ない人もいたので詳細を省いたのだ。また、蒼雪の正直な思いとしては、細かく1から10まで話すのは面倒だと思っていたりもする。
「なるほど。パターン1は想定よりは低いということはわかった。逆に俺たちが解いたパターン2とされる方はどうだった?」
「そう慌てるな。何も質問がなければ次の総評に移るがいいか?」
蒼雪は話を聞いていた彼らに目をやったが特に全体に対する質問事項はなかったようで、質問は上がってこなかった。
「よし、じゃあ次にパターン2の総評をしよう。こちらの平均は8割前後、こちらの希望通りに近いな。これは授業でやった範囲を復習できている人が多く、そちらの難易度が低いから高得点につながった人が多いのだろう。だが、…」
蒼雪は彼らの平均点が高かったことを認めたが、今回ランダムに振り分けたから起こってしまったのか、後から言いにくそうにしながら
「平均点はよかったといえるが、科目ごとの平均点で見るとパターン1の得点が高い科目が2つあった。こちらを解いた秀人、響真、正悟、優里は共通して得意でない科目があるのだろうな。」
蒼雪はそう評価を下した。苦手科目が何であるかということで振り分けをしておらず、同程度の学力の2人ないしは3人を適当に振り分けたためにこういう結果になったが、それでも、こういった結果になるとは思っていなかったのだ。
「ふむ…。こちらでの苦手科目の対策が必要か…?」
「もしかしたらそうかもしれねえな…。」
「俺が足を引っ張ち待ったからかもしれねえ。」
「う~ん、私もそんなに勉強できるわけじゃないし…。」
総合的な平均点が高かったといわれて安心していたのだが、平均点で10点近く差が出ているにもかかわらず、科目別に見たときに平均点が下回っていたものがあると知って何が悪かったのかそれぞれ考え込んでしまった
「非難しているわけではないからそこまで思いつめなくてもいいと思うが、苦手科目の底上げは必要かもしれないな。」
蒼雪もフォローと言えるか微妙なことしか言えなかったが、そこまで悲観することではないとも思っていた。現段階においてはこの結果だったというだけで試験の時もこうなるとは限らないのだ。まだ時間もあるので総評を終えてからは個別の質問タイムとした。
個別の質問は順番に蒼雪のところに行くということにして、それ以外の人で各自の勉強を教え合いながら進めるという形になった。
最初に蒼雪のもとへとやってきたのは千春だった。
「私から来させてもらったわ。」
「そうだろうと思ったよ。得点とどこが課題なのか、でいいのか?」
「ええ、それで構わないわ。」
「そうか。」
蒼雪は短く返事をするとパソコンを操作して千春の解けた問題の傾向及び得点だけを表示した。千春は表示された画面を見せられながら蒼雪の話を聞くことになった。
「まず、あの場で得点を発表しなかったのは千春の得点が低かったからではない。逆に高得点だったからだ。」
蒼雪は画面を見せながらそう言った。千春のほとんどの科目の平均点は9割ほどだった。つまり千春と同じ試験問題を解いた人の中には7割かそれより下になる人がいたのだ。
千春はそれを聞いて察してしまった。ほかの人の中には7割の人が残り全員だとは思えないので5割前後の人がいたのかそれよりも酷い人がいてそれを察する人を少なくしたのだということを。解いた人間もパターン1とはいえ5人しかいなく、あの場で1人でも点数がわかってしまえばほかの人も自分の得点からほかの人の点数も推測できてしまうのでそれを避けるためにあのような言い回しをしたのだ。それにより低くなってしまった1人または2人の名誉を守ってくれたのだ。
「あなたも大変ね…。」
「そう言ってくれるな。さすがにあそこで落ち込ませない方がいいと思っただけだ。」
蒼雪も千春の言葉から自分がしたことの意味を分かってもらえたと思い素直に話した。
「さて、千春の課題と言いたいのだが…。予習をすればカバーできるとしか言えないな。」
蒼雪はそう評価を下した。千春が間違えたのはまだ授業で行っていない範囲しかないということで、今までの範囲の復習はちゃんとできていたのだ。そのため、今できるアドバイスはたいしてなかったので蒼雪から改めて言うことはないのだ。
「そう。それなら私もよかったわ。けれど、本当に大丈夫かしら?」
「というと? 何か気がかりなことでもあるのか?」
「いえ。自分でも大丈夫だという自信はついてきているわ。けれどあなたの域には達していないわ。まだやらなくてはならないことがあるのではないかと思って…。」
「俺のようになる必要はないし、俺はイレギュラーだと思えばいい。千春の実力の伸びは俺がよく知っている。ここまでできているだけでもかなりの成長だ。」
「そう…。あなたにそう言ってもらえるならよかったわ。でも、慢心せずに勉強続けるわ。」
「ああ、頑張ってくれ。」
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